ショウ(3)
タキ:(М)俺っち、競争心ないんだけど……あにさんは特別だから。とっておきの弱みを使って、地獄の底まで追い詰めてあげるよ
タキ:昔、確か……2013年かな。全国放送するテレビ番組のカラオケ大会に出たことあるでしょ?綾菜ちゃんのために
スズ:な、なんで、それを……
スズ:(М)俺は、ヒュッと、息を変に吸った。
スズ:(М)伊音綾菜は、15歳離れた実の妹。ネフローゼ症候群という病気のために、生まれつき腎臓が弱い。
スズ:(М)2013年、綾菜が16歳の時、とうとう腎臓移植をしないと、生きられないところまできていた。
スズ:(М)俺はずっと溺愛していたから、公務員である警察官になってお金を稼いだが、全然足りない。それに、俺の腎臓は適合しなかった。
スズ:(М)だから、あとは歌しかなかったから出た。ドナー登録の呼びかけと賞金を、治療費に充てるために。
タキ:結果は優勝。それはまぁ、中学でカラオケ大会に参加すれば優勝してしまう歌唱力があったし。高校では軽音部で、ボーカルをしてたんでしょ?ふふふ
スズ:ッ!
タキ:それで、お金は入ったし、運よく、ドナーも見つかって、綾菜ちゃんは手術をした。成功して、22歳になった今は、旦那さんとささやかな幸せを感じながら、のんびりしているんでしょ?
スズ:(М)そこまで、知ってん、のか
タキ:もちろん。いやぁ、合うやつ見つかって、良かったね。それ、俺らのおかげだよ?
スズ:(М)う、嘘だろ……?
タキ:本当だよ。俺さ、今26歳なんだ。あれを観て、あにさんの歌声に、惚れちゃってさ
タキ:年が近い綾菜ちゃんを助けてあげようと思って、あの2人に声を掛けて、始めたのがトウパイ。確か、ターゲットは、前回のカラオケ大会で優勝した歌手志望の少女だったなぁ
スズ:俺が……トウパイを生んだのか
タキ:あ、自分の罪を自覚した?じゃあ、その子の供養をしてあげよう。罪は償わなきゃ、いけないよね?
タキ:(М)俺っちはあにさんを押し倒し、首を思いっきり絞める。
スズ:うあ、あ……あ、あ!(苦しそうに)
タキ:正義を振りかざしていた刑事だったあなたの妹さんは、あなたが命を懸けて捕まえようとしていた犯罪集団に助けられた
スズ:うあ、あ……あ(もっと苦しそうに)
タキ:そして、その集団が生まれたきっかけがあなただ。無惨な姿になった被害者たちの奪ったのはトウパイじゃない、伊音スズ……お前だよ
スズ:あ、あ……ああ
タキ:さぁ、懺悔しなよ。喉が千切れるくらい……ハッハッハッハッ
スズ:ああ、あああ……あああああああ
タキ:いい声だね、もっと、聞かせてよハハ……ねぇ、あにさん。俺には、声をちょうだい?ショウだけ、ずるいよ、ハッハッ
スズ:ゆ、ゆるして、ゆるし、てく、ださい!
タキ:ああ、悲痛な感じ大好き……もうたまらん
スズ:ごめん、なさい。ごめ、んな……ご、ご
タキ:地獄は、これからだよ
スズ:(М)急に、唇を塞がれた感覚を最後に、プツンと意識を失った。