第12話 面片会メンバー、従者らが用意した昼食に唖然とする
鵲が初めて作った昼食とはどんなものかと、期待と不安が入り混じった目で、それぞれがテーブルを見つめていると。
「……え? これだけっ?」
「まさか!……ジョーダンでしょ?」
「たったこれだけで、腹を満たせと言うのか!?」
「……あ、でもっ。一種類ってわけじゃないし……」
目の前に並べられたものが何かわかったとたん、龍生を除く面片会のメンバーは、口々に感想を漏らした。
テーブルの上に並べられた大皿三枚には、それぞれ、違う種類のサラダが山のように盛り付けられている。
種類が違うと言えども、サラダはサラダ。山盛りと言えども、サラダはサラダだ。
育ち盛りの高校生達に、昼食がサラダのみ――というのは、あまりにも酷と思われた。
呆然とする結太らをよそに、東雲はフッフッフと意味ありげに笑うと、
「向かって右の皿は、国吉さんがお作りになりました、十六品目の和風サラダでございます。栄養のバランスを考え、レタスやキュウリ、ダイコン、ニンジン、紫タマネギなど、ミネラルやビタミン豊富な生野菜の他、タンパク質も摂取出来るよう、大豆やコーンなどの豆類や、カルシウムや食物繊維を多く含んだヒジキも加え、ショウガを利かせた胡麻ドレッシングで和えております。中央の皿は、海の幸たっぷりのごちそうサラダです。こちらも、国吉さんがお作りになりました。エビ、イカ、ホタテ、スモークサーモンなど、たっぷりの魚介類に、水菜やベビーリーフ、サニーレタス、サラダ用のホウレン草など、葉野菜もたっぷり加えております。こちらは、オリーブオイルにレモン汁、隠し味にハニーマスタードを加えた、さっぱりドレッシングをかけてお召し上がりください。最後の皿は、三種のフルーツトマトのカプレーゼです。甘みの強いフルーツトマトとモッツァレラチーズを一口大に切ったものに、フレッシュバジルを加え、オリーブオイルと塩コショウで和えただけの、シンプルなサラダです。イタリアンではおなじみですね。こちらも、国吉さんがお作りにな――」
「――って、サギさんが『初めて作った昼食』ってのは、どーなっちまったんだよ!? 結局、全部国吉さんが作ってんじゃねーかッ!!」
東雲の台詞をさえぎり、結太は堪らずにツッコんだ。
他にも用意されているのならまだともかく、テーブルの上には、サラダを盛った、大皿三枚だけしか見当たらない。
内心、『サギさんの作る昼食かぁ……。ダイジョーブなのか?』と心配はしていたものの、正直なところ、楽しみでもあったのだ。それなのに……。
結太がガッカリしていると、すかさず咲耶も同調して来て、
「そーだっ、楠木の言う通りだっ! 誰が作ろうと構わんが、昼食がサラダだけというのは、あまりにも酷い! サラダだけで、このベッコンベッコンになった腹を、満たせると思ってるのかッ!?」
目も眉も吊り上げて抗議する。
不満を明確に表す結太と咲耶をチラ見すると、東雲はコホンと咳払いし、
「まあまあ、人の話は最後まで聞け――っじゃない。お聞きください、結太様。保科様も。テーブルの上には、まだご用意しておりませんが、主役もちゃーんと考えておりますので」
そう告げた後、思わせぶりにニッと笑う。
結太も咲耶もきょとんとしてから、
「〝主役〟……?」
眉根を寄せ、二人共に首をかしげてつぶやいた。
「そう。主役です。メインディッシュです。本日のメインディッシュは――」
言いながら、東雲は斜め後方に控えていた鵲に目配せした。彼もそれを受け、コクリとうなずく。
鵲は一度、ダイニングから廊下へ出て行き、一台の三段ワゴンを押して戻って来て、東雲の横に立った。
何が始まるのだろうと一同が見守る中、もう一台のワゴンを押して、国吉が入って来る。
二台のワゴンが揃ったのを確認すると、東雲と鵲は結太達に体を向け、
「本日のメインディーーーッシュはぁーーーっ、こぉ~っちらでぇーーーっす!――ジャジャジャジャーーーンっ!」
妙な掛け声と共に、ワゴンに被せられていた白い布を、同時に取り去る。
二台のワゴンの上段には、大きめのホットプレートが、それぞれ載せられていた。
「ホットプレート?……え、これで何作るんだ? 焼肉でもすんのか?」
結太の率直な質問に、鵲は再びニヤリと笑い、
「そうですねぇ。焼肉もいいんですが、たまには坊ちゃんにも、庶民の味をお召し上がりいただきたいと思いまして。お好み焼きパーティーと洒落込もう、ってわけなんですよ」
そう言うと、二段目に被せられていた布を取り去った。




