黒い人
「大国①へ一緒に行ってみない?」
同じ家?に住んでいても、ほとんど交流がなかったシュテファン様に声をかけられておどろいた。
「ナディーヤ、このドレスを着てってことかな?」
ナナ、そういうことなんだろうね。
いつもルパニアの生成りの服を着ていて地味だとはわかっていたけど、シュテファン様にドレスを贈られて恐縮しちゃう。
「王女は刺繍の豪華な服を着るんだけど、普段着はみんなこれだからいいと思ってた」
「やっぱり地味だったかな、この黄色のドレスはこれくらいのリボンや刺繍を普段から身に着けろといってるみたいだよね」
やっぱりか、まずいな、平民の暮らしになじんでたけど、大国①に迷惑かけるのはよくないよね。
その黄色いドレスを着て、ナナと一緒に大国①に来た。シュテファン様は王宮で待っているから、従者アレンに案内されて城内を歩く。
「ルパニアの城より大きいだろう、迷子にならないでね」
「はい」
ルパニアの城もよく知らないけど、ここは大きいお城で町一つ分くらいはある。従者にばかにされたと思ってかナナはアレンをにらんだ、まっていいのよ、大国①相手ににらまないで。
「ほんとに王女なのか?魔力があるのかも疑わしいけど」
それにしても失礼だな、君は、同じクラスにいることは知っている。
「なんですか!失礼ですよ」
ナナが怒ると黙った。
シュテファン様の部屋に案内されると、宝物庫に連れて行ってもらうことになった。
「不思議な魔石がたくさんあるから」
という理由で薄暗い倉庫に入ると、第四王子のレイドール様と友達のネーデリアの王女サフィア様が待っていた。6人でさらに奥の、鍵がついた重い扉から小さな部屋に入る。
レイドール様は美術品の管理をする仕事をしていく王子で、魔力もあるそうだ。サフィア様も魔力があって美術品の勉強をしている王女だ。
「ナディーヤ姫、このばらばらな魔石を力がある順に並べてみて」
レイドール様が上の棚から宝箱を下ろして、小部屋の中央にあるテーブルにじゃらじゃらと魔石を取り出した。
(姫様か!ナディーヤ姫、大きくなられて……)
最初から、一番小さな黒い石がおかしい、力があるなんてもんじゃない。
(あの、やんちゃで暴れん坊な姫様か?)
おいおい、いい加減にして?2才くらいの頃の話だな、それは。
(まるでおとなしい姫君にみえますぞ!おどろいた)
こっちがおどろくよ!誰もきこえてないの?
黒い人影までうっすらみえてきた、爺やなの?昔家にいた?
うんうん、と薄い影が首を動かした。
「あっ、泣かないで、ナディーヤ姫、できないならいいんだよ」
黒い石から順に、大きくて力がある魔石を並べてみた。
「違うな、黒い石は魔石じゃないんだ、なんでこんなとこにあるんだろう?他のは合ってるから、魔力がないわけじゃないね」
そんなことを言うレイドール様にこっちがおどろく、闇魔法を感じないのかな?
「殿下、ルパニアの女の子で、魔力がある王女じゃないかもしれないですよ」
「うーん、そうなの?」
ほんとの王女?というのか自分でも疑わしい。
「なんですか!失礼です!」
でもナナが叫んだ。




