突然の襲来
「あのー、すいませーん。巨大スライムの討伐受けた者です」
ごそごそと資料を整理している受付嬢は、俺の声に反応してビクッとした後、
少々お待ちください、と言い、受付においてあるノートパソコンを操作する。
「星野友樹さんで間違いないでしょうか?」
「そうです」
「では、スライムの核をお見せいただいても良いでしょうか?」
「あ…それが…」
しまった。討伐系のクエストは、討伐の証としてモンスターの部位を納品しなければならない…
つまり、俺はそれを持っていないので討伐した、とは言えない…
「あ、これですか?」
いつの間にか隣にいたアジュガが持っているのは、少し焦げたスライムの核。
なぜそれを、と思ったが、最初に俺に見せたあの魔法で保存しておいたのだろう。
とにかく。これで無事にクエストクリアというわけだ。
「なぜか少し焦げていますが…まぁ、クエストはクリアです。こちらが報酬です!」
封筒に入った二万円を確認し、礼を言う。
足早に受付から立ち去り、クエストボードを眺める翔に声をかける。
「なんかいいクエあった?あ、あとこれ報酬な」
封筒から一万円を取り出し、彼に手渡す。
「おう、サンキュー。あんなことがあった後だしよ、あんまり討伐クエは行くのはなぁ…」
「「あっ!」」
二人で顔を見合わせてから、アジュガに視線を向ける。
なんのこっちゃ、という顔をしているアジュガだったが、
自分が戦力になることを思い出し、えっへん!とばかりに胸を張った。
「僕に任せて!」
「頼れる弟だ…」
「俺もこういう弟ほしい」
そんな感想をもらしながら、再びクエストボードに目を向ける。
どのクエストがいいか相談していたその時だった。
突然、地面が大きく揺れ、耳をつんざくような爆発音が聞こえる。
「なっ…なんだ!?」
「わかんねぇけどなんかヤバくね!?」
慌てて外に飛び出す冒険者達。俺達もそれに続いて外に避難する。
コロニーの平原に繋がる入り口付近から煙が上がっている。
警報が鳴り、民間人はすぐにギルドに避難するようにと指示され、
冒険者は装備を整えて入り口に集合すべし、という旨の指示を聞いた俺達は急いで入り口へと向かった。
「こっちだ!早く!!」
そう叫ぶ冒険者が指さす逆の方向へひたすら走る、走る。
息を荒げ、脇腹の痛みを感じながらも必死に走る。
あの時――幼馴染を守ることができなかった時。
俺は己の不甲斐なさに怒りを覚えた。
何故、俺は助けられなかったのか。諦めなければ助ける方法はあったのではないかという後悔は、いつになっても俺の胸から消える事ことはない。
「はぁ…はぁ…きっつ…」
「僕ももうダメかも…」
そういう二人の背中を無言で後ろから押し、とにかく前へ進ませる。
俺だって体力は限界だが、譲れないモノがある。
そうして進み、五分ほど経っただろうか。
カタタタタ…という銃声が聞こえ、戦場が近づいていることを知らせる。
「お前ら、ここからは何があるかわからない。武器を」
二人はこくりと頷き、翔は腰からダガーを。アジュガは魔法で杖を取り出した。
俺も背中から剣を抜き、構えながら慎重に進む。
「友樹、翔。よく来た。ところでそいつは…」
「紅谷さん!一体何が!」
「俺達に教えてくれッス!」
紅谷さんの質問に質問で返してしまったが、今は一分一秒も無駄にできないのだ。
こればかりは仕方ない。
「…現在、魔王軍がコロニーに攻め入っている。」
「なっ…!で、でもコロニーの入り口の厳重な警備は…」
「遠距離から放たれた魔物の攻撃により、瞬殺された。」
「そ、そんな…」
「とにかく、話している時間は無い。行くぞ!」
未だ収まらない銃声と剣がぶつかり合う音の鳴り響く戦場へと走り去る紅の髪を追いかけ、
俺達は再び走り出した。




