49話 猫が走ればガムに当たる
唇にニキビができたよ!
助けてください・・・・
よろしくお願いします!!
「殺し損なっただ?聞こえたぞこのヤロー!どういうこった!なんでマーズの足裏の皮が剥がれたみたいになってんだよ!」
「最悪だし・・最悪だし・・・マジウザいし・・・・・あーしがこの世で最も嫌いなのは確信していたことが無意味に終わる事だし。邪魔したわね。あーしの確信を!!もうすぐで破裂するのはそこの男の右手だったのに・・・」
「私の・・右手が・・・?」
シフォンは自身の頭の毛を鷲掴み、掻き毟る。さっきまでの高いテンションが一転し一気に低くなった。
「あーしの生み出したこの風船ガムは軽い衝撃を受けると破裂する仕組みになってる。破裂した風船ガムの膜に触れた所は同じように破裂。内側からね。ニキビが潰れるみたいに。今みたいな小さい風船ガムに触れるだけなら、皮膚が破裂して剥がれるだけで済んだのにそこの男が握るって言うからワクワクした。握り締めると言うことは破裂の衝撃を自分一人で抱え込むこと。右手が一つ吹っ飛ぶくらいの力を、小さな風船ガムが手に入れた。と、思ってたのに・・・・」
今度は両手で頭を掻き毟りながら火星ちゃんを睨みつける。
「キモ猫が踏み潰したから、コンクリと足裏に威力が分かれちゃったし。肉球が破裂して、コンクリに亀裂が走ったし。楽しみがなくなっちゃったじゃん。まぁ、これでアンタはもう動けないし。歩けば痛みが全身に広がる。どんな能力かは知らないけど、動けないのは大きいし」
「お前、俺がいるのを忘れてるんじゃないだろうな・・」
シフォンは口の中のガムの味がなくなったのかコロコロと転がしている。
「もちろん忘れてないし。ただ、正直逃げたいんだよね。さっきまで風前の灯の2チームだけだったのにプラスで二匹増えるとね一流のあーしも、ヤバいって思うわけ」
「お前は逃さねぇぞ。さっきから色々あってイライラが収まらねぇ。誰かをぶん殴らないと気が済まねぇ。そこで提案なんだがよ・・・・
コイツら逃してやってくれ」
「何を?何を言ってるんだ。サシミくん」
「・・・・・・」
サシミは隆弘達を指差す。自分は逃がさないと言っているのに真逆のお願いをした。理不尽である。それにこんなに自分が押している状況でもうすぐ倒すことができる異能力ペットをシフォンが逃すとは思えない。すると、
「ぺっ!!」
「!!!!」「!!!」
「・・・・・・・」
シフォンがガムを地面に吐き捨てると同時に周りに浮遊していたたくさんの風船ガムが一つ残らず一気に破裂した。
「風船ガムが・・!?割れた!」
「それはいい案だし♪」
「何!!」
了承した。物凄い笑顔で手を叩いて承知した。
「ガムを消したし。今のうちに逃げることをオススメするし。アンタらと戦っている最中に気絶している飼い主とそこで寝ているネム猫の目が覚めたら色々めんどくさくなりそうだしね。全く構わないし。でもその代わり、
アンタらが代わりに死んでくれる?」
「・・・・・・・・・・・お前が勝ったらな!!!!」
サシミはシフォンに近づくとストレートや蹴りを決めようとしたが見事に避けられてしまう。
「たかひろ!!その先の校門から、ただし達が出てくるだろうぜ!ハリヤマとちはるに手伝ってもらって病院に行ってこい!ゆりかの野郎怪我してんだろ?」
「わかった・・・ありがとう!さぁ、いくぞサックくん!綾くんを早く病院へ連れて行こう!」
「はい・・」
サックと隆弘はサシミにそう言われると由里香とあんころをオブり校門にキツそうに歩いて行った。
「これで邪魔ものが消えた!よしぶん殴らせろ!」
「落ち着けし。ちょっとヒカリ?ガム・・」
「はいよ」
シフォンはサシミから距離を置き、光里からたくさんのガムを手渡ししてもらうと、橙色のガムを確認して口に運び、それ以外のガムを自身が着ているジャケットのポケットにしまった。
「クチャックチャックチャックチャッ」
「何呑気に新しいガム噛んでんだ。おい、マーズ」
「呪?」
「さっきはこんなとこに連れてきてふざけんなと思ったがよ、良くやった。連れてきてくれてありがとよ。こんなヤバそうな奴を相手にできんだかんな。お前は能力半径内か・・?俺は入ってねぇ。俺の能力半径は10メートル程だ。今からあいつらは走ってこっちに向かってくるはずだろうぜ。ムカつくがそれまで時間を稼ぐしかねぇ」
「クチャックチャックチャッ時間を稼ぐ?稼いだ後、確実に勝利するとでも思ってるみたいな言い方ね。アンタの能力が使えなくても使えるようになってもあーし達の勝利に間違いはないし!」
シフォンが右手をサシミ達に向けて突き出すと掌や腕の至る所から橙色の風船ガムが飛び出してきた。
「またガムを出してきやがった。お前は動くんじゃねぇぞ」
「呪殺!!!」
「って!おい!!」
動かぬように忠告したが火星ちゃんはその忠告を一切聞かずシフォンに向けて走り出した。足の裏の皮が剥がれているのに全速力で。
「呪、呪殺!!」
(マジで!?走れはしないはずだし!?かわりに激痛が走るはずだし!?なのに、あのきも猫はこっちに前のめりになって走ってくる。だけどそれじゃあ、あーしには届かない!!!)
「殺ー!!」
「マーズ!!戻りやがれ!下手に手を出すなぁ!!」
声は全く届いていなかった。シフォンと火星ちゃんの距離が近くなった、次の瞬間、
「呪ゥ!?」
「マーズ!!!」
「無駄だし!アンタらはあーしに近づくことすら出来ない!」
シフォンの身体全体から橙色のとても大きな風船ガムが出てくると、円状の防壁を作った。火星ちゃんは構わず突っ込んでいくと破裂せずにその風船ガムにめり込んでいる。
(なんだ・・・あれ!?破裂するんじゃないのか!!柔らかいが張りがあって割れねぇ。中にいるアイツにマーズが近づけねぇ!!)
「呪〜!!殺〜!!」
「なんで破裂しないって思ってるでしょ?」
「あ?よく聞こえねぇぞ!!」
「誰も破裂する風船ガムしか出さないなんて言ってないし。この風船ガムはあーしを守ってくれる。アンタらはあーしに近づくことはできない!!!」
橙色の風船ガムはシフォンを密封して守っている為声が聞こえづらくなっていたが、その余裕さは、顔を見れば歴然だった。そのガムにめり込んでいる火星ちゃんはもう一歩も前に進めなくなっており、足の動きを止めた瞬間、
「殺ッ!!!」
「マーズ!!!」
「まぁ、そりゃあそうなるよね。トランポリンみたいに」
跳ね返るようにサシミの方へ吹っ飛んでいった。その勢いは凄まじく止まる気配がない。
「マーズッ!!グヘェェ!!!」
「殺ッ!!!」
「おほっ♪」
火星ちゃんはサシミに激突した。凄い勢いで。だが止まらない。サシミは必死で止まろうと足の爪を立てるが全く止まらない。
「グォォォ!!お前どんだけめり込みやがったんだ!!止まらねぇ!!」
「死ッ!?殺殺!!!」
「あ?どうしっ・・・!!」
「気づいたみたいだね〜!」
火星ちゃんとサシミが、吹っ飛んでいる後ろを振り向くと、サシミの頭と同じ大きさの橙色の風船ガムが空中を浮遊していた。
「殺殺殺!死殺殺!!」
「止まれ止まれ止まれ止まれぇぇ!!!!」
「ねぇ!当たったらどうなるんだろうね!破裂するかもしれないし、破裂しない張りのある風船ガムかもしれないし!当たればわかるし何事もぉ!!!!」
「グォォォォォォォ!!!」
背中からバフっとパンパンに膨らんだ風船の音がする。
「は・・・は?」
「呪?呪?」
風船ガムにサシミの背中が当たったが破裂することは無かった。逆にホテルのベットのように柔らかい感触が背中全体に広がって動きを止めてくれた。
「・・・・・ブフッ!イヒヒ!!ヒヒヒヒ!イーヒヒヒヒ!!!」
「ヤ・ヤバい!面白すぎて!喉に、喉にガムつまる〜!!止まれ止まれ止まれぇぇ!!!!だってシフォン!フフッ!!」
「イヒヒヒ!!!」
「・・・・・・・ぶっ潰す。完全にプッツン!!こんな屈辱初めてだ・・・・ぶっ潰さねぇと・・・この怒りは収まらねぇ。完全にキレたぞ!!!」
「呪ッ!?」
怒りが抑えられなくなっなたのか、抱き抱えている火星ちゃんを自分の横に乱暴に投げるとサシミは駆け出した。
「語彙力皆無だし!!ぺっ!!!」
「呪?」
「ッ!!!」
こっちに向かってくるサシミを見た途端、口に含めていたガムをまたもや地面に吐き捨てると同時に周りに浮遊している風船ガムとシフォンを守っていた風船ガム、全て破裂した。
(まただ。いちいち周りに浮いている風船ガムを、なんで割る必要がある。さっきの防壁を破る必要性が全くねぇ。ガムを吐く必要性も。そんなに早く味は無くならねぇはずだ。意味がわからん!こいつの能力何かが引っかかる・・・)
「ハムっ!クチャックチャックチャックチャックチャッ」
シフォンは間髪入れず、自身のポケットからピンク色のガムを確認してから口に放り込み噛みまくると、左手を前に掲げた。その左手から小さなピンク色の風船ガムが一個飛び出てくる。
「アンタらが能力を使えないのはあーしらからしたら好都合!攻めて攻めて攻めまくるし!!」
「呪!!呪!!!」
「んだよマーズ!!止めろって言ってんのか?」
「呪!呪!呪!」
「お前は口出ししねぇでそこで待ってやがれ!」
「殺・・・」
全てを無視して数メートル先にいるシフォンと手から出してきた風船ガムのことしか眼中にない。
「こんなすっとろいピンクのガム、簡単によけれるぜ!!!」
「クチャ!」
本当にそのガムは遅くゆらゆらと揺れながら近づいていたが、サシミはガムを右に避けながら走り続ける。風船ガムはサシミを通り過ぎると思われた。しかし次の瞬間
「クチャッ!!!クチャックチャックチャックチャックチャックチャックチャックチャックチャックチャックチャ!!クチャックチャックチャックチャックチャックチャックチャ!!!!クチャックチャッ!!クチャックチャックチャックチャックチャックチャックチャクチャクチャックチャックチャ!」
「あぁ?」
シフォンは何度も力強く、口に含んでいるガムを噛む。手を握り締め、目を大きく開けて。すると、
「なっ!!??」
「クチャッ!はいどーん♪」
小さかったピンクのガムが一気に大きくなり範囲が広がって、横に避けたサシミの身体に少し減り込んだ。
(どうした!急にこんなに大きくなったんだ!!さっきまで石っころくらいの大きさしか無かったはずだ!割れないのか!?われるのか!?)
心の中では割れないことを願っていた。割れてしまえば、サシミの身体の半分が破裂してしまう。しかしそんな期待も虚しく、
パァン!!
(ッ!!!割れ・・・・やがった・・っ!!ってことは!!破裂?ふざけんな!こんな・・・こんな!!!)
風船ガムが腕に触れたと同時に、膜がサシミの半身に覆うかのように張り付いた。その半身は火星ちゃんの足裏と同じように、
「ぁ・・あ?あ?あ?」
ならなかった。ガムは破裂したがサシミの半身は破裂することはなかった。ただただ困惑するサシミ。左手で張り付いているガムを触れる。
「なんだ・・これ!ベトベトしやがる!!!気持ち悪ぃ!また、破裂するガムじゃねぇ!!!」
「イヒヒ!あーしはこう見えて完璧主義だし。殺ると決めたらきっちり殺るし」
張り付いているガムは気がつくと、体温のせいか、本当に口から吐き出したガムのようになっていた。コンクリートにもそのガムが及んでおり歩くのすら困難になっている。
「クソが!!風呂は嫌いだが風呂に入りてぇ!なんなんだこのピンクの・・ガ・・・ム・・・・(ピンクの・・・ガム・・・・?)」
「クチャ?」
サシミは何かが引っ掛かったのか、いじっていた手を止めた。
(なんでさっきから、コイツの出すガムの色が変わるんだ・・・ガムの性能が変わるんだ・・・さっきから気にしすぎなのかもしれねぇ。だけど気になっちまう。俺とマーズが来た時に辺りを浮遊していて破裂したガムが紫。ブドウの匂いがした。その後に出した割れないガムは橙色。これはオレンジの匂いだった。そんでもってこのベトベトのピンクのガム・・・)
鼻を動かして匂いを嗅いだ。
(・・・いちごの匂い・・・・あの猫の口からもイチゴの匂いがほのかに香ってくる・・・・ッ!なるほどな!)
「アンタ、わかってきたみたいだね。あーしの能力の全貌が。だから!!!」
サシミは口角を上げるとシフォンはそれを見るなり嬉しそうに手を大きく広げて口角を上げた。
「もうすぐで死んじゃうアンタのために全部あーしの口から説明してあげる。
あーしの能力の全てを!!」
残り・425チーム
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