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とある神兵の珍道記  作者: ペロりん
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03話 樹海~二度あることは…

ドラゴンゾンビからは逃げられない!

「もう無理!ドラゴンゾンビって、ラスボスみたいな感じじゃないの?」


 木の間を縫うように疾走しながら愚痴る。


「もう空地には寄らないんだからね!!」


 言葉通り、大きな空間は避けて走った。流石に学習したようだ。






 空地を避けつつ、移動すること7日。漸く森の切れ目に到達する。

 運が良いのか悪いのか、何故か獣に遭遇しなかったため、食事に肉類は無し。遭遇して捕獲出来たとしても、調理まで出来たかと言うと甚だ疑問ではあるが。従って、この7日間の食事は果物や木の実ばかりとなった。水は、そこかしこに湧水が出ていて、困ることは無かった。唯の水のはずなのに、ついつい飲み過ぎる程に美味しかったのは嬉しい誤算だ。

 時折、水面に反射して見える顔は、何処の王子様?といった感じの明らかな子供ではあったが、突っ込んだら負け、とばかりに無視した。

 寝る場所は、最初こそ安全面を考慮し木の上などで寝ていたが、あまりにも獣が避けているように感じたため、3日目からは開き直って地上で横になった。

 栄養が足りてないはずだし、寝不足なのは明らかなのに、何故か身体の調子は悪くない。それどころか、初日から一貫してキレキレであった。若返ったようだと思ってはいたが、それだけでは無いのかも知れない。


「やっとかよ。どんだけ広いのよ…。でも、やっと抜けた!!」


 切れ目までゆっくりと歩く。両手を万歳するかのように、天に向かって突き上げる。感慨深げに、大いなる一歩を踏み出す。

 その一歩と同時のタイミングで、20メートルほど先の地面が明滅を繰り返すのだった。


「そう来ますか…。」


 浮かび上がった魔方陣はやはり明滅の周期を早め、いつものように強烈な光を放つ。

 目を閉じ、光が収まるまで待つ。嫌々ながら、ゆっくりと目を開くと、悠然と佇むいつものドラゴンゾンビ。


「…しつこいな。倒さなきゃ先に進めないってやつですか?」


 これまで日本で平和な生きてきた男にとって、7日間のサバイバルのストレスが与える影響を尋常では無いらしい。いつもの彼なら決してこんな決断はしなかっただろう。そう、倒す!という決断を。

 切れ味鋭い剣で斬り付けてみたいという衝動もそこにはあった。抜き身の剣で地面を削りながら近寄る。


「いい加減にしてくれないかな?…しつこいと嫌われるよ?」


 家庭円満を心掛けて、温厚なイクメンと周囲で認知されていた男が、本能に従うかのように怒気を込めて呟く。

 相手を切ることしか頭にはない。

 ドラゴンゾンビも何もしないで待つなんて有り得ない。既に得意のブレス攻撃の体勢に入っていた。

 流石に真正面から斬り付ける、何て事はしない。向かって右、ドラゴンゾンビの左へ低い体制で跳ぶ。

 ドラゴンゾンビは左を向き、ブレスを放つ。

 男は剣を地面に突き刺すことで、無理やり勢いを殺し、地面を全力で蹴ることで、直ぐにドラゴンゾンビの真上に飛び上がる。既に剣を上段で構えていた。


「喰らえッ!!」


 『ガッ!ガリガリガリッ!!』落下に合わせて、剣をドラゴンゾンビの頭蓋骨に叩き付けるように斬りかかる。力強い一撃である。剣と鱗が衝突する音が響く。

 かなりな抵抗を感じる。歯を食い縛り、更に力を込める。


「斬れろッッ!!」


 『キィン!』先程までの抵抗が嘘のように、ドラゴンゾンビは頭から真っ二つとなる。

 あまりの抵抗の無さに拍子抜けしてしまい、唖然としてしまう。正に油断大敵であった。

 見上げると、ドラゴンゾンビは真っ二つになったにも拘わらず、両目で此方を見据え、割れた口からブレスを出そうとしていた。そのまま、頭上からブレスをまともに食らう形になってしまった。


「うわぁぁぁ!!」


 ブレスを浴びせ満足したのか、ここでドラゴンゾンビは力尽きたた。体全体が黒の粒子に変わり霧散する。後には赤く明滅するクルミくらいの大きさの種のような物を残していた。

 男は地面に倒れてしまっていて、そんな光景は見ていない。彼が倒れ伏す地面はブスブスと音を立てていた。今度こそ走馬灯を見ているのかもしれない。

 男とドラゴンゾンビの闘いは、誰にも知られる事なく終わる。

 訳も分からず転生して、訳も分からずに終わった憐れな男の物語であった。


ブレスって、臭そうじゃ無いですか?

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