空からのおとしもの
ベリトがいまだ身動きとれないこちらに抱き着き、感謝をのべる。
「ありがたいんだが、こいつをほどきたいんだ。少し離れてくれないか」
力を失ったとはいえ、かなりの重さをもった鎖だ。抜け出すにも少し骨が折れそうであった。
「たいした人よあなた。容易いように思えたかも知れないけれど、これまで誰一人としてコレを取れた人はいないのだもの。そう、私のお兄様も……」
彼女は盾を拾うと胸に抱え、感傷らしきものに浸りはじめようと、
「ちょっと、何アレ?」
ふと、何かに気づいたように彼女が空を見上げる。それに合わせて見ると火球が光線を引きながら空を裂いていく姿が見えた。
ズオォォォォオォォォォ
隕石が落ちる際にみせる摩擦熱を帯びた落下の現象。それによく似ている。
「英霊が地上に降りる時、星が降るかのように極光が差すと言い伝えらているけど。もしかしてあなたのお仲間がまだいるの」
たしかにアイネ・クライネがヴァルハラから降りてきた可能性も考えられる。だが、この小さく粘つく不安感はそれがそうでないとささやいていた。
宮殿の方角へと落ちる。そしてあとから、響く衝撃音。
「あそこは行政区、この国の幕僚達が集まるところよ。今だとあそこにはお父様が……」
「急ごう」
何かイヤな予感がする。
すぐさま鎖をほどき戒めから逃れる。そして、彼女から盾を受け取ると、行政区と呼ばれた場所に向かって共に走り出した。
行政区と呼ばれた煙立ち上る庁舎から、逃げ惑う人々をかきわけ内部へと二人で人の流れを逆走する。恐怖におののく人々は口々になにかをわめいていおり、そこから見たこともないバケモノがでたとか悪霊がどうとかいう単語を叫んでいるのが拾えた。
「お父様はこの国で勇敢な人なのだもの。仮に皆が騒ぎ立ててるようなバケモノだったとしても逃げたりせず、必ずいの一番に現場に駆けつけてるはずよ」
「バケモノかどうかはまだわからない。集団心理が起こすパニック現象かもしれない、煙や火災、天災はそう見間違える心理が働きやすい状況だ」
できればそうであって欲しいものだが、そう言っている自分でさえ半ば疑問を持っていた。
(オレが盾をとると同時に空から何かが降ってきた? 偶然か。それともオレの知らないなにかが)
「この先が大広間よ。たぶん状況と叫びから推察するにあそこに騒動の根幹があるのは間違いなさそうね。心の準備はいいかしら」
「いいも悪いもない。行くしかないだろ」




