次のパスダンジョン
なんでかあの青年、曲がり角曲がってからも覗き込んで来ていたもんだから結局鐵馬出せなかった。
なので。
「…………鐵馬の鍵でもなくしたか?」
クレイ達に大きな誤解をされた。
「……鐵馬を出すタイミングが無かったのです……」
「…うん」
おかげで馬なしの馬車を物珍しく眺める人だかりもできてしまって、ますます出すタイミングが無かったな。
今も見ている人いるし。
「おかしいなぁ、空挺とかあるんなら自走する馬車なんて珍しくないと思うんだけど」
ない?こんなやつ。
同意を求めてクレイを見た。
「…魔導車はあるが、こんなどこにもある馬車が自走してたら驚くだろうなぁ」
「そうなんだ…」
いっそのことめちゃくちゃ改造していれば良かったのか。
「失礼します。馬はどうされたのですか?」
やべぇ、門番も来ちゃった。
来たときの書類と違ったからか。
「すみません、すぐに出しますので…」
泣きそうになりながらノクターンが宝箱から鐵馬を取り出した。
おかしいなぁ。
入れたときは関節外して入れてたのに全部嵌まってるぞ??
鐵馬は生きている馬のように首を振って伸びをすると、いつもの定位置にやって来た。
「…ノクターンのレベルって今どうなっているんだろう」
「さぁ」
「少なくとも自動操作はレベル10に近くなってんじゃない?」
「そのうち魂搭載とか出てきそうですよね」
クレイとドルチェット、ジルハと共に馬具を取り付け準備完了。
「見世物ではないぞ!!!!」
更に集まってきた野次馬をアスティベラードが一喝。
久しぶりに見た、アスティベラードの威圧砲。
たったそれだけなのに野次馬達はビビりそそくさと逃げていった。
てかあの威圧砲、もしかしてアスティベラードのスキルかなんかなのかなぁ??だって今クロイノ後ろに居ないし。
「覚えたら便利そう」
「なにがだ?」
馬車に乗り込むときに呟いたらドルチェットが反応。
「【威圧】とか【威嚇】とか」
「お前将来の夢獣人??」
「え?なんで?」
後々わかった事だけど、【威嚇】は獣人特有スキルでした。
何とか無事に門をくぐり次のパスダンジョンへと向かう。
長い長い坂道を下りているんだけど、絶対に怖いと思ったのにこの安定感。
「もしかしてあのまま馬車自動操作してます?」
「あ…、分かります…?そっちのが揺れが少ないと気付いたので…」
どうりで、アスティベラードがダウンしてないはずだ。
後ろでアスティベラードが物凄い警戒してたのに全然酔わなくてずっと頭の上にハテナマーク浮かべてる。
時折「何故…酔わない…?」とか呟いているし。
「これでディラさんの作った衝撃を緩和するクッション?でしたっけ…?それを装着すれば更に揺れなくなると思います…」
バレてた。
鞄のなかには試作品のホップバルーンの緩和材。これをタイヤに薄く伸ばして張り付けようと思っていた。
そうすればタイヤの消耗も緩やかになると思ったのだ。
「クレイが空挺に乗せて貰うときに馬具は使わないって聞いたから改造しようと思って。といっても俺にできるのって小さい部品とかを作ることしかできないけど」
作るものが大きくなってくると不器用になってくる。
今までの経験上、部品の組み合わせなら問題ないけどひとつのモノを作るときに手のひらより大きいと失敗する。
意味が分からない。
「いつもアスティベラードを気に掛けて頂きありがとうございます…」
「うん。大事な仲間だからね」
坂道を下り終えると簡単な橋が掛けてあった。
川の中から突き出した岩の上に乗せられているだけの板のような。
「なんだこのワイヤー」
その橋の四隅に胴体程の太さのワイヤーが固定されている。
上を見ると巻き上げようの歯車。
この橋、上下に動くのか。
「この川を越えて、右に真っ直ぐだ。そうすると上り坂があるからそこを上った先にある」
クレイの指示通りに向かう。
途中で対岸越しにヘバルの街を見上げながら進むと、向こう側から渡ってこられる橋があった。
これも巻き上げできるらしい。
「上にも橋がある」
その橋は下のよりも豪勢だった。
うーん。層格差かな?
「上り坂ですので、お気をつけて…」
ゴトン。
馬車が斜めになって上り始めた。
なのに速度は変わらない。凄いやノクターン。
坂を上りきって少し行ったところで突然道がなくなった。
というよりも途中で雑草だらけで不安だったんだけど、こんな急に裂け目があるのは怖い。
「ここだ。下りるぞ」
え、ここなの?
馬車を見つからなさそうな所に移動してから裂け目に戻ってきた。
縦の洞窟っていえばいいのか、かなりの急斜面。
「【人間ロケット】?」
「いや、下まで降りきる訳じゃないからな。そのままロープ使って下りよう」
と、言われながらクレイにロープと杭を手渡された。
先導は俺ですか。
「途中横穴があるから、そこまでで良い」
「アイアイサー!」
近くの木にロープを縛り付けて下りていく。
途中で杭を打ち込んでは更に下へ。
「ここかな?」
そして言われた通りの横穴を発見した。
「よいしょ」
横穴に着地して、到達の合図で矢を射った。
これでみんなも下りてくるはず。
「さーて、次はどんなのかなぁ」
横穴のなかに設置された神殿のような建物から怒りのような圧を叩き付けられていた。




