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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 金谷羽菜
第2章

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第13話 腹ペコ一同、お好み焼きパーティーに心ときめかす

 ワゴンの二段目には、ラップのかけられた大きめのボウルが、三個並んでいた。


「へーっ。お好み焼きパーティーか! お福さんの()った料理はもちろん美味(うめ)ぇーけど、たまにはこーゆーのも楽しそーだな」


 この場に宝神がいたら、少し悲しい顔をされてしまうかもしれないが、今回のバカンスに、彼女は同行していない。当然、そうと知っての結太の発言だった。


「そーだろそーだろっ? お福さんも、庶民的な料理を作ってくれって頼みゃあ、いつでも作ってくれるんだろうけどよ。やっぱお屋敷じゃあ、お好み焼きってのも作りにくいだろうから、坊ちゃんも召し上がったことねえんじゃねーかと思ってな。これならサギも、高校時代にしたバイトや、文化祭の出し物なんかで、嫌ってほど作らされたし、俺の助けがなくても大丈夫だろうってんで、提案してみたわけよ。――なっ? たまにはいーだろ、こーゆーB級グルメってのも?」


 結太の言葉に、東雲は何度もうなずいて、自慢げに胸を張った。

 隣の鵲は焦ったように、


「おい、トラっ。口調がいつもの調子に戻っちゃってるぞっ。『龍生様や、龍生様の御学友の前では、言葉遣いに気を付けろ』って、安田さんにしつこいくらい言われてるだろっ?」


 東雲の腕を(ひじ)でつつき、ヒソヒソ声で注意する。

 とたんに、『あっ。ヤベっ』とつぶやき、東雲は両手で口をふさいだ。


 それまで黙って聞いていた龍生は、クスリと笑い、


「まあ、いいじゃないか。ここに安田はいないんだし。俺はいっこうに構わんぞ。――結太も、その方がいいんじゃないか?」


 小首をかしげ、隣に座っている結太に訊ねる。

 彼は即座にうなずき、同意した。


「ああ、もちろん! オレも堅っ苦しーのは(でぇ)(きれ)ぇーだしな。……まあ、いつもちゃんとしよーとしてる、ブンさんには(わり)ぃけど……。今回、ブンさんは来てねーんだし、ここにいる間だけでも、丁寧(ていねい)口調はやめにしてくれっと助かるよ、トラさん。――サギさんや、国吉さんもさ」


「結太!――おおっ、わかった! そんじゃ遠慮なく、そーさせてもらうぜ!」

「うぅ~ん……まあ、坊と結太さんが、それでいいって思ってくださるんなら……」


 嬉しそうに受け入れる東雲とは違い、鵲は、少々複雑な心境のようだ。

 いつも口を(すべ)らせたり、余計な一言を発しては、失敗ばかりしている東雲のことが、気掛かりなのだろう。


「よっしゃあ! そーと決まりゃー、どんどん焼いてくぜーーーっ!――サギ、おめーはお好み焼き担当な! 俺はこっちのたこ焼きプレートで、たこ焼き焼きまくるからよ!」


 鵲の心配に気付くことなく、東雲は張り切って腕まくりする。

 仕方なく、曖昧(あいまい)な顔でうなずくと、鵲はホットプレートをテーブルに並べ始めた。


 すると、


「たこ焼き!? たこ焼きもあるの!?」


 意外にも、イーリスが興奮したように席を立ち、ホットプレートの中を覗き込んだ。

 そこには確かに、丸い形が幾つも並んだプレートがセットされていた。


「キャーーーッ、やったあっ! アタシ、たこ焼き大好きだったのよね! でも、小さい頃に食べて以来、ずーーーっと食べる機会なくて……。だから、すっごく嬉しいっ!」


 瞳をキラキラと輝かせ、イーリスは子供のようにはしゃいでいる。

 そこまで喜んでもらえて、俄然(がぜん)やる気になったのだろう。東雲は、右手で握り拳を作り、左手で二の腕をポンと叩くと、


「おっ任せください! 高校時代、バイトでみっちり修行しましたからね! たこ焼き焼かせたら、俺の右に出る者はいないっすよ!」


 軽くウィンクし、ニカッと笑う。

 イーリスは、キャーキャーと歓声を上げながら、両手を叩いて大喜びだ。



(へー……。イーリスって、たこ焼きが好物だったのか。お嬢様なのに……っと。生まれつきのお嬢様じゃねーんだったな。……けど、やっぱ金持ちの家では、たこ焼きとかお好み焼きとか、もんじゃ焼きとかってゆー庶民の食いもんは、あんま食べさせてもらえねーのかな?)



 ふと疑問に思った結太は、体を横に傾け、


「なあ、龍生。おまえも、お好み焼きとかたこ焼きって、ほとんど食ったことねーのか?」


 小声で訊ねると、龍生は小さくうなずいた。


「ああ。食べる機会は、ないに(ひと)しいな。東雲が言っていた通り、お福も、頼めば作ってくれるんだろうが……。今まで、特に食べたいと思ったことはなかったしな」

「えーっ、マジかよ? あんな美味ぇーもんを……。じゃーもしかして、今日が〝初〟……だったり?」


 龍生は(あご)に片手を当て、何やら考えているようだったが、


「お好み焼きは、幼い頃に一度だけ、食べる機会があった気がするが……たこ焼きの方は、なかったかもしれないな」

「ふぇええーーーっ、そーなのか!?……やっぱ、オレ達庶民とは(ちげ)ぇーんだな……」


 しみじみつぶやいた後、顔を上げると――。

 いつの間にか、東雲の隣にはイーリスが。鵲の両隣には、桃花と咲耶が立ち、ワクワクした顔つきで、彼らの手元を興味深げに見つめていた。


 席に着いたままでも、彼らの様子は見られるが、二人の慣れた手つきがあまりにも見事なので、側で見ていたくなったのだろう。


 東雲は、くるりくるりと、目にもとまらぬスピードでたこ焼きをひっくり返し、鵲は、両手にヘラ(関西などではテコ、コテとも呼ばれる、金属製のフライ返しのようなもの。正式名称は〝起こし金〟というらしい)を持ち、器用にお好み焼きをひっくり返している。


 その間、国吉は小皿にサラダを盛り付け、テーブルの邪魔にならない場所に、種類ごとに並べていた。


 考えてみれば、お好み焼きとたこ焼きに、サラダという組み合わせも、あまり聞かない気がする。

 だが、先ほど東雲も言っていたように、『栄養のバランス』をトータル的に考えた上でのメニューなのだろう。


「咲耶は一枚や二枚では足りないだろうし、俺達の分が出来上がるまで、もう少し時間が掛かりそうだな。それまで、サラダでも食べているか」


 龍生の提案にうなずくと、結太も彼に続いて席を立った。

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