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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第2章

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第11話 イーリス、遅れて来た結太を責める

「遅いわよ結太!! 部屋に荷物運んだら、すぐダイニングに集合って、秋月くんに言われたでしょ!? もうニ十分近く経っちゃってるわよ? 荷物置くのに、どれだけ時間掛かってるのよ! 待ちくたびれちゃったじゃない!」


 心配していた通り、ダイニングのドアを開けたとたん、イーリスに叱り付けられ、結太は『うへぇー』と、心の内でつぶやいた。


「悪かったよ。誰かさんに重いバッグ持たされて、すっかり疲れちまったからさ。ベッドに倒れ込んで、少し休んでたんだよ。そしたら、結構時間経っちまってて……」

「はあ~!? 何よそれ!? 遅れたのは、アタシのせいだって言いたいの!?」


 ますます目を吊り上げるイーリスに、結太は目をそらせながら、


「べつに、そーは言ってねーけど……」


 モゴモゴとつぶやく。

 イーリスはテーブルに両手をつき、勢い良く椅子から立ち上がると、続けざまに何か言おうとした。


 しかし、『まあまあ、お嬢。冷静に冷静に』という言葉と共に、後ろから国吉に両肩を(つか)まれ、力尽(ちからず)くで、再び椅子に座らせられてしまった。

 国吉はイーリスの肩を押さえつけたまま、結太を見てニコリと笑う。


「結太様も、戸口にお立ちになっていらっしゃらずに、こちらへいらしてください。どうやら我が藤島家のお嬢様は、大変お腹が空いていらっしゃり、ご機嫌(なな)めのご様子です。一刻も早く空腹を満たして差し上げませんと、腹ペコ怪獣(かいじゅう)に変身してしまうやもしれません。そうしましたら、もはや手遅れ。ガオーガオーと鳴き声を上げながら、火を()き、建物を踏み潰し、さんざん大暴れして、周囲はあっという間に焼け野原。危機を回避(かいひ)なさりたいのでしたら、腹ペコ怪獣を出来るだけ刺激せず、食事の邪魔をしないようにするしかございません。ささっ、(すみ)やかにご着席ください」


 普段の(くだ)けた口調と違い、とても丁寧(ていねい)な言葉を遣う国吉に、結太はしばし、呆気(あっけ)に取られてしまった。

 しかし、彼にじっと見つめられ、(うなが)されていることに思い(いた)ると、慌てて用意されていた席に着いた。


 それを見届け、国吉は満足そうにうなずく。

 だが、〝怪獣〟呼ばわりされたイーリスは、ムッとしたように彼を振り(あお)ぎ、


「ちょっと、誰が〝腹ペコ怪獣〟ですって!? こんな美人を怪獣呼ばわりするなんて、国吉の審美眼(しんびがん)は最低最悪ね!……遅れて来たのは結太なのよ? 非難されるべきは、彼の方じゃない! なのに、どーしてアタシが、怪獣だの大暴れするだのって、酷いこと言われなきゃいけないのよ!?」


 いよいよ目を三角にして、不満をぶつけて来る。

 それでも尚、国吉は余裕の笑みを浮かべ、平然とイーリスに言い返した。


「楠木様が遅れて参られたのは、先ほど、楠木様ご自身もおっしゃっていたように、お嬢様が、お荷物を楠木様にお預けになったことにより、お疲れになられたからなのでしょう? 皆様が別荘に到着なさってからは、お嬢様のお荷物は、私がお預かりいたしましたが……あちらのお荷物、かなり重うございましたよ? あれほどのお荷物を、強引に押し付けられたにもかかわらず、楠木様は、不平不満を一切申されることなく、ここまで運んでくださったのです。まずは感謝の意を表されますのが、人間としての道理だと思われますが……当然、お嬢様は楠木様に、お礼を申し上げたのでしょう?」


「う――っ!」


「申し上げたのですよね?」


 笑顔を少しも崩さず、国吉は重ねて問い掛ける。

 イーリスは唇を噛むと、国吉から視線をそらし、気まずそうにうつむいた。


「お嬢様? 私は、『楠木様にお礼を申し上げたのでしょう?』と、お訊ねしたのですが?」


 笑みを(たた)えたまま、国吉は尚も食い下がる。

 空腹を抱え、ひたすら結太を待ち続けていた者達は、『揉めるなら、昼食の後にしてくれないだろうか』と思いつつも、黙って二人のやりとりを見守っていた。



 しばらくの後。

 イーリスは大きなため息をつき、


「あーもーっ、わかったわよ!」


 観念したかのような声を上げると、両手をテーブルについて立ち上がった。

 キッと結太を睨み据え、


「荷物を運んでくれてありがとうございましたっ! お陰で助かりましたっ!」


 それだけ言うと、用は済んだとばかりに、さっさと腰を下ろす。

 結太はポカンと口を開け、数回(まばた)きしてから、


「はぁ……。どー……いたしまし……て」


 途切れ途切れに、どうにか言葉を絞り出した。


 国吉はニカッと歯を見せて笑い、『よく出来ました』と、イーリスの頭を()で回した。

 彼女は顔を赤くしながら、『ちょ…っ! 何するのよバカっ! 子供扱いしないで!』などと言い、両手で自分の頭を押さえ、口をへの字にしてそっぽを向く。



 その様子を、一同は呆然と見つめていたのだが……。



 やがて、誰からともなく吹き出すと、明るい笑い声が周囲に広がった。

 イーリスも、初めの内こそ体を(ちぢ)こめ、居心地いごこち悪そうにしていたが、和やかな雰囲気に変わったことに気付いたとたん、ホッとしたように顔をほころばせた。


 龍生は、ここが区切りをつける潮時だと思ったのか、皆をぐるりと見回してから、


「さあ。話も終わったことだし、昼食にしよう。――鵲、配膳(はいぜん)を頼む。東雲と国吉さんも、手伝ってやってくれると助かるんだが……」


 続いて、鵲らに視線を投げる。

 龍生の号令を受け、東雲は『もちろんです、坊ちゃん!』と即答し、鵲と国吉も無言でうなずいた。


 そうして、三人は連れ立ってキッチンへ向かい、ダイニングには、結太達〝面片会メンバー〟だけが残された。


「あぁ~~~、ようやく食べられるぅ~~~。もう、腹ペコを通り越して、腹ベッコンベッコンって感じだぁ~~~」


 珍しく、咲耶が情けない声を上げ、テーブルに突っ伏した。

 見掛けに寄らず大食いである彼女にとって、朝から何も食べないままに、長時間待たされている状態は、かなりキツイものがあったのだろう。


 龍生は恋人を見てクスリと笑うと、


「咲耶。藤島さんが、先に結太に物申(ものもう)してくれたお陰で、手間が(はぶ)けたな。結太が現れるまでは、『こんなに待たせて、いったい何をしているんだ!?』『私が直接部屋に行き、引っ張って来てやる!』なんて、息巻いていたものな?」


「えっ、そーなのかっ!?」


 ギョッとして、結太は咲耶に視線を移す。

 目が合ったと同時に、咲耶は素早く体を起こし、腕組みして顔を横に向けた。


「し、仕方なかろうっ? 朝から何も食べてないんだ指。腹が減れば、そりゃあイラつきもするさ。だから私は、その点のみに限っては、イーリスの言動を支持する! 空きっ腹の人間をニ十分も放って置いて、部屋でダウンしていたなど……いくら重い荷物を持たされて疲れていたからと言って、許されるものではないからな!」


「うぅっ。……だから、それは悪かったって思ってるよ。保科さんも、イーリスもごめん」


 改めて責任を感じ、結太は両手を(ひざ)に置いてうつむいた。

 ニ十分という時間を、長いと思うか短いと思うかは、人それぞれだろうが、遅れてしまったことは事実だ。素直に反省すべきだろう。


「まあ、二人とも。それくらいで勘弁(かんべん)してやってくれないか? 結太もこうして反省している。これ以上責め立てるのは、さすがに気の毒だ」

「そっ、そうだよ咲耶ちゃん。――イーリスさんも。楠木くん、ちゃんと反省して、謝ってもくれたんだから、もう許してあげて?」


「……龍生。……伊吹さん……」


 二人からの予想外のフォローに、結太はひたすら感動していた。

 やはり、持つべきものは親友と、可憐(かれん)で優しい想い人だなと、小さく何度もうなずく。


「……べつに、アタシはもう、怒ってないけど――」

「わ、私だってそうだ! 謝ってくれさえすれば、それでいい」



 二人から許されたことで、この話はここまで、ということになった。

 結太が胸を撫で下ろしていると、


「おぉ~~~っ待たっせいたしましたぁ~~~っ!! 国吉さんにお手伝いいただき、生まれて初めてサギ――っ、……いや。鵲が作りましたるご昼食、おっ持ちいたしましたよぉ~~~っ!」


 これでもかと言うくらい陽気な声を発し、東雲がダイニングのドアを開け放った。

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