母との再会
彼と話していてわかったことがある。
まず、彼の名前は『アジュガ』で、火星人には苗字が無いらしい。
次に、現在の火星は魔王に侵略され、魔王の星となったため、一部の反乱軍が火星から地球に来ているらしい。
そして、母さんの本当の名前は『アセビ』だということや、
父さんの名前は『カランコエ』で、事故ではなく魔王との闘いの末に亡くなったということを話された。
大量の情報を共有しているうちに陽は沈み、周囲は少しずつ暗くなっていった。
そして、俺達は…ソファーの上でマンガを読んでいた。
「地球の『マンガ』ってのは面白いね…特にこの不良っていうのが出てくる京都やり直しーズは僕も好きになったよ、兄さん。」
「そりゃよかった。つっても、だいぶ昔のマンガだけどな、ソレ。」
「へぇ、そんな前のものでもこんなに面白いなんて不思議だね。火星じゃ昔のものなんて古臭くて研究者くらいしか目にかけないよ。」
やっぱり地球と火星じゃ文化も違うもんな…あれ、文化が違うといえば…
「なぁアジュガ、お前なんで日本語話せんの?」
「え、なんでだろ。言われてみればそうだね…まあ、通じるならいいんじゃない?」
「そ、そういうもんなのか…?」
「そーいうもんです。」
とりあえずこれ以上言及しても何もなさそうだ。
再びマンガを読み始めようとしたその時。ガチャ、という玄関の扉が開く音が聞こえた。
「え、まだ誰か来るの?」
「他には来ないはずだけど…」
なにか嫌な予感がして、素早く剣に近づく。
そして、リビングの扉のドアノブが少しずつ下がり、開いた。
「ただいまー」
リビングに入ってきたのは…母さんだった。ホッとした俺の前で、
母さんはアジュガに気づき、口を開いて硬直した。
「あ…母さん…お邪魔してまーす…」
目をそらしながらそう言ったアジュガを、母さんは荷物を投げ捨てて抱きしめた。
「アジュガ…!」
「ちょっと…もうそんな歳じゃないよ…」
アジュガはそういいつつも大粒の涙を流していた。
一分ほど経ち満足したのか、母さんはアジュガから手を放してから話し始めた。
「アジュガが来たってことは…」
「うん、僕らの故郷は魔王に完全に征服されたよ…」
俯きながらそう言ったアジュガは、とても悲しそうな顔をしていた。
俺にできることはないだろうかと思ったが、俺にはそれほどの力も知恵もない。
「…もうそのことを気にしたってただ時間が過ぎていくだけだわ。
とりあえず、ご飯にしましょうか。今日はカレーだから、楽しみに待っててね!」
台所に向かう母の背中を眺めていると、アジュガが俺に聞いてきた。
「あのさ、兄さん。カレーって何?」
「あ、そうか…お前カレーとか知らないよな。いいか、カレーってのは…」
俺の説明に目を輝かせていたアジュガは、実物を目の前にして待ちきれずにぱくっと頬張り、幸せそうな顔をしてあっという間に皿を空にした。




