ルパニアの姫君
「なんでそんなに小さな家だったの?」
ファンジュール家のお母様が文句を言いたくなるくらい、大急ぎで付け足された家の増築部分がおかしなことになっている。グレンダール陛下からの依頼で、シュテファン様の侍従とお母様も家の増築に積極的に関わってくださった。
「間に合ってよかったね」
そうだね、アレク。
シュテファン様は予定通り、調度品や備品、護衛も完璧に準備ができてからいらっしゃる。
普通の白い家の後ろに、城のような塔が左右に二つ造られた。なにかあってはいけないので、護衛付きで堅牢な造りになっている。母屋が民家で後ろの増築部分が城、住む人がそうなんだから仕方ないよね。
でもまだルパニアの姫君の情報はほとんどなくて、いついらっしゃるとかの連絡も全くない。
そこでデルちゃんに、ナディーヤ姫のことをちょっときいてみた。
「知らない、会ったりできないようになってたから、でも一度くらいはみたことあるはずだけど」
とても姉の話とは思えないお返事。
「その人もあんまり表に出ないことになってた人だよ」
そっか、それなら仕方ないね。
アレクには、第三王子のシュテファン様についてきいてみた。
「まだ学生だよ、小さい子供のイメージしかないなー、ただグレンに似て優秀らしいよ、うわさだけどね」
あの家の子は無事に育つことも能力の一つだ、必要以上に目立たず従順に、追放されなかったことからみても賢い方だろう、普通の家の男の子とは違う。
ナディーヤ姫については、デルちゃんの母上様の侍女さんにもきいてみたけど、目立たず地味な姫君のようだ、性格も容姿もふくめて。じゃあなんでわざわざ大国①に?本気で下働きさせるつもりだったの?
細々としたものまでお母様が買い揃えて大国①へ帰った後で、二人の女の子が家に到着した。
「侍女のナナです、ナディーヤ姫様共々よろしくお願いいたします」
「いらっしゃい、ミサトです、よろしくね」
「姉上、デルネヘルです」
「ナディーヤです、よろしく」
三つ編みの黒めの髪と眼鏡の小柄な女の子が、同年代の侍女とともに不安げな顔をして玄関に立っていた。迎えに出たアレクにもおびえているような、地味でおとなしそうな女の子、それがナディーヤ姫だった。
両国からそれぞれの小さな城の運営費が出るので、ナディーヤ姫様を母屋から塔へ案内するだけでいいはずだったんだけど。
「あのさ、ナナさん、ナディーヤ姫と二人でどうするの?」
「困ってます」
何も準備せずに来てしまったようだ、魔法でなんとかしてもらえるのかな?と思っていた、とナナさんがいう、どれだけ万能だと思われていたんだろう。
「母屋でデルネヘル様の部屋が空いてますけど、使います?」
「デルネヘル様用ですか、それではお願いします、デルネヘル様はいいんですか?」
「いいんです」
家の子はわたしか執事にべったりくっついて寝てますから、とは言わないが、後でわかるだろう。
ナナさんはほっとしたようだ、ハンナさんにご飯を多めに作ってもらおう。




