友達に会う
「竜の島かもしれないんだな?そこへ行ってみようか」
ケント師匠と転移して来たのは、竜の島の大きな神殿の前だった。白い石でできている庭は神様のための聖域のようで、
「うたや踊りでお迎えするようだが、どうする?」
「踊れますか」
長い黒髪のケント師匠と三つ編み黒眼鏡のわたしは、闇の魔術師らしい姿をしている。
聖域で踊るなんて、別の魔術が出てきそう。
「無理だな、今日はあきらめて帰ろう」
そうですね。
(ははは、それで帰ってきたのか?)
シャラナが笑う。
「だって、ケント師匠とわたしが聖域で踊るなんて、無理があるでしょう」
(ふふふ、そうかな?明日はナディーヤが印を付けられた海で潜ってみないか?わたしも行くから)
シャラナが一緒なら何かわかるかもしれない。
翌日、ケント師匠にお願いしてみた。
「シャラナが来るって?面倒なことにならないといいけど、俺一人で大丈夫かな」
そんなに心配しなくても、シャラナは友達だから大丈夫だと思う。
すぐにルパニアの海岸へ転移して、ケント師匠の丸い結界に入って海に潜った。
ぶくぶくぶく、深いところまで来るとシャラナが結界の前に立っていた、海底だけど陸上のように。
「ここなのか?」
シャラナは普通に話している。
「こんなに深くなかったけど、ここだよ」
「何か来るぞ!」
ケント師匠が深いところから来るなにか、を教えてくれた。
海底の下にそんなに深いところがあるの?というくらいの深さから、すべての色の光を集めた粒の塊がみえてきた。
ゆるゆると動いて姿をあらわしている、山のような魚がゆっくり近づいてきた。
魚の体は動くたびに光が水中にはじけて散らばる。本当の魚なのか、実態がないものなのかわからない。
(シャラナ、シャラナか?)
魚のかすかなこえがきこえる。
「なんだ、こんなになって、こんなところにいたのか?」
(東の竜王様が南に行かせてくれないんだ、シャラナ、また海に戻ってきたよ、会いたかった)
「陸の生き物は寿命が短いのだな、海に戻りたかった執着がこんな姿にしてしまって」
(シャラナに会いたいからだよ)
「そうか、ずいぶん待っていたのだな」
シャラナは泣きそうな声で話すと、わたしを紹介してくれた。
「わたしたちの友達ナディーヤだよ、印をつけた友達だろう」
(シャラナのように淋しい海の娘か、ナディーヤ、わたしの友達)
シャラナがぽん、とわたしを海中に放り出すと、ヒレのような手を繋いで三人でくるくるまわった。
魚の光の粒が渦を巻いて散らばる。
(シャラナ、会いに来てくれてありがとう)
「もういいだろう、その思いを手放して竜の祠に戻るんだ、簡単にどこかへ行ってしまっては誰かが困るはずだ、わたしはずいぶん困った」
(それが淋しいということだ、わかったか?シャラナ)
「そうか、わかった」
(シャラナ、ナディーヤ、わたしの友達)
ひらひらとまわり続けた光の粒が渦巻きの中から消えると、悲しくなって泣いていた。
「なぜ泣くのだ?あれは変な執着を手放して竜の祠に帰っただけだ、ナディーヤの魔力を捻じ曲げて止めていた時が動き出したぞ、どうだ」
え?
「ははは、今日は楽しかった、ありがとう」
シャラナはわたしを結界の中に戻して帰った。
「そういうことか」
ケント師匠が勝手に納得している。
「どういうことなんですか?」
「当事者だろう、止められた時間が動いたことがなんでわからないんだ、それにその魔力は自分で制御できるのか?」
なにがなんだか。




