③ 神による決着
「今日まで約一年間、アメリカ全土の、数々の事故現場から、かなりのニンゲンのカラダを盗んで来たのでしょう?」
サンジェルマンが、重ねて尋ねる。
『その件も、ノーコメントだ。』
バケモノは同じ答え方をした。
「例えその場で息を引き取っていても、皆さん、行方不明者扱いになります。遺された家族は、さぞやご心配な事でしょうね?」
『オレの知ったことか!』
モスマンは、吐き捨てるようにそう言った。
この最後の一言で、カグヤのハラは決まった。彼女は背中に隠し持っていたオリハルコンの剣を抜くと、躊躇い無く、そのバケモノに斬りかかった。
「悪魔め!この時空から去りなさい!」
しかし彼女の剣は、モスマンのカラダを薙ぎ払う事が出来なかった。何故ならソイツは、素早く固い翼を閉じて、その中に身を潜めたからだ。
キン!という金属音とともに、若きアヌンナキの剣は、跳ね返されてしまった。
それとほぼ同時に、モスマンは翼をパッと全開にして、目の前のカグヤを突き飛ばした。
ゴロゴロと草むらを転がるカグヤ。
『……じゃあな。』
それを尻目に、そのまま飛び去ろうとする、巨大な蛾男だったが……それは出来なかった。
何故なら、その両方の足首を、ガッチリと掴んでいる者が居たからだ。
ソレは成雪だった……いや、姿が変化している。上に、細く伸びた耳、長く、少し前に垂れた鼻。そう。彼はいつの間にか、セト神に変身していたのだ。
「カグヤを傷つける者は……許さない!」
彼は、モスマンの足を握った両手に、チカラを込めた。
すると、以前、地下世界でヤッたのと同じように、バケモノのカラダは、見る見る細かく分解され、分子から原子に変わり、やがてチリのようにになって、その場から消え去ってしまったのだ。
その後にはまた、黒くモヤモヤしたモノが残り、やがてソレも、空高く飛んで行ったのだった。
「カグヤ、大丈夫かい?」
セト神の姿の成雪に、助け起こされたカグヤは、不安そうな顔で答える。
「ありがとう……ねえアナタ、今、どっちなの?」
「有り難い事に、意識はボクのままですよ。どうやらセト神は、必要に迫られた時には、チカラを貸してくれるようです。」
「……そう。なら、いいんだけど。」
「ところで、伯爵。」
「何ですか?セト神の成雪君。」
「ここに遺された二人のご遺体は、どうします?」
「確か、先程の事件では、行方不明者2名という記録が、残されているはずです。ですから、今さらソレを事故現場に戻しても、史実と食い違いが出てしまうでしょうね。」




