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第八十二話 平凡な午前

翌日、一番最初に目が覚めたがサーシャと詐欺師が寝ていたため身動きが

取れなかった。

「ふぁ~……おはようございます。あ、リュリュさんも来られてたんですね。」

脳筋も起きてきた。


「昨日の深夜にな。」

「寝るならベッドで寝ればいいのに、どうしたんですかね?」

「……トラウマがあるんだろ。」

「トラウマ?」

「何でもない。」

しばらくするとサーシャと詐欺師も起きてきた。

「あふ……おはようである~。ん?リュリュ?」

「はい、おはようさん。」



「一体、いつまでこうしてればいいんですかね?」

「本当に手が無い場合は船を乗っ取るが、それまではじっとしてろ。」

「乗っ取るってアンタね……」


喋っていると、人の気配が近付いて来たので、リュリュを外に出した。

扉が開いて船員が顔を見せる。そして、

「出ろ。」

とだけ言われたので指示に従う。


その後、バラバラのところに連れて行かれ、俺は甲板に来た。

「んじゃ、ここを清掃してくれ。」

「飯も食ってないのに、一人でここをか?」

「働かざる者、食うべからず。海賊の船に特攻して来て命があるだけマシだと

思いな。」

そりゃそうだ。


「しかしアレだな。海賊っていうのは、もっと残虐非道なもんだと

思っていたが。」

「船長が顔に似合わず真面目だからな。顔に似合わず。」

なぜ二度言った?


「まぁいいが、そういうセリフは周りを確認してから言った方がいいな。」

「え?」

「顔に似合わず真面目で悪かったな。」

背後から聞こえてきた声に、船員の顔が青ざめていく。


「い、いやその……」

「トイレ掃除、一週間な。」

「あの「文句あるか?」いいえ、ありません!失礼します!」

逃げるように去っていった。


「どうした?」

「いや、さっきの男にも言ったが海賊らしくないなと。」

「余計なお世話だ。さっさと働け。」

それだけ言うと、船長も見張りを残して去っていく。


分からない事は見張りに聞きつつ掃除を済ませると、ちょうど昼だった。

「飯を食いに戻るぞ。」

「あぁ。」

俺は見張りに付いていき船室に戻った。


「勇者殿、そちらは大丈夫でしたか?」

「何も問題なかったな。」

「そうですか。なら良かった……」

脳筋が少し暗かったので理由を聞いた。

聞いたが、内容がくだらなかった。


「倉庫の整理をすれば物を壊す。」

「う!」

「地図を片付けてたら何枚かは破いて、どこに何があるか判らなくなった。」

「ぐ!」

「おまけにサーシャの手伝いをしようとしたら、海賊に水をぶっかける。」

「がは!」

「お前、そんなにドジだったか?」

返事がない。精神的ダメージで死んだか?


「大丈夫であるか?」

「違うんですよ~……」

生き返った。


「まさか船がこんなに揺れるとは思わなかったんですよ……」

「ああ、そういや結構な揺れだったな。」

「私からしたら、二人がなんで平然と作業できるのか分かりません……はぁ。」

と言っても、甲板掃除の最中に揺れても問題ないしな。


「サーシャは何やってたんだ?」

「食事を作ってたである。」

飯か。朝飯が抜かれたからな、かなり腹が減っている。

噂をすれば、か。

「おい、飯だ。」

出てきた食事はシチュー一皿だった。

「そこの姉ちゃんがやらかしてくれなきゃ、もうちょい盛ってやっても

良かったんだがな。」


俺とサーシャの目が脳筋に向く。

「すいません……」

脳筋がうなだれてる。まったく……

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