グリーンフォースのロールサンド
マーガリンを塗ったロールパンにレタスとオニオンスライスに土筆のスライスしたローストフォースを挟みオーロラソースを軽く掛け、最後に炒めたパプリカを乗せて完成させたローストフォースサンド。
大皿に積み上がるローストフォースサンドを見て満足げな表情をする土筆とレナにレレ。途中からエムエムと聖女も加わり人海戦術で完成させた。
「そろそろアステリアスさまや笑美も起きてくるかな」
「そですね。それにしても大量に作りましたね」
「美味しそうなのです!」
「ピピラさんたちにグリーンフォースを分けて頂いたので、第三中隊の皆さんにもお裾分けしたくて多く作りました。ひとり三つずつはありますので足りると思うのですが、大丈夫ですよね?」
「タマゴサンドもありますし、問題ないかと……」
「スープもありますから大丈夫ですよ」
レナとレレからお墨付きを頂き土筆は指輪の保存機能から大皿を取り出し二十個ほど別に分ける。
「第三近衛中隊にはひとつずつ配るとして二十個は別の皿に移動して、よし! 届けて来ますね。余ったローストフォースは今いる人たちで味見して下さい」
シットリと仕上がったローストフォースはまだまだあるが、スライスしたものを指で摘まみ口に入れる聖女は表情を蕩けさせる。
「これは何と柔らかいのでしょう」
「シットリ仕上がり美味しいです!」
「これはひとり一本食べられますね!」
「ムニュリとした食感がありながらも火が通っています」
「美味しいのです!」
それぞれに口にして感想を言い合う乙女たちの言葉を背に受け、土筆は満足げな表情で屋敷を後にした。
白いテントから外へと出ると第三近衛中隊とアステリアスが話をしており、そこには商人らしき人が数名おり話をする声が耳に入る。
「それではスリープキノコの目撃情報があるのだな」
「うむ、これは中止した方が良いかもしれんのじゃ」
「私どもも日の出る時間しか街道を使いませんが、注意した方がよいかと……」
「群れをなす話は聞いた事はないが、眠りの魔術を放つと厄介だな……大々的に近辺を調査した方がよいかもしれませんね」
「先ほど討伐したスリープキノコは街道近くまでやって来ていましたからな……おや、あれは土筆殿! お久しぶりです!」
商人の一人が土筆に気が付き声を掛ける。
「お久しぶりです。ヤタクーザさんもスリープキノコを見かけたのですか?」
目の鋭いタヌキ耳の男はその目じりを下げ、土筆へと頭を下げる。
「あれがイシュタル商会に塩ダレをもたらした人魚の友……」
「他にも湯たんぽやピーラーを製作したと耳に入れましたぞ」
「彼のお陰で多くの岩妖精族に仕事が舞い降りたと……」
ヤタクーザの近くにいる商人たちが小声で話し、咳払いをするピピラ。
「おっふぉん! それではこの案件は早急に領主さまに届けさせて頂きます。商人の皆さまも商人同士のネットワークで注意喚起をお願いします」
「もちろんです」
「命に関わりますからな」
「冒険者ギルドにも報告致しましょう」
商人たちも口々に注意すると言葉を残すなか、ヤタクーザだけは土筆へと歩みよる。
「土筆さまのお陰で我々イシュタル商会は帝都でも認知される様になりました。塩ダレ様々です」
「それは良かったです。イシュレーム様もおかわりありませんか?」
「はい、ただ、シュリンプが食べたいとの寝言は今でも……秘書には睡眠時間を取らせるように言っているのですが、仕事量は大幅に増えまして……」
「ははは、大変ですね。ご自愛下さいとお伝え下さい」
「畏まりました。そう言えば海洋都市マーメイドで開催される懇親会には参加なさるのですか?」
ヤタクーザの言葉に土筆ではなくアステリアスが反応を示す。
「それについてはまだ未定じゃ。参加できればするぐらいじゃの。それよりも土筆よ、朝食の準備は終わったのかの? 我らもそろそろ食事にせぬか?」
アステリアスの後ろでは隊長であるピピラを残しグリーンフォースの串肉と土筆の差し入れたスープで朝食にする第三近衛中隊があり、炭火で焼かれた肉の香りが立ち込めていた。
「そうですね。準備してきますがその前に近衛の皆さんに差し入れを届けて来ますね」
そう言葉を残しヤタクーザへと会釈して第三近衛中隊の元へと足を向ける土筆。
「土筆さま! このスープは故郷の味に似ています! これほど美味しいスープではありませんでしたが似ています!」
土筆が向かうとマルティンは立ち上がり小走りで近づくと、その手を握りやや目を赤くした顔で声を上げる。
「それは良かったです。頂いたグリーンフォースを使ったサンドイッチを持ってきましたので、良ければ皆さんで如何ですか?」
土筆の言葉に第三近衛中隊の近衛兵から歓声が上がる。
「土筆さまの料理ならどれも美味しいはず!」
「この隊に配属されてよかった!」
「スープも絶品だし期待しちゃう!」
その歓声を耳に入れた商人たちも興味があるのか土筆たちへと視線を向け、アステリアスとピピラは商人がいるのに困った事をしてくれるとため息を吐く。
「あの、マルティンさん、そろそろ手を……」
「えっ、すみません!」
慌てて手を放すマルティンは目と同様に頬を染めながら土筆と距離を取る。
「それでは出しますね。グリーンフォースを使ったロールサンドです。一人ひとつずつで申し訳ありませんが、ご賞味下さい」
大皿に盛られたグリーンフォースのロールサンドが出現すると更に大きな歓声が上がり、商人たちも視線も集める。
「見た目が鮮やかですね!」
「早速頂き!」
「何これ美味しい!」
「パンと肉に野菜がシャキシャキ!」
「ピンクのソースが美味し過ぎる!!!」
「薄く切ってあるのに肉の存在感があるわ!」
感想を言い合いながらロールサンドを口にする第三近衛中隊の近衛たち。
「一体どんな味がするのか気になりますな」
「グリーンフォースと聞こえましたが……」
「イシュタル商会の方は土筆殿の料理を召し上がった事が?」
「ありますが、あの時はシュリンプを使った料理でした。極秘事項になりますので詳細は語れませんが、美味しかったとだけしか……」
「それは羨ましい……最近出回り始めた柔らかいパンを使っているのですかな?」
「ここからではよく見えませんが、あの表情を見れば美味しい事は間違いないでしょうな……」
「マーメイドでの懇親会で何か料理を振る舞っていただく事を頼めれば……」
商人たちの話を耳に入れながらも近くにいるアステリアスの眉が上がり、首でテントへと戻れと指示され、土筆は会釈だけして白い小さなテントへと戻る。
「それではスリープキノコの対策はレガンス領領主であるイレーネイルさまと話し合いたいと思います。冒険者ギルドにも参加して頂き大規模討伐ができるよう進言させて頂きます」
「それが良いのじゃ!」
「そうですな……」
「街道の安全の確保でしたな」
「一口でいいから食べてみたいものだ……」
近衛兵たちの胃の中に消えて行くロールサンドを見つめる商人たち。
「道中は気を付けるのじゃぞ」
アステリアスの声に丁寧に頭を下げながらも、頭の中は未知の料理への興味で占められる商人たちだった。
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