02話 樹海~ドラゴンゾンビ再び
ドラゴンゾンビに回り込まれた!
「…一端落ち着こう。」
深呼吸を2度繰り返し、念のためもう1度深呼吸をしておく。
先ずは、体に異常が無いか確認する。
「流石に身体能力おかしいよな。火事場の馬鹿力?いやいや、あんなに体を打ち付けたら打撲位するよね?全然痛くもないし…。運動は得意だけど…やっぱ異常だよな?」
背中をさすったり、手をヒラヒラさせたり、屈伸したりして足腰の具合を確かめたりする。
「指、こんなに細くて長くないよ?腕、筋肉質過ぎじゃね?腕の毛の色…薄くね?」
視界に入らない髪の毛を1本引き抜き、日光に当てる。キラキラと光る髪。
「うわぁ、金髪ですやん…。別人みたいですやん…。」
足は筋肉質なのに太くはなく、スラッと長い。腹筋は綺麗な6等分に割れている。ただ、全体的に小振りな感じがする。
元々、中肉中背の日本人体型。健康維持のため、ジョギングは毎日欠かさず行っていた。足は毎日のように見ていたから、見間違うはずもない。最初のパンイチ状態の時には、焦っていて気付かなかった事ようだ。
「腹筋、素敵ね。足、モデルさんみたいやわぁ。整いすぎてて、作り物みたい。」
トランクスの中身を眺める。先程の髪の毛と同様の色、今まで毎日欠かさず見ていたモノとは明らかに違うモノがあった。
「…息子よ、いつの間にそんなに粗末になった?」
衝撃が強すぎて、軽く思考が停止する。
ふと視界に入る鼻が気になる。
「鼻は明らかに高いよね?」
押さえたり、挟んだり、引っ張ったり、一頻り鼻を弄る。
「高いわー。無いわー。」
頬を抓る。痛みより、感触が気になる。非常に触り心地が良い。赤子のような餅肌だ。
「…認めたくないが、別人だよね。…鏡をみたいな。」
本日何度目か分からない盛大なため息を付く。
「地球上にドラゴン何て居ないはずだし、ゾンビも存在しないはず。かなりな確率で異世界ってやつだろうな。自分の姿も違うみたいだし…転生ってやつだっけ?…まぁ、悩んでも仕方が無いか。取り敢えず、森を出ないことにはどうしようもないな。」
剣を地面に差して手を離す。今度は手前に倒れる。
「野宿はヤダな。出来るだけ、急いで出れるように頑張ろう。」
これ迄より若干速足で駆ける。程なく、先程と似たような開けた場所にぶつかる。
「…まさかね。」
と呟きながら足を踏み入れる。
ほぼ同時のタイミングで、広場の真ん中辺りで明滅が始める。
「うわー。罠みたいな感じすか?」
浮かび上がった魔方陣はやはり明滅の周期を早め、先程同様に強烈な光を放つ。
目を閉じ、光が収まるのを待つ。
目の前には先程のドラゴンゾンビ。
暫く見詰め合う両者。
「…また、君かね。」
ドラゴンが口を歪めた感じがしたが、顔の肉も腐っているから、今一分からない。
すぐに、大きく息を吸い込むドラゴンゾンビ。
「いきなりブレスですかッ!?ありがとうございます!!」
焦り、意味不明な事を口走る。
既に回避行動を実行していた。左に大きく跳ぶ。
だが、目測を誤り、木に激突しそうになる。
「セイッ!!」
剣を両手に持ち、木に斬りかかる。
体は素早く動き、木は抵抗を感じることなく斬り刻まれる。
「斬れ味抜群だわ…。自分を斬りそうで、怖いわ。」
着地し、後ろを振り替える。
倒れる木。その向こうの、先程まで立っていた場所はブスブスと音を立て、黒く焼けていた。いや、腐っているようだ。
「…どんな原理?あれ喰らったら死ねるよね?」
腰が引ける。
ドバキッドバキッと派手に音を立てて、こちらに向かってくる巨体。
「バ、バ○バ○キーン!!」
全力でその場から逃走する。後ろなんか振り返らない。
瞬間的な素早さでは、流石に負けないようだ。
逃走者の背中を暫く見詰めていたドラゴンゾンビ。その足下に再び魔方陣が浮き上がる。ゆっくりと黒い粒子と化し、魔方陣に吸い込まれて消えていく。
後には破壊された木々が残されていた。何事も無かったかのように、次第にいつもの喧騒に包まれていくのであった。
逃げるが勝ちです。




