001 旅はテンプレと共に
「私の髪は、既にお前へ触れている」
「た、頼む……!! 助けて……!!」
「殺戮の女神。すいっち、おん」
『わんっ!』
汚い花火で御機嫌よう。
ししょー達に『旅に出たなら、まずは山賊や魔物に襲われている馬車を助けるのがテンプレなンゴねぇ』と言われたので探していたら、ちょうど良い感じに山賊から攻撃されている馬車を見つけたので、助けてみました。あ、私のフードの中で楽しそうにしている子犬の名前はよもぎちゃん。額にある緑色の魔石がよもぎ餅っぽかったので、よもぎちゃん。
「ど、どうなってんだぁ!? 皆、次々に爆発してぇ……!! ひぃ……!?」
「お前にも、今私の髪が触れた。すいっち、おん」
『わんっ!!』
「助け――」
実は、山賊達が爆発しているわけじゃないんだけど、説明したところでこれから殺す相手だし、無駄な時間だから割愛する。大きな音を立てるとうるさいから、静かに爆破。
それよりも、疲れた。そう、私は疲れちゃったのだ~。
外の世界を見てきなさい、旅をしてきなさいって言われて、準備を終えてししょー達のところを離れて旅に出たのは良いんだけど、歩くのにと~っても疲れた。
「馬車、助けた。これで乗れる~」
『……わんっ!!』
「なに、今の微妙な間?」
『わんっ!!』
よもぎちゃんは賢いわんこ。私の言ったことは完全に理解しているので、独り言が多い私の話し相手になってくれる。えらい。
ここまでの一人旅、よもぎちゃんのおかげで寂しい思いはしなかったけど、疲ればかりはどうにもならない。だからとにかく、今は山賊に囲まれていた馬車に乗って、楽に旅がしたい!
「はぁ……! はぁ……!! 姫……あ、殿下!! いえリタお嬢様!! お下がりください!! このルリアーナの側に!!」
「ルリアーナ……! あ、あれ……!!」
「へっへっへ! 後ろは随分と静かになってみてえだなぁ。どうやら、俺の手下がおめえの部下は全部ぶっ殺しちまったみてえだぜぇ!? なあ、女騎士さんよぉ!!」
「くっ……!! この命に変えても、リタ様だけは……!!」
「ルリアーナ、ルリアーナ……!! ねえ、ルリアーナ!!」
「はい!! このルリアーナ、必ずや殿下をお守りします!!」
あ、まだ生き残ってるのが居た。鉄製の防具と武器、はい、私の髪の毛タッチ。神の髪が触れた、なんちゃって。あ、面白くない。
「あぁ? なんだ、今楽しんでるところなんだっつう……。なんだお前? ガキ?」
「私の髪は、お前に触れた」
「ああ? 何を意味のわかんねえこと……おい、俺の可愛い部下達はどこ」
「すいっち、おん」
『わうっ!!』
「に――」
爆破。さよなら、ちょっと強そうな山賊さん。
「…………ルリアーナ!!」
「貴様何者だ!! お嬢様に近寄るな!!」
『わう?』
「わう? わうじゃない!! がううう!!」
『わんわんわんわんわん!!』
「わんわんわんわんわん!! がうううううう!!」
あの女騎士さん、普通の人間だよね? なんでよもぎちゃんと威嚇しあってるの? 変なの。
『ジーナちゃん! あの人間、面白いね!!』
「そうだね~。でもよもぎ、あんまり人をからかうと、顔真っ赤の大激怒ぷんぷん丸になるから、ダメ」
『わん!!』
「……ルリアーナ、喋りました! わんちゃんが喋りました!!」
「はっ!! このルリアーナも犬のように喋ることが可能です!! そして私は貴方様の近衛騎士、私のほうが上です!!」
「いえそういう話ではなく!! あの、それより先程の賊は!? 先ほどの爆発は!? ど、どうなっているのですか!?」
あ、説明するの、面倒くさい。馬車だけ欲しい。どうしよう、面倒くさいし……爆破?
『ジーナちゃん、まさかとは思うけど、この人達は絶対にダメだからね?』
「え、エ? ま、ままま、まさか、そんなこと、しない」
『……絶対にやる気だったよね』
「薄金色の髪の女!! 止まれ、何者か名乗れ!! どこの刺客だ、雇い主は誰だ!! リタ殿下には指一本触れさせん!!」
『わん!!』
「わうぅううう!!」
ん~……。リタデンカ? 多分あの人の飼い犬が、ルリアーナってわんちゃん。人だけど、わんちゃん。
同じ愛犬家として、面倒だから爆破なんてしたら、もしかしたらお友達になれたかもしれないのにそれは勿体ない。よし、誠心誠意説明しよう。
「私、ジーナ。この子、よもぎ。秘密結社ナーンジェイの創設者達に拾われて、育てられた。外の世界を旅しろって、言われた。で、歩き疲れて、馬車を探して、あったからきた」
「…………わ?」
「…………」
『ジーナちゃん、説明力が……』
「ん、完璧」
『そうだね、ジーナちゃんが伝わったと思うならそれでいいよ……』
もしもあのルリアーナってわんちゃんが突っ込んできたら困るし、今のうちによもぎちゃんに鑑定を頼んじゃお。
「(ねえね、鑑定して)」
『(わう? いいよ~)』
私の従魔のよもぎちゃんが鑑定したものは、私にもわかるように表示される。目の前に透明な……うぃんどう? だっけ? ししょー達がそう呼んでた気がする。それに詳細な情報が表示されるのだ~。どれどれ、見せて見せて。
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【名称】ルリアーナ・シルヴァファング (21)
【レベル】聖騎士20 治癒術士10
【スキル】
・聖域作成
・退魔の剣
・回復
【情報】
ケルフィード王国、リタ・ケルフィードの近衛騎士。21歳という若さで聖騎士となり、両剣の猟犬として恐れられている。
所有している両手剣【ソーラー】は、退魔の剣を発動した時に左右対称の形を取り、柄の両方に剣を持つ両剣へと姿を変える。
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【名称】リタ・ケルフィード (15)
【レベル】プリンセス5 氷魔術士10
【スキル】
・号令
・氷の針
・氷の盾
【情報】
ケルフィード王国の第二王女。銀色の天使と呼ばれ、国民から親しまれている。
王女としてはまだ未熟で、まだまだこれからといったところ。王立ケルフィード学園へ通っている。
長兄ゲドルからは『薄汚い銀色』と忌み嫌われ、命を狙われている。
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あ、面倒くさ。よもぎちゃんも『わあ~面倒臭いね~』って顔してる。してるよね? しててね。
それよりもさっきから、あの2人は何をこそこそと喋ってるんだろう? まあ、私達も念話でこそこそしてるけど。
「秘密結社ナーンジェイ、と……おっしゃいましたね」
「ん? うん。ししょー達は神」
「王都ケルフを恐怖のどん底に陥れた、あのナーンジェイに……育てられただと……!!」
「ルリアーナ、下がりなさい。貴方がやり合って勝てる相手ではありません。そして無礼も許しません」
「しかし!!」
「ルリアーナ!!」
「くっ……!!」
え? ししょー達って、王都で有名人なの? きょーふのずんどこ? どういうことなんだろ~?
「その名を口にして生きていて、なおかつ育てられたと。確かに、疑う方が愚かと言うべきでしょう」
『わう?』
「わ~う?」
「名乗らさせて頂きます。わたくしは、リタ・シェルフェーン。公爵家の娘です。こちらはルリアーナ、私の近衛騎士をしておりますわ」
あ、嘘つき。
「……ルリアーナだ、先程は無礼を。許して欲しい」
「さて、自己紹介が済んだところで」
「爆破するね」
「そうですね。爆破を……」
「そうだな、爆破を……」
「私の髪は、お前達に触れた」
助けてあげたのに、嘘をつかれた。そして私は足が疲れた。2つのつかれたで4倍疲れた!!
「すいっち」
「待って待って待って!! 待ってください!! お話を!! どうか、あの!! お話を!!」
「うそつき」
「う、嘘……!? 嘘なんて……」
『早めに謝ったほうが良い。ジーナ様は嘘が嫌いだ』
謝らせる!! この人達は鉄製のものを持ってないから爆破出来ないけど、脅しには使える!!
「殿下!! この通りだ、どうか今の嘘を許して欲しい!! 謝罪する、心の底から謝罪する!! そして願わくば、この首ひとつで許して欲しい!!」
「ルリアーナ……!! い、いえ、私も謝罪を……!」
「殿下、お願い致します!! どうか、頭を下げることだけは……!!」
はぁ~。土下座までされると、さすがに今の嘘だけでここまでやるのはかわいそう。
「ん、しょうがない。許してあげる。首もいらない、かわいそうだから」
「は、は……っ!! はぁ……!!」
「……。ありがとう、ございます。無礼をお許し頂いたお礼に、わたくしに出来ることでしたらなんでも……」
あ、今なんでもするって。
「じゃあ、馬車で王都ケルフまで。足、疲れた」
「……本当に、疲れたから馬車を探していただけなのですか?」
「最初からそう言ってるけど」
「しかし殿下、御者もやられ馬車を操れる者がおりません……。馬車も車輪を破壊され、動けず……」
えぇえええええ~……。馬車、動かせないの~? こんなに面倒なことまでして、あんまり好きじゃない初対面の人とのお喋りまでして、しかも嘘までつかれたのに~?
ん~もう~~!! しょうがないなぁ~!!
「馬車は直す。御者の代わりもやる」
「え……?」
『わうっ!!』
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【名称】ケルフィード王家の馬車・破損
【情報】
破損している王家の馬車。破損箇所は――――
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はい、よもぎちゃん鑑定ありがとう。
「両方やらなきゃならないのが、楽をするのの辛いところ」
『覚悟は良いか~!』
「ジーナは出来てる」
じゃ、直そうっか……。
「再生、うわ錆びてる……。分離、補強は何を使おうかな~……」
「え……?」
「ええ……!?」
「「ええええええええええええええええええええ!?」」
『うるさいよ~』
「きゅぅ~ん……」
「は、はい……。申し訳御座いません……」
すぐ終わるから、静かにしててくれる? あ~あ、楽をするのも大変だ~……。
それにしても王都ケルフ、数十年前にししょー達がスパイスを売っていっぱい稼いだって言ってた場所、どんなところなのかな~。楽しみ~。
これマ爺様、ジーナは言いつけ通り、15歳になったので頑張って旅をしています。お家に残っている4人のししょー達も、元気にしています……多分。これからの旅を、どうか天国で見守っていてくださ~い。




