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第四部 第14章 『濁った水で魚を捕る者』

第14章 『濁った水で魚を捕る者』


 神殿に用意された臨時の玉座で皇帝ユーグは総督以下この街の主だった者達を謁見した。

「アンゴラ総督レオン5世殿、貴公が魔聖ローマ帝国に帰順すると言う事、間違いないか?」

「は、皇帝陛下、復活したローマ帝国の総督として、これまで以上の働きをする所存です」

「大義である、レオン5世、貴公をアンゴラ総督兼、魔聖ローマ帝国侯爵に任ずる、今後はガラティア属州以東の帝国領奪還の為に働く様に」

「は、かしこまりました」

「レオン侯爵、この周辺はハムダーン王国を自称する者達が跋扈しているとの話だが?」

「はい陛下、ハムダーン王国はブワイフ帝国の属国としてこれより南東の街アレッポを王都として勢力を拡大、このアンゴラにも何度か攻撃を仕掛けてきています」

「なるほど、では我々はそのアレッポの攻略を考えないといけないと言う事だな、ジョルト殿どうか?」

「そうですな、ただしアレッポの前に地中海沿岸の『アレクサンドレッタ』(イスケンデルン)を先に攻略する必要があるでしょう、それとここより東の『セバステイア』(シワス)の攻略も必要ですな」

「そうだな、そうなると軍を二つに別ける事になるか」

とユーグは地図を頭の中で描きながら答える。

「そうですな、主力は東進する事にして、別働隊が南東に向かうと言う事になります」

とジョルトが言うと、ユーグ2世が声を上げた。

「父上、そのお役目是非我らに」

 ユーグはジョルトとダークナイトを見て、更にマーリカを見た、三人は頷いている。

ユーグは報告を受けて戦場でユーグ2世が、ブワイフ帝国皇帝の長子であるイッズ・アッダウラを討ち取った事、ロベールも同じ戦場で充分な功績を上げた事を知っている、この件は個人的には息子達を大いに褒めたい所だが、皇帝の立場として、今はそれを控えていた。

 そして、どうやらユーグ2世とロベールは三人から合格点を貰った様だ。

「良いだろう、ユーグ2世、ロベールと共に30000の軍で『アレクサンドレッタ』及び『アレッポ』を攻略せよ、ダークナイト頼めるか?」

「父上、ありがとうございます」

とユーグ2世とロベールの二人は声を揃えた。

「は、光栄であります、若君の事お任せください」

とダークナイトはユーグに敬礼をする。

「だが、海からの軍も順調に制圧をしている、アレクサンドレッタはもしかしたらウイリアムの連合艦隊が既に落としているかもしれんな、ではジョルト殿とアンリの主力部隊は『セバステイア』の攻略を頼む」

「はい、皇帝陛下、お任せください」

「恐れながら皇帝陛下」

ここで今度はフォカス・プラヌデス将軍が声を上げた。

「貴公は?」

「東ローマ帝国将軍(レガトゥス)フォカス・プラヌデスにございます、私も『セバステイア』攻略軍に参加させていただきたくお願い申し上げます」

「将軍か、レオン侯爵どうか?」

「は、陛下、将軍の麾下には2000名の兵士がおります、彼らをぜひお連れください」

「良いだろう、フォカス・プラヌデス、貴公を魔聖ローマ帝国のレガトゥスとして認め伯爵の爵位を与える、アンゴラの兵を率いて、ビザンツ王アンリに同行せよ、アンリ任せたぞ」

「は、かしこまりました」

「ではレオン侯爵、貴公には近隣の旧東ローマ帝国の街や村に対して、魔聖ローマ帝国への帰順を呼びかけて欲しい、戦わずに降ってくれるのが一番だからな、帰順した街には帝国の魔術師を送り浄化と治癒を行う事を約束しよう」

「は、皇帝陛下」

「では、これで良いな、そうそうジョルト殿。量産試作品の浮遊荷車を船に積んでいる、すまんが船から降ろして行軍に役立ててくれ」

「は?浮遊荷車ですか? それは一体どんな?」

「ああ、”Videre est credere”(百聞は一見にしかず )と言うからな、まずは現物を見てほしい」

 幕僚達は、飛空船スキーズブラズニルに積まれていた、全部で50個の木製の箱型状の物を見て

「はて?これが浮遊荷車?、陛下、私にはただの大型の『ウッドクレート』(木箱)に梶棒を着けただけに見えますが」

とアンリは遠慮が無い。

「はは、まぁ見た目はそうだな、仕組みは魔弩弓と同じだ、この梶棒の部分に制御用の魔宝石、本体の四隅には浮遊用の魔宝石がはめ込んである、この梶棒をこう一度握ると……

 全員の見守る中で、浮遊荷車は、地上から1.5フィートほど上昇してそこで止まる。

「ユーグ、ロベール、上に乗ってみよ」

「はい父上」

二人が荷車の上に乗ると、荷車は一瞬だけ下に下がったが直ぐに元の位置に戻った。

「ルクレチア」

「はい陛下」

ルクレチアが片手で少し荷車を押すと、荷車はそのまま少し滑空して、ユーグの前まで滑る様に進んだ。

「どうだ、理解できたか?」

「はい、それでこの浮遊荷車にはどれ位の荷物が積めるのでしょうか?」

「ワインが満杯の樽なら10個だな、それ以上だと床木が折れる」

「なるほど、それでも通常の四輪荷車の倍近くになりますね、しかも馬にほとんど負担がかからない」

 ジョルトは直ぐに行軍スピードを計算した、これが全部隊に必要なだけ行き渡れば、帝国軍の行軍スピードはほぼ倍以上になり、さらに補給限界点も大きく伸ばす事ができる。

「皇帝陛下、確かに浮遊荷車、拝領いたしました、量産試作との事ですので、実際に運用して報告書に纏めさせます」

「ああ、そうしてくれ、それと帝都では既に量産体制に入っている、転送魔紋を使えば一回で三台位なら

転送できるだろう、ではな良き戦を期待しているぞ」

「は、皇帝陛下」


 こうして、アンゴラの街を手にした魔聖ローマ帝国は、ローマ帝国、東ローマ帝国領だったアナトリア全域の奪還に大きく近づいたのだった。

 同じ頃、アナトリア東地中海沿岸を攻略している連合艦隊は、ローマ時代からの港湾都市『ハドリアノポリス』(メルスィン)を帝国に帰順させる事に成功している、これによりアナトリア地方の地中海沿岸の街や村は全て魔聖ローマ帝国に従う事になった。


 皇帝ユーグは数日間アンゴラの街に滞在して、ローマ時代の建築物、ローマ劇場、ユリアヌスの柱等が現存しているアンゴラの街を堪能して……その中には当然大浴場も含まれていて、一番のお気に入りとなった……三人の皇妃と共に黄金の飛空船スキーズブラズニルで、アナトリア各地を空から視察する事にして南西に向かった。


 スキーズブラズニルは、『ユスティニアヌポリス』(アンキラ) の街上空で、地上の様子を視認できる位の高度で、空中に静止している。

 飛空船の操舵板をルクレチアに託して、千里眼魔法で周辺の状況を確認しているのだった。

「なるほど、ここから北西、西、南と内陸部の大きな街はほぼ全滅か、だが村々は無事の様だな、それとポントス・ユークサイナス(黒海)付近はやはり壊滅状態か」

 人の往来が多い街はやはり疫病の蔓延がしやすいと言う事だろうとユーグは思った。

それを聞いたエディルドが

「それにしても陛下、なんでこんな事になったのでしょうか?」

と素朴な疑問を口にした。

 この時点で皇帝ユーグは疫病の原因をほぼ把握している、つまり数年前に当時のコンスタンチノープルを浄化した際に街から海峡を渡って逃げた野犬でもいたのだろうと言う事だ、その野犬達が海峡のこちら側の土地に黒狂犬病をもたらし、その後一気に蔓延したのだろう。

 つまりユーグは間接的にこの地域の住民のジェノサイドを引き起こした事になる。 

「まぁ、街が壊滅状態なのは少し困るが、村々が無事なのは良かった、せっかく肥沃な土地を手に入れても、住む者が居なければ無意味だからな」

 人の存在しない土地を治めるには、どこからか別の人を移住させなければならない。

ただ、今の状況では帝国内にもそれ程余剰の人が居るわけでも無いのだ、新たに帝国領となった土地の開墾や街造りに人手が必要な状態は変わっていない。

「さて、では一応浄化をしておくか、三人共良いな」

「はい陛下」

一度飛空船を地上に降ろして、四人は空に上がる、そしてユーグを中心に三角形の形で皇妃達が囲む様にして、四人で宝剣を重ねて、同時に最大強化された浄化の光魔法を発動する、三角形の頂点の角度を60°ずらしてもう一度発動すれば、これで360°全周が半径500kmに渡って浄化される事になる。

 アナトリア地方で、この光魔法の輝きを目の当たりにした住民達は、その後に今まで悩まされていた疫病の脅威が消えた事で、この光を『神』の力と確信したが、それは彼らの信じる拝火教の『光と知恵の神アフラ・マズダー』が顕現した『神の奇跡』と言う事と認識された。

そしてその後、アナトリア地方各地で目撃された『空を飛ぶ黄金に輝く船』と共に新たな伝説となるのだった。


 更にユーグはスキーズブラズニルを北上させる。

「陛下、海です海が見えます、沿岸に大きな街があります」

と舳先のエディルドが声をあげた。

「あれがポントス・ユークサイナス(黒海)だね、あの街は『アマストリス』(アマスラ)かな?」

とユーグは、ローマ帝国の地理で読んだ知識を披露する。


 街の上空に来ると、今度は左弦のルクレチアが声を上げた。

「陛下、港に船が居ます、人が乗っている様です」

「ほう、やっと生きている人と出会えたか、旗はわかるか?」

「赤字に白い羊?手?でしょうか、見た事の無い紋章ですね、あ船が逃げて行きます」

「『Piscatur in aquis turbidis.』(濁った水で魚を捕る)は許せんな、ルクレチア頼んだぞ」

「はい陛下」

 ルクレチアとエディルドの二人が船から飛び降りて剣を掲げて飛空魔法で逃げる船を追う。

そして、風魔法で船のマストを切断した。

それを見た船の乗員は恐怖に駆られたのか全員が船から海に飛び込んでしまい、散り散りに泳いで逃げている。

 ユーグは空の上から、水の中に居る乗員に呼びかけた

「逃げられると思うな、大人しくすれば命は保証する」

 それを聞いて、どうやら一番年配の男が諦めてたのか船に泳いで戻って、ロープを伝って乗り込んだ。

他の者は聞こえないのか言葉がわからないのか、必死で泳いでいるが既に何人かは力尽きて沈んでいく

 ユーグはスキーズブラズニルの操船をハトヴィヒに任せると、国籍不明の船の上に降り立った、年配の男は土下座の姿勢でユーグに手を合わせて

「命だけはご勘弁を」

と呟いている。

「私の言葉がわかるか、お前達はどこの国の者だ、ここがローマ帝国の領土と知って押し入ったか?」

と聞くと男は

「ワシらは『アブハジア王国』警備隊の者です、この辺りの街は東ローマ帝国の総督を自称する領主達が治めておりましたが、疫病で皆死んでしまったと聞き様子を見に来ただけでございます、決して盗賊などではございません」

「そうか、それなら何故逃げる、堂々と申し開きをすれば良いであろう、さては貴様らここより東の街で

盗みを働いたな」

 どうやら図星だった様で、男は観念したのか、船倉を開けて、盗んできた物を甲板に並べ始めた。

そのうちに船になんとか辿り着いた男達数人が上がってくる。

「まぁ良い、その程度の品はくれてやる、だが覚えておけ次に我が領土に近付いたら、お前達の国ごと

消滅させてやる」

 ユーグは少し遠くの海上に『ヘブンリーファイヤー』で特大のメテオを落として見せた。その結果の高波で船はほとんど転覆しそうになる。

「ひぇ、お助けを」

と男達がまた土下座をしている間にユーグはスキーズブラズニルに戻ると、先に戻っていたルクレチア達に

「アマストリスに向かい、街に我が帝国の旗を掲げる、その後沿岸を東に向かい、ローマ時代からの街

シノーペー(スィノプ)とトラペズス(トラブゾン)にも旗を掲げるぞ」

「はい陛下」

 アマトリスの街は城壁こそ残っているが、火災があったのだろう街はほぼ廃墟と化している。

この辺りは、『カペーウルプス』から255マイル程だ、なので疫病の影響を強く受けたのだろう。

三人の皇妃が旗を掲げ終わったので、ユーグはスキーズブラズニルを何度か中距離の転移を繰り返して東に進めた。

 途中沿岸の小さな村があり、アマトリスから200マイル程で、『シノーペ』の街らしき城砦都市を発見した。

 上空から見る限り、この街もやはり疫病の蔓延で廃墟になっている様だ、ユーグはアマトリスと同じ様にまだ残っている建物の屋根や城壁の物見の塔に魔聖ローマ帝国の旗を掲げた。

そして、同じ様にトラペズズの街にも旗を掲げて、そろそろ日が沈む頃なので、ユーグは一度『カペーウルプス』まで帰還する事にした。 カペーウルプス上空まで一気に転移すると、ユーグはスキーズブラズニルを、王宮の中庭に着陸させた。すぐにビザンツ王国の衛兵達が飛び出して来て整列する。

「出迎え大義、すまんがゲストルームを用意してくれるかな」

「は、皇帝陛下、こちらへどうぞ」

と案内してもらう。

「三人とも、今夜はここでゆっくりとしてくれ、私は少し用事があるのでね」

と皇妃達に声をかけて、ゲストルームの外に出ると当然の様に衛兵が敬礼をする。

「ヴァイキングの船乗り達が集まる酒場がどこか知らないかな?」

「は、酒場でしたら港のすぐ近くにある『スキール』と言う店があります、そこはヴァイキング達の溜まり場になっております」

と若い衛兵は答えた。

 ユーグは衛兵に礼を言うと庭に出て浮遊魔法で、港に向かう、歩くよりこの方が早くて楽だからだ。

 なみに服装は、昔から着ているヴァイキング風のチェニックにズボンでブーツを履き、腰のベルトに

愛用のレイピアを差した姿で、知らない物が見たら誰も皇帝だとは思わないだろう。


「あれか、景気が良さそうだな」

 店は本当にヴァイキング達で混雑していて、店の外でもジョッキを持って騒いでいる男達が大勢いる。

ユーグは少し離れた所に降りて歩いて店に向かった。

 皇帝ユーグは金髪碧眼で長身だ、青年の頃は痩身だったが40歳を越えた今はヴァイキングの歴戦の勇者と並んでも見劣りのしない体格になっている。

 なので酒場に入ると自然と道が開き、どこかの族長が入って来たのだろうと言う扱いになる。

カウンターでミード酒を注文すると、すぐ側のテーブルの男達から声がかかった

「あんた、見かけない顔だなどこの部族だ?まぁ良い今夜は俺の奢りなんだ、一緒に飲んでくれ」

と50代後半の族長らしき男が言う。

「それはありがたいが、何か祝い事か?」

「ああ、皇帝陛下とエリク王のおかけで大儲けが出来た、戦場で俺の部族が大きな戦象と言う奴を狩って特大のエボルを手に入れたんだ、この街で金に変えたら、なんと新造船を4隻も買える金額になった、本当に皇帝万歳だ」

と上機嫌の族長は語る。

「くそ、羨ましい話だ、俺が戦場に着いた時にはもう戦は終わっていたからな、今度の戦も大戦に違いが無いが、俺たち年寄りは前線に出る事はもうないだろうからな、寂しい限りだ」

ともう一人の族長らしき男は愚痴をこぼしている」

「そうかお前達、いやこの酒場に居る全員に聞きたいのだが、もう一儲けしたい奴は居るか?、仕事は

街の防衛戦だ、当然敵と戦う事になるだろう」

とユーグは風魔法で自分の声を店中に響く様にしてヴァイキングの言葉で話した。

 その声を聞いた一人の族長が慌てて片膝を付いて頭を垂れた。

「皇帝陛下、なぜこの様な場所に?」

「なんだと皇帝陛下だって!!、本当か?」

「ほう、貴公も見覚えがあるな、フロールヴ王の元にいた男か?」

「は、陛下、お陰様でフロールヴ王をヴァイキングの王としてヴァルハラへ送り出す事が出来ました」

「そうか、貴公もこの度の輸送任務に付いてくれて居るのだな、感謝する」

「はい陛下、ありがたいお言葉……」

 この族長との会話で、ユーグが本当に皇帝だと理解した酒場のヴァイキング達は全員が立ち上がって、

ユーグに向かって右手を胸に当て、軽く頭を下げるヴァイキング式の敬礼をして見せた。

 そしてその中で一番年長と思われる族長がユーグに質問をする。

「皇帝陛下、先ほどのお話詳しく聞かせていただけますか?」

「ああ、そうだな誰か『ポントス・ユークサイナス』の地図を持ってないか?」

「陛下、こちらにございます」

と言って出して来たのは店の店主で、どうやらこの店はこの付近の海図なども売っている様だ。

「ここが、今俺達のいるカペーウルプスだ、この海峡を抜けて『ポントス・ユークサイナス』に入ると西岸のここが『オデッソス』だ、貴公達の中には『オデッソス』から荷を運んで来た者も居るだろう」

「まさか陛下、オデッソスが危ないのですか?」

と血相を変えた者も居る。

「いや、それは大丈夫だ、勘違いをさせてすまんな、皆も知っていると思うが、今我が軍が戦っているアナトリア地方の東側は疫病の蔓延でほぼ無人の状態になってしまっている、既に疫病の浄化は終わっているが、この『ポントス・ユークサイナス』南岸の地にはローマ時代からの街が無人でそのまま放置されている、俺は自分の目でアマトリスやシノーペといった街の様子を見てきたからな、そこでだ、このままでは、せっかく手に入れたアナトリア地方の街をむざむざ他人の手に渡してしまう事になると言う事だ、なので、そうだな、大型の船なら100隻ほど集めて、アマトリスやシノーペの防衛に充たって欲しいと思っている、陸路をいくより船の方が早いからな、どうだ誰か手をあげる者はいないか、もちろん恩賞も出すし、アナトリア地方が気に入ればそこに入植しても構わん」

「皇帝陛下、それは街を俺たちにくれると言う意味か?」

「ああ、だが何しろ無人の街だ苦労はすると思うぞ、しかも周辺の村はまだ完全に帝国に帰順したわけでは無いからな」

「陛下、俺はキーフのデーン人の族長オレーグと言う、デーンラント王となったエリクとは古い知り合いだ、その仕事俺が引き受ける」

と言ったのは、先ほどオデッソスが危ないのかと聞いて来た男だった。

なるほど、歳はエリクと同じ位だろう。

「貴公が行ってくれるか、感謝するそれで船と兵はどれくらい集められる?」

「船は50隻、兵は3000」

とオレーグは即答した。

「待て待て、俺も行く、俺はグリーンランドの族長エイリークだ、俺は船60兵は4000」

「感謝するぞ、他にはいないか?」

「無念だ、あと10歳若ければ」

とかなり老齢の族長が言うと

「何言ってんだ10歳若返ってもあんた60過ぎだろう」

と言う声がかかり、酒場は笑いに包まれた。

「ご老人、その気持ちで十分です、補給物資の輸送も帝国にとって大事な任務そちらをお任せします」

とユーグはこの老人のヴァイキングにも礼を尽くした。

 結局その他にも50隻3000名程度の族長が手を挙げて、ユーグが臨時に徴兵したヴァイキングの兵団は数日後に、魔聖ローマ帝国旗を高々と掲げて、ボスポルス海峡を北に向かって出航して言った。

ユーグは空からスキーズブラズニルで船団を見守る事にした。

 何しろこの船団は正規軍では無いので、装備も貧弱で氷の魔女達も数が少ないからだ。

だが、この心配は杞憂に終わり、族長達はそれぞれが『アマストリス』『シノーペー』『トラペズス』の街に入ると、周辺地域の平定を無事に終える事になった、ユーグは三人の族長に帝国伯爵の爵位を与えて、総督として街とその周辺地域の治安維持と開拓を命じた。

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