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ブルマ部  作者: 焼肉一番


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女神認定

 ブルマ、その艶めかしくも美しいフォルムは見る者に生きる希望と底知れぬ背徳感を与える。 

 ブルマ、何故それが一昔前まで日本の体育の授業で推奨されていたのか今はもう分からない。

 時のいたずらか、いや、神のいたずらか……。

 いずれにしてもそれは、奇跡だったのだろう。

 ブルマ、俺はこの奇跡に大いに感謝すると共に、今目の前の奇跡にも同様以上の感謝をする。ありがとうって言わせて。


「ありがとう」


「何が?!」


 制服のスカートを両腕で抑えながら、涙目でそう言ったのはクラスメイトの幾瀬小春。

 中一から高校二年の今まで何気に同じクラスだったのだが、特に目立つ存在ではなかったし、たまたま何度か一緒に日直をやった時に一言二言話した記憶しかない。

 その幾瀬が、今目の前で瞬時に俺の女神になった。

 どうしてこんな美少女がずっと近くに居た事に気付かなかったんだろう。肩に付くか付かないかくらいのストレートの黒髪は、艶やかに風に靡いて俺の心をかき乱す。カラコンなんかに頼らない、自然で美しいその瞳はまるで二つの宝石だ。全体的に控えめな印象なのにも関わらず、ぷっくりとした下唇は俺を甘く誘惑している。ああ、改めてありがとうって言わせて。


「ありがとう」


「だから何がっ!」


「何がって……」


 何がってそりゃあ、今なお、強風に煽られてチラチラと見えているそのスカートの中身を見せてくれてありがとうって事だろうが!

 しかもそれが生パンツではなく! 絶滅危惧種の! ブルマだったからだろうがああああ! 

 それを何だ! しらばっくれて『何が?』だと? この俺が例え一瞬であろうとブルマを見逃す筈がないだろう! 例え一瞬であろうともだ! そのブルマが観賞用などではなく、しっかりと身体を動かす事を目的とした体育用のオーソドックスな紺色ブルマであった事はサイドの白ラインと共にガッチリ確認済なんだよ!

 と、自分の性癖を怒涛の様に吐き出してしまう寸でのところで俺はハッと右手で自分の口を塞いだ。

 こんな事をぶちまけたら……俺は、俺は変態じゃないか。

 内に秘めているこのブルマ愛を決して人に知られてはいけない。内に秘めている時点で変態なのかも知れないけど口に出したら戦争だ。

 俺が口ごもってしまうと、幾瀬は上目遣いで俺の様子を伺いながらこう聞いた。


「……見えた?」


 潤んだ瞳でそう聞かれて、反射的に頷いてしまう正直な俺。


「でも! でも見えたのはブルマだから大丈夫だ!」


「はわっ……はわあああああああ~~~!」


 今にも茹で上がりそうな幾瀬の真っ赤な顔を見て、俺はフォローのつもりでそう言ってやったのだが……幾瀬は悲鳴をあげ、その場から走り去った。

 台風の接近で午後からの休校が決まり、掃除当番だけが残っている学校の渡り廊下。

 びょうびょうと風が吹き荒ぶその渡り廊下を、俺は担当場所の掃除を終え教室を目指して歩いていた。おそらく幾瀬も、どこか特別教室の掃除の後だったのだろう。俺の少し前を歩いていたのだが、渡り廊下に差し掛かったところで想像以上の強風にスカートが巻き上げられ、俺にブルマを披露したのだ。ありがとう。


 何となく教室でまた鉢合わせになるのはマズい気がして、俺は意識的にゆっくりと歩き、案の定もう幾瀬の居なくなった教室でカバンを回収して下校したのであるが……。その道すがら俺は延々と考える。

 あの反応は何だったんだ。もしかしたら台風が過ぎ去った次の登校日に、俺は幾瀬のブルマを見た極悪非道な男子として吊し上げられるのではないか。いやでも、本来ブルマは人に見られても大丈夫な物じゃないか。それを何故かスカートの下に着込んでいたって事は、万が一生パンツを見られたら嫌だからだろう? 思惑通りそれは防げたんだからあんな大袈裟な悲鳴をあげて逃げ去る事はないじゃないか。まぁハッキリ言って俺は生パンツより興奮したので実際のところは思惑通りじゃないんだがな! はっはっは!

 良く分からない勝利感に浸ったところで、ぽつりと頬に雨が当たった。いよいよ降り出したらしい。

 まったく……こんな日くらい掃除当番もなしにしやがれ。あ、なかったらブルマを拝めていないので今のなし。

 掃除だけはして行くようにと言う生徒会の決定に、俺はむしろ恩恵を受けたわけか。あの学校へ通うようになってから、まさかあの生徒会に感謝する日が来るだなんて思ってもいなかったよ。

 相当に風も強かったが、俺は折り畳み傘を取り出し、風に逆らう様にさして歩いた。降り出した雨は途端に強くなり、風に吹き付けられて傘はあまり役に立たない。立たないが直にこの雨を喰らうよりはいくらかマシか……そう思い、俯き加減で歩いていると、前方に学校指定のジャージを履いた足が傘の向こうに現れた。傘を持ち上げてその人物を確認すると、それはつい先ほど俺に女神認定された幾瀬小春だった。

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