第八十一話 リュリュとの会話
サーシャに櫛を当てる作業も終わって他にやる事はあるかどうか
考えていると、脳筋が話しかけてきた。
「勇者殿、脱出はしないんですか?」
「どうもできんと言わなかったか?それにまぁ変なヤツ等じゃなさそうだしな。」
船の中、船長の態度、船員の規律を見る限りはしっかりしてたし。
「それに、じっとしてないとアイツもどうすりゃいいか分からんだろ。」
「アイツ……リュリュさんですか。」
「多分、その内に助けに来る気でいると思うぞ。」
「そうですね。」
時間も深夜になる頃、脳筋がベッドの上、サーシャは俺が抱きかかえて
それぞれ睡眠を取っていた。
サーシャに一つしかないベッドを譲ろうとしたのだが、俺と一緒でないと嫌だと
頑なに拒否されたせいだ。
窓には鉄格子がはめられて、その隙間から月光が差し込む。
「こんな状況じゃなけりゃ、こういう静かな夜も嫌いじゃないんだがな。」
すると光の中に影ができた。
「リュリュちゃん、ただいま参上~!」
「来たか。」
詐欺師がやっとお出ましだ。
「ありゃ?二人とも寝ちゃった?緊張感ゼロだね。」
「そんなに心配しなくても良さそうな相手だったからな。」
「そっか。ふあ~あ……」
あくびをする詐欺師。
「眠いなら今の内に眠っといたらどうだ?明日はどうなるか分からんしな。」
「ん?心配する相手じゃないんじゃないの?」
「未来が分かる訳じゃなし、何があるか分からないんだから
備えとくに越した事はないだろ。」
「そだね~。」
そう言って俺の腕に乗っかる。
「おい、ベッドはあっちだ。」
「知ってるわよ。でも、何かあそこで寝ちゃいけないって第六感が……」
コイツらはどんどんトラウマが増えていく仕様なのだろうか?
「という訳だから、ここで寝かせてよ。」
「仕方ないな。」
「あれ?やけに素直じゃない。いつもだったら知った事じゃないとか
言いそうなのに。」
「言って欲しいのか?」
「まさか。」
しばらくして詐欺師が話しかけてきた。
「ねぇ、アンタって変よね。」
「お前に言われたくない。」
「馬鹿にしてるんじゃないわよ。……アンタって人があまり好きじゃないでしょ。」
!? いきなり何を言い出すかと思えば……
「今までの言動で分かるだろ?」
「ん~、そういう事じゃなくてね。何かもっとこう根本的なというか……
周りの人達になるべく関心を持たないようにしてる感じね。」
コイツ……
「それなのに変なところで律儀だし、困ってる人がいたら助けるし……
今回の事だってそうよ。本当に関心を持ってなかったら誰が傷ついても、
死んでも自分に影響がない限り放っとくはずだもの。」
「何が言いたい?」
「簡単な事よ。私はそんなアンタを案外気に入ってるわ。多分、アリアも
サーシャも同じ考えじゃないかしら?だから一緒に旅をしてる。
こんな短い間なのに、随分親しくなった気がするわ。」
「……そうか。」
リュリュが顔を覗き込んでくる。
「だからね、不安な事があったら頼っていいわよ。仲間なんだし。」
「何で慰められたような感じになってるんだ?」
「気付いてないだろうけど、寝てるときのアンタの顔って凄く苦しそうに
なる時があるのよ。そりゃアンタは強いから一人で大体の事が
できるだろうけど、それでも限界があるわ。
そんなどうしようもない時に助け合うのが仲間じゃない。」
「……なんで急にこんな話を?」
「何でかしらね?珍しく素直だったからちゃんと話してあげたくなったのかも。
ふあ~あ……あくび二度目だわ。それじゃおやすみ。」
そう言って眠りに付いた。
「まさか、コイツにそんな事を言われるとはな。」
仲間……か。




