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第十七話 雑談

馬で結構な距離を走らせた後、

「勇者殿、ここまでくれば安心かと。馬も休ませたいので

ここからはゆっくり行きましょう。」

という提案があった。

賛成した。痛くは無いんだが尻に違和感しかない。


痛みを感じないのも不便と聞いた事があるが、まさかこんな事で

実感するとは思わなかった。


今のうちにいろいろと話を聞いておこうか。

「そういや、さっきのスライムみないなのは町の近くに出たりするのか?」

「いえ、それが強い魔物ほどあまり町に近付かないみたいで。

どうしてかまでは分かりませんが。」

それは気になるな。


「本当はこの辺り一帯はもっと弱い魔物しか現れなかったはずなんです。」

「魔物が活発化してるんだったか?」

「そうですね。10年位前まではゴブリンや多少、知恵の付いた獣くらいしか

見かけなかったということです。」


だが結局、魔王のいるところは分からずじまいか。

「で、この道はどの方角に向かっているんだ?」

「こっちは西ですね。」

西……確かクアーズ王国があって、ワミが国境警備をしているな。

寄ってみるか。

「国境までどのくらいだ?」

「えっと…徒歩だと7日くらいですね。」


そんな遠いのか?

「ワミってヤツがこの前来て、すぐ戻ったろ?そんな遠いと

思わなかったんだが。」

「あの方の騎士団は通常と違うんです。なにせ竜騎士団ですから。」

へぇ、そんなものまであるのか。


「本当に凄いんですよ!竜騎士自体も憧れの的ながら、ワミ団長も

人格者で、あの方のおかげで第1騎士団に入りたい人は後を絶ちません!」

「騎士団ごとに役割があるのか?」

「そうです。第1は竜兵師団、第2が騎兵師団、第3は軽歩兵師団、

第4に重歩兵師団、最後の第5が魔術師団です。」

「おい。」

「それ以上先は言わないでください……私も魔法使えないのに何で第5に

入れられたのかと何度も思いましたから……」

脳筋のくせに会話を先読みした。

よっぽどだったんだろうな。


「王宮ではワミとガナガしか会わなかったな。他はどこにいるんだ?」

「今は第2師団は東の国境警備、第3は南の国境警備をしています。

ローテーションで3ヶ月に一度交代するんですよ。」

「第4は?」

「城下町と周辺地域の警護です。」

ん?

「じゃあ王宮にいた騎士団って第5だけか?」

「いえ、それぞれの騎士団から何十名か選ばれて王宮警護をしています。

ですが、今は第5騎士団の数が多いでしょうね。」


なんかガナガが

”僕の騎士団以外が雑魚にビビッた”

とか抜かしてた覚えがあるが、ほぼお前のところの団員じゃねぇか。

やっぱ脳みそがかなり足りてないな。


「……ずっと気になっていたのですが、勇者殿はどこのご出身ですか?」

「何だ急に。」

向こうから質問してきた。

「いえ、そのいろいろ分かってない事が多い気がしたり、名前にしても

そうです。いままで聞いた事が無いような発音だったので。」


確かに常識に疎いとそう思われるのは仕方ないか。

「確かお名前はヅ、ヅギャでよろしかったのでしょうか?」

「それは何かを思いっきりぶん殴った擬音だな。つぐやだ。つ・ぐ・や。」

あ~とかう~とか唸っている。

「チュグニャですか?」

「お前が俺の名前を言うと擬音に聞こえるな。」


雑談をしながら話していると、

「キャァァァァ!」

悲鳴が聞こえた。


どっちだ!?

「勇者殿!森の中です!」

そう聞いた瞬間、駆け出していた。

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