Scene Charlie-2【Splendours Season1】
何日か日をまたぎ、国全体のお祭りムードは最高潮に達しようとしていた。王室所有の宮殿や城がある街は連日大騒ぎで、特にナイトフォードでは貴族までもが騒ぎ散らかしている始末。そして叙爵式、もとい非公式ではあるが王太子叙位式が行われるアルファラインではすでにほぼ全ての宿が埋まっているそうだ。
そんな様子なのだから当然、当日のアルファ宮殿周辺は地上も上空も種族を問わず群がり、まるでドーナツのようになっていた。
「国王が一等室を臣下に譲る宮殿、それが今日自分のものになる。そう考えただけでワクワクしないか?」
紅茶に口をつけた後、お兄様がそう言った。
「ブレイク兄様、嬉しそう」
「そうだよデイヴィッド。すごく嬉しい」
もちもちとした頬をお兄様が両手で押しつぶすと、瞳を薄い緑色に光らせ睨みつけた。なんとも吸血鬼らしい拒否反応だ——。
「オーウェン、なんだか浮かない顔だな」
呼びかけられると思っていなく、変な声が出た。
「なんだよ、そんなに驚くことか?」
「——いや」
「お前は誰の弟だ?」
……何を聞いているのだろう。意味が理解できない——。
「このプリンス・オブ・アルファライン様の弟だ。『王太子』の弟だ。俺が保証する。だから無理するな」
何を意図してか、お兄様は確かにそう言ってくれた。でもなぜだか、その狐ぶりに笑いが込み上げてきた。
「どうして笑うんだよ! そこは『お兄様!』って抱きついてくるところだろうが!」
お兄様の一語一句が笑いを誘って、責める言葉も耳に入るどころか笑い袋を刺激するばかり。もう、笑いすぎて苦しい。
「ブレイク殿下、お時間がまいりました」
時計を見るとあと十分で十時になるところだった。
慌ててデイヴィッドを僕に預け、フィルマンとともにお兄様は部屋を出て行ってしまった。
午前十時。アルファラインにあるイースト・ハウスの王室礼拝堂の扉が開いた。
わっと歓声が上がったせいで、演奏されているはずの楽器もなんだかよくわからない。そんな中、正装のお兄様が姿を表した。金のラインが入った純白の軍服に、これまた金のラインが入った青いサッシュを左肩から右腰に流している。左肋にはエトワール勲章星章のほか、今日南の大国サタニア帝国から届いたばかりの皇子勲章星章が輝いている。たとえ貴族であっても、これらと同格の勲章を同時に佩用できるものはそう多くないだろう。まして十歳の子供だ。貴族たちはどれほど恨めしく思っているだろうか。
離れた席から、そんなことを考えていた。
「I Blake Light East-splendor swear by God to use this power for this kingdom’s future(私ブレイク・ライト・イースト=スプレンダーは、この力をこの王国の未来のために使うことを神に誓います)」
リュークの前に膝間付き、親書を受け取った。
プリンス・オブ・アルファライン、ブレイク・ライト・イースト=スプレンダー誕生の瞬間だった。




