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第四十二話 ミルズ村へ

「お前はどうする?」

「……貴様等、何者だ?普通の旅人ではあるまい。」

「何でもいいだろ?で?」


少し間があって逃げ出そうとしたが、

「遅いな。」

「なっ!?」


追い付き、首根っこを掴んで地面に叩きつける。


「……!!」

言葉にならない悲鳴を上げ、悶絶している。


「質問がある。どうやって、ここまで来た?」

「カハッ……ハァ……な、何故そんな事を……?」

「質問しているのはこっちだ。」


少し息を整えて答える。

「ば、馬車だ……」

「じゃあ明日、俺達をミルズ村に連れていけ。」

「勇者殿!?」

「何、考えてるのよ!?」


脳筋と詐欺師が騒ぎ立てる。

「どうせ目的地はミルズ村なんだ。着ければ一緒だろ?」

「そうですけど……」

「さっき殺されかけた人間の言うセリフじゃないわね。」


二人が呆れたように俺を見る。

何かイラッとくるが放っておく。


「エーレもそれでいいか?」

「え!?あ、ハ、ハイ、もちろん!!」


エーレにも確認を取り、襲ってきたヤツらを詐欺師に言って土に埋めさせる。

明日、掘り出すまでそのままだ。


「私がやっといて言うのもなんだけど、酷くない?」

「命を奪いに来て、このくらいで済むならマシな方だろ?」

「そうかもしれないけどね。」

出来上がった9つの土くれに頭が、しかも鼻から上だけが出ている状態は

ちょっとしたホラーみたいでもあった。


「これの隣で寝たくないなぁ……」

「しょうがないだろ、我慢しろ。」

俺達は土くれをそのままにして、少し離れたところで睡眠を取った。



「おはようございます。」

次の日、目を覚ますと脳筋とエーレが起きていて

朝食も出来上がっていた。


「エーレさんが朝食の用意を済ませておいてくれたんですよ。」

「そうか、すまん。」

「いえ、私はお世話になってる身ですし。このくらいはやらせていただかないと。」


近くの川で顔を洗い、朝食を食べていたら詐欺師も起きてきた。

「ん~……おふぁよ~……」

「おはようございます。」

「リュリュさんも顔を洗ってきてください。朝食はその後にしましょう。」

「ん~……」


詐欺師はまだ寝ぼけているらしい。

俺はさっさと朝食を食べ終わり、準備を済ませて昨日のヤツらの様子を見に行った。


「ふご……」「ふ~……ふ~……」「んぐ……」


……アリが顔の上半分を、もぞもぞ動いてる。

苦悶の表情を浮かべて必死に体を揺らそうとしてるが、ガッチリ固まった

土の中では、それもできずに辛そうだ。


「もう少ししたら出してやるから、それまでの辛抱だ。」

声を掛けるが、鼻息が荒くなるだけで返事はない。

当然だがな。


しばらくすると朝食を食べ終わり、準備を済ませた他のメンバーが

こちらへ来た。

「勇者殿、お待たせしました。……その方たちキツそうですね。」

「うわぁ……酷い。」

「私、あんな事になったら耐えられません……」


三人とも可哀想にという感じで土に埋まってるのを見ている。

そろそろ出してやるか。

「詐欺師、頼む。」

「はいはい、分かったわよ。」


呪文を唱えて9人とも土くれから開放する。

「オエッlゲホッ!」「う゛ぇぇ!」

開放された瞬間、口に入った土や体に付いたアリをはたくのに

夢中になってる。

いや、見た目は和むんだ見た目は。


「じゃあ馬車で送ってもらうぞ。俺達の馬もちゃんと連れて来いよ?

もし何かしようとした場合、分かってるよな?」

「……休憩させないとか鬼かしら。」

「勇者殿、時々すんごく冷たいですよね。」


ウルサイな。

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