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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第1章

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第21話 イーリス、桃花に声を掛ける

 帰りのHRが終わり、担任が教室から出て行ったと同時に、イーリスは椅子から勢い良く立ち上がった。

 まっすぐに桃花の席へ向かうと、


「ねえ、桃花。これから、ちょっとだけ時間もらえるかしら?」


 肩にポンと手を置き、単刀直入(たんとうちょくにゅう)に訊ねる。

 いきなり隣に現れたイーリスを見上げ、桃花は目をパチパチと(またた)かせた。


「え?……あ――、えっと……。は……はい……」


 戸惑いながら、()の鳴くような声で答える。

 イーリスはにこりと微笑み、『そう。ありがとう』と礼を言ってから、くるりと後ろを振り返った。


 早速、話をしに行ってくれたのかと、イーリスの様子をチラチラと窺っていた結太は、突然、自分の方を向かれてギョッとする。


「結太、よかったわね!! 桃花、話聞いてくれるって!!」


 おまけに、結構大きな声で呼び掛けられてしまい、結太は『ええッ!?』という、驚きと困惑の入り混じった声を上げ、のけ()るように体を引いた。とたん、椅子の背もたれに体重が掛かり、危うく、椅子ごと転倒しそうになる。

 慌てて上半身を前に倒し、重心を前に持って行ったので、(すんで)のところで転倒は(まぬか)れたものの……。


 結太はふぅ~と息をつき、顔を上げてイーリスを睨んだ。

 彼女は少しも動揺することなく、結太を満面の笑みで見返している。



 ……いったい、どういうつもりなのだろう?



 てっきり、イーリスが桃花に説明してくれるものと思い込んでいた結太は、困惑して眉をひそめる。

 まさか、ここでイーリスが、自分に話を振って来るなどとは、少しも予想していなかった。



 確か彼女は、『放課後にもう一度、桃花に話してみるわ』と、言っていたのではなかったか?

 その上、『アタシのせいで、結太が桃花と気まずいままだなんて嫌だし、何より申し訳ないもの』とも、『ここはアタシに任せて?』とも、言っていたはずだ。


 そこまで言われたら、普通は、〝結太と桃花がギクシャクしてしまっていることに責任を感じ、わかってもらえるまで、何度でも事情を説明する気でいる〟ものと、誰だって思うだろう。



 ……だが、違ったのか?

 イーリスは最初から、結太自身に説明させようとしていたのか?


 彼女が『アタシに任せて』と言ったのは、〝桃花に自分から説明する〟ことではなく、〝結太の話を聞いてもらえるよう、桃花に話してみる〟ということだったのか?


 つまり、


『放課後に(結太の話を聞いてくれるよう)もう一度、桃花に話してみるわ』


 ……と、イーリスは言ったつもりだった……?



「えぇぇ~~~? そーなのかぁ?……確か、『アタシが直接訊いてみる』とか、『わかってもらえるまで説明する』とかって、ハッキリ言ってた気ぃすっけどなぁ?」


 結太は釈然(しゃくぜん)としないまま、イーリス達には聞こえない程度の声で、ブツブツとつぶやいた。

 あれが全て、自分の聞き違いや勘違いだとしたら、相当ボケているぞと、不安にもなって来る。



 ……しかし、それはまあ、今は考えないことにしよう。

 自分に若年性認知症じゃくねんせいにんちしょうの疑いがあったとしたら、大問題ではあるものの……とりあえず今は、目の前の問題をどうにかしなければなるまい。



(けど、どーすりゃいーんだ? 急に『話聞いてくれるって』って言われても、心の準備が全然出来てねーよ……)



 それに桃花だって、イーリスに『ちょっとだけ時間もらえる?』と訊かれたのだから、当然、話があるのは彼女だと思っているはずだ。

 それなのに、自分がしゃしゃり出て行ったりしたら……。



「もぉっ! 何をモタモタしてるのよ、結太ったら? せっかく桃花が話聞いてくれるって言ってるのに! 気が変わっちゃったらどーするのっ?――ほらっ、早くこっちにいらっしゃい!」


 結太の気持ちなどお構いなしで、イーリスが苛立(いらだ)ったように手招(てまね)きする。

 教室内にいる他の生徒達は、帰り支度をするフリをしながら、結太達を盗み見ているようだった。



(――ったく、イーリスのヤツ! すっかり注目()びちまってんじゃねーか! こんな中どーやって、あの時の状況を説明しろってんだよ!?)



 ほとほと困り果て、結太はさりげなく、イーリスの横に視線を走らせた。

 桃花は困ったような顔で、彼女をじっと見上げている。



(ほら見ろ! 伊吹さんだって困ってんじゃねーか!……あの話はなぁ、人が大勢いるようなとこで、出来る話じゃねーんだよ!……だいたい、イーリスだって嫌なんじゃねーのか? G見たとたんパニくって、転んだオレの上に(おお)い被さって来たあげく、なかなか離してくんなかった――なんて話を人前でされたら、恥ずかしくて耐えらんねーと思うんだけどな。オレはオレで、ぜってー知られたくねーし。事故のよーなもんとは言え、〝イーリスに抱きつかれた〟なんてことが、クラスの男共の耳に入ってみろ。ますます孤立しちまうじゃねーか)



 ただでさえ、仏頂面(ぶっちょうづら)のせいで友達が出来にくいのだ。

 これ以上、周囲にマイナス面を印象付けたくない。



「もーーーっ、結太!? 早くこっちにいらっしゃいって言ってるでしょッ!? 何度も言わせないで!!」


 (ごう)を煮やしたかのようなイーリスの大声に、結太はゲンナリしてため息をついた。


 気は進まないが、ここまで騒がれてしまっては仕方がない。

 観念して、行くしかあるまい。


「わかったよ。あんまり大声出すなよな……」


 ブツブツ文句を言いながらも、結太はのろのろと歩を進め、手招きするイーリスの前に立った。

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