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メイスのようなもの

 着地した先の近くにいたベリトの父親と思われる巨漢の男が感嘆の声を漏らす。

「あの像に認められそれを使いこなすということは英霊か。いや、まさかな」

 男は膝をつき、右手にメイスのようなものを握っている。服装はゆったりしたもので戦闘用ではない。身なりのいい平服といった感じだ。メイスは壁掛けに飾ってあるようなもので、いかにも急ごしらえといった感じだ。

 今回のことはこの男にとって完全に晴天の霹靂であったのだろう。

 もし彼女の父親なら話をしたいことがある。

 今回自分がヴァルハラより降りてきた理由はそれなのだから。

 しかし、今は何よりも目の前のバケモノを始末するのが問題であった。

「浅かったか」

 すれ違いざまの手ごたえに感じた違和感。確実に首を切断できるはずであった。

 血こそ噴き出たもののバケモノの首はまだ繋がっていた。いくら獅子の鬣に守られているからとはいえ、疑問が残る。

 

 ブォォオォォオッォォォ


 ダメージを受けたことによる屈辱と怒りからか、咆哮をあげ威嚇を続ける、バケモノ。

 バケモノは造次顛沛(ちょっと)の間も与えずにこちらへと攻撃のラッシュを繰り出してきた。

「だが、ひとつだけわかったことがある」

 盾によって風の気流を巻き起こし、黒点剣が放つ熱でそれを操作する。暖かい風は冷たい大気に触れるとそこへ流れ込み、気流となる。温度差が激しければ激しいほどその流れは凄まじいもとのなるのだ。

 風によって防御を行いながら剣によって敵のツメを砕き、厄介な尾を潰す作業をおこなう。

(やっぱりそうだ。こいつはオレではなく。こっちの男ばかり狙っている。そして、先ほどからの行動。これはもう間違いないな)

 尾による攻撃がきたとき、パズズはその尾に杖を貫通させ床へと縫い付けさせた。これで尾をきりはなすかしなければ、バケモノは逃げることができなくなったはずだ。

「尾を捨てて逃げるか? トカゲみたいに」

 こちらの軽口にバケモノが唸り声で返す。

「無駄だ。このバケモノに挑発など通用しない。先ほどからこいつは知性もなく暴れまわっているに過ぎないのだ」

 疲弊した状態でメイスを杖替わりにする巨漢の男。

「いや、そうじゃあない。コイツには間違いなく知性がある。さっきの一撃をこいつは身をひねって躱した。コイツはオレが手にしている道具がなんであるかを知り理解し予測している。そして今のこの眼、コイツはこちらの言葉を理解している」

「なんだと!?」

 

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