師匠
闇魔法使いは少なくて、特殊な魔法使いになる。正式な魔術師はもっと少ない。
だからもともと持っている魔法から、自分で勉強している人がほとんどだ。
デルちゃんが得意な闇魔法の先生を探すにしても、デルちゃんより闇魔法ができる人じゃないと意味がない。
「誰かいるかしら?王立学院以外で」
王立学院のカーク先生のところに来ている。
「ちょうどいい人物が身近にいるじゃない?」
「え?ユーリさんはだめですよ、忙しくて」
「違う、一番いいのはケントだよ」
ケントくんが?
白の塔に戻って闇魔法のことをケントくんにきいてみると
「いつも言ってるでしょ、魔法使うのはほんとに上手いんだって、信じてなかったの?」
「それを信用しろと?」
わりと、ユーリさんの息子だから大目にみられることが多いから、ケントくんの実力を信用している人は少ないんだけどな。
「大丈夫、ミサトはいい選択をしたね」
ほんとかな。
ケントくんは次の休日に、エマを連れて家に来てくれた。
エマはわけがわからないままついてきてしまって、家で聖人アレクに会うことに緊張しているようだ。
「わたしの家で遠慮しないで、さあ、入って」
エマの背中を押して家に入ったけど、デルちゃんはわたしの足の後ろに隠れてしまって、ケントくんを怖がっている。
「やあ!師匠だ、よろしくな」
ケントくんはマイペース、いつものことだけど。
俺にまかせろ!とケントくんがデルちゃんを連れて行ってしまったから、エマと二人でお菓子を食べながら待つことにした。アレクはいつものように、自分の部屋でファンジュール家の仕事をしている。
しばらくすると、ケントくんとデルちゃんが帰って来た。
「師匠!」
デルちゃんがうれしそうにケントくんをよぶ。
「いいぞ、今日は上手く魔法が使えたから、ここまで。また来週勉強しような!」
「はい!」
なんだか上手くできたみたいでわたしもうれしい。ケントくんが帰った後でどんな勉強だったのかきいてみた。
「師匠と手をつないでお空にびゅーっと上がって、落ちたり転移したりして」
なんですって!
「ルパニアの兄上のところに行ってね、心を読んだら、デルネヘルがいなくなってよかった、っていうから、師匠がゴツンって何かぶつけて仕返しした」
「なんですって!!」
「ケガはしてないよ、痛かっただけ、ちょっと泣きそうだったけど、へへ。自分で石につまずいたと思っているみたい、師匠はなんでもできるんだよ!すごいんだ」
悪い師匠だなそれは!ケントくんをヒーローみたいに思っているデルちゃんが心配。




