⑫ 怪物退治
ソイツは、大きくて白い、何だか毛むくじゃらのバケモノだった。まさかコレが、ウワサに聞くサスカッチ……つまり雪男なのか?多くの話を集約すると、そのイメージは白いゴリラのような姿のはずだが……。
だがコレではまるで……。
「……まるで、シロクマか、ジャイアントパンダみたいでしょ?」
バケモノの向こう側に居る、雪子がそう言った。
彼女も既に、オリハルコンの剣を抜いていた。
つまり今、ジャンヌと雪子で、その怪物を挟み撃ちにしている状態だ。
「実際、そうなってしまった個体も、居るようだけど……今目の前に居るコイツは"メガテリウム"。古代哺乳類の生き残りよ。身長2mってところかしらね?そしてコレが、雪男の正体なのよ。」
「そう……なんですね?」
「元を正せば、ニンゲンの男の姿だったんだけど、ヒトの魂を奪うついでに、その肉まで食べてしまったあげく、すっかり理性を失ってしまった姿がコレって訳。」
「ええっ!?」
「……まあ、この知識も、あの中途半端な雪女、村田京子から聞いた、受け売りなんだけどねっ!」
雪子は喋りながらも、そのバケモノへの攻撃の手を緩めなかった。
しかしながら、彼女が飛び上がって、叩きつけた剣は、雪男の長いカギ爪で弾き返されてしまった。
「何よ。オリハルコンより硬い爪なんて、聞いてないわよ。反則だわ。」
思わず悪態をつく雪子。
「しかもコイツ、雪と氷を自在に操れるから、この山で起きる、雪崩も吹雪もコイツのせいなのよ。」
「成る程。流石は雪男ですね?」
「あと、コイツの眼を見つめちゃダメよ。精神を操られて、この寒空の下で、全裸になりたくなるわよ。」
「ああ、だから下着姿のご遺体が有ったのですね?」
「そういう事!」
今度は剣を横に薙ぎ払うが、またもやカギ爪で防がれてしまった。大きなカラダの割に、俊敏に動けるバケモノだ。
そうこうする内に、また吹雪が始まった。
明らかにピンポイントで、強風と雪が、雪子とジャンヌを狙って来る。
「私と貴女で、同時に斬りかかるしかないわ。でもその前に、この吹雪を何とかしないと……。」
「……やってみます。」
吹雪の中で、ジャンヌが意識を集中する。
すると舞い散る雪が、彼女の前でまとまり、空中で直径1m程の、大きな雪玉になった。
ジャンヌはチカラを使って、ソレをバケモノの顔面に向けて投げつけた。
バケモノは両腕を前に突き出し、直ちにその雪玉を粉砕した。
しかし、細かくなった雪玉はそのまま直進し、ピンポイントで、雪男の両目を塞いで、その視界を奪ってしまったのだ。




