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被疑者二人目 武器密輸人「タナカ」①

拷問のスペシャリスト 通称 【IVE】が率いるチーム

情報特捜部 第Ⅳ班 チーム 【Echo】は対象者の確保を任命されたのだった。

──《ブリーフィング室》──


「お集まりいただきありがとうございます。早速ですが、作戦の説明を行います」


暗い部屋で光を放つスクリーンに映し出された図面の前で、そう口を開いたのはテノヒラ少尉だ。


やや長めの黒髪と美しい目鼻立ちを持つ22歳の技術師。

その清廉な容姿から部隊内の男たちに「とてもイイ」と密かに持て囃される彼女だが、

その実態は拷問具の開発から兵器運用、サイバー戦の指揮までを一手に担っており、

チーム【Echo】に不可欠な頭脳であった。


「対象者が太平洋上の船に乗船しているとの情報が第Ⅱ班から送られてきました」

「現在の船速ですと、目的地と思われる港には1日程度で到着する見込みです」

「それまでに、対象者【タナカ】の確保と違法に持ち込まれる"武器"の押収を行います」


【テノヒラ】が概要を伝え終えると、

正面に座っていたもう一人が声を上げる。


「コンテナ船に向かうなら、少人数じゃないと身動きが取りづらいね」

「私と中将で現地へ向かう、でいい?」


腕を組みながら提案したのは、弱冠20歳でありながら大尉の【ユビサキ】だ。

ポニーテールに結い上げた金髪と、幼さと美しさを兼ね備えた容姿。

汗を流す彼女の姿に男たちが「とてもイイ」と口を揃える。

20歳にして大尉の階級を持つ、戦闘のスペシャリストだ。


幼少期から叩き込まれた武術と格闘術を駆使し、

作戦時には苛烈な戦闘力を発揮するほか、

拷問時には【IVE】の右腕として支える事もある。


「今回は複雑な船内までの侵入経路が問題です」

「【タナカ】が雇っている警備兵が居る為、中将、大尉と共に私も現地へ同行します」


「珍しいね、【テノヒラ】が現場に出たがるなんて」

【ユビサキ】が意外そうに眉を上げる。

だが、その言葉に不満や不安の色はなく、頼もしい仲間の参戦を歓迎するように口角を上げた。


【IVE】は二人のやり取りを優雅な微笑みで見守った後、作戦概要を伝える。


「分かった。では我々3人で対象者【タナカ】の制圧を行う」

「対象者を確保した後、船が港へ接近した段階で、油断している警備兵を制圧」

「そのまま港で待機している本隊に押収物の引き継ぎを行う」


言葉を終えて一呼吸、一際険しい顔の【IVE】が決心にも似た感情を込めた声色で呟く。


「だが、【タナカ】は必ず我々が引き取る」

「何を、何の為に持ち込もうとしたのか、"聴取"する必要があるからな」


光を反射するシルクのような髪、すべてを見通す宝石のような瞳。

男女問わず魅了する甘美な香りを纏い、

誰もが「踏まれたい」と熱望する絶対的な存在──

それこそが、チーム【Echo】を率いる拷問のスペシャリスト【IVE】中将だ。


同期や上官を除いて本名を知る者はおらず、

部下達には【IVE】か【中将】と呼ぶよう厳命している彼女は、

この拷問部隊の象徴そのものであった。


【テノヒラ】は【IVE】の言葉を受け止めた後、それに対する補足を行う。


「ではそのように、我々は静音ヘリからファストロープ降下にて船尾へ侵入します」

「30分後の0235(マルフタサンゴ)にヘリに搭乗を開始、そのまま太平洋上の船へと向かいます」

「降下後、私のドローンで現場の偵察を行います」


【テノヒラ】の立案した計画に、【IVE】は深く頷いた。

上空からのアプローチとドローンによる死角の潰し込み──隙のない作戦プランだ。

組んでいた脚を解き、【IVE】は優雅な動作で立ち上がる。


「衛星や航空からの映像では、コンテナで敵が見えない可能性、か」

「では各自、準備を開始。30分後にヘリポートで会おう。"彼"には私から伝えておく」


【IVE】の指示を受け取った【テノヒラ】と【ユビサキ】は立ち上がり、

真っすぐと【IVE】を見つめ、一切無駄の無い動作で行われる敬礼と共に「了解」と返す。



──《ヘリポート》──



多くの航空機、戦闘機が美しく並んでいる倉庫から少し離れた位置

第Ⅳ離着陸場にはチーム【Echo】専用のヘリがローターを回しながら待っていた。


「中将、準備完了しています」


現場に待機していた整備士が敬礼をしながら出迎える。


「ありがとう」

「状況開始。全員、搭乗」


整備士に感謝を伝えた後、

すぐさま後方を歩く二人に指令を出す。


やや小型のヘリに乗り込む3人を確認した"操縦士"は、

間髪入れずに対象者が待つ船に向けて飛び立つ。

1秒の重要さを理解しているからこそ、

通常では"危険"と思われる行為を躊躇いなく実行する。


その人物は、チーム【Echo】の移動の要であった。


「中将、大尉、少尉、1時間40分後には現地上空へと到達する見込みです」

「見つからないように遠回りで迂回したのち、アプローチを実行」

「船尾上空到達後、10秒で現場から離れます」


そう言葉を発するのは、切れ長の目、美しい肌質、

手入れの行き届いた眉と短くセットされた髪。

操縦桿を握る33歳の【ニノウデ】准尉だ。


陸海空あらゆる乗り物を極めた「ダブルウイング」保持者であり、

操縦席で見せるその洗練された佇まいに、

女性隊員たちは「エモい」とため息を漏らす。


「到着までの1時間40分、装備の点検を行う。ファストロープ降下時、私から先に行く」

「降下開始後、各自3秒で降下を完了させるように」


操縦士【ニノウデ】から詳細を聞き終えた【IVE】からの指令が下る。

それに対して【テノヒラ】と【ユビサキ】は、

点検している装備から目を逸らす事なく返事をする。


「「了解」」


到着までの長くない時間で確実な"制圧"を実行する為、

ヘリ内部では、それぞれが装備を繰り返し確認し、

降下後の動きについて打ち合わせを行っている。



──《洋上 巨大コンテナ船》──



「15秒で船尾上空、降下開始地点に到着します」


【ニノウデ】が正面を見据えたまま、機内の3名に向けて伝える。


「極低空飛行でアプローチ開始、到着まで12秒 降下用意 10秒…………3、2、1、降下開始」


【IVE】から降下を開始、それに続く二人


コンテナが積み上げられた巨大な船の船尾に降りると、

すぐさまコンテナ裏に姿を隠す。


「テノヒラ、偵察を」


「了解。」


【IVE】の指示を受け、【テノヒラ】が自作の光学迷彩搭載陸空兼用のドローンを操作する


「船首までは電波が届かないので、省きます」

「船外、ここから近くに2名、そのうち1名が邪魔です。次に船内を確認します」

「船内の通路に1名、視線を送っている方向を確認します…」


【テノヒラ】が素早く周辺の状況を確認していく。


……


「視線の先に扉確認、「船倉」と記載アリ」

「警備兵の配置、視線の動かし方、恐らく対象者はここでしょう」


対象者までの道のりを、状況から導いていく。


「ユビサキと私で避けられない船外1名を制圧後、船内通路へ侵入する。行くぞユビサキ」


「了解」


船尾から船内まで続く道中に避けては通れない1名が周囲を見回していた。

障害となるモノを排除すべく動く二人の影がコンテナ船を縫うように這い回る。


「ん?なんの音だ…?」


警備兵が振り返ると、そこには2名の美しい顔の女性が黒いスーツを身に纏い、

低い姿勢で自分に向かって高速で移動している姿を"眼前に捕らえた時点"で意識が途絶える。

波音に紛れる鈍い音と共に、男は崩れるように甲板へ倒れ込んだ。


「船内通路へ侵入開始、遅れるなよ」


「了解」


警備兵を素早く排除した二人は、

倒れた警備兵の近くにある通路から船内へと続く扉に目線を送り、歩みを進め始める。

それと同時に、【テノヒラ】から通信が届く。


《そこから侵入後、進行方向に居る船倉前の巡回兵は無視出来ます》

《7秒後、移動を開始してください》

《7......3、2、1、今》


足音は波音と、軋む鉄の音にかき消され、

警備兵には後ろを通る二人の存在を知る由はなかった。


「船倉前到着、合図無しですぐに突入する。ユビサキ、合わせろ」


「了解」


【IVE】の指示に従い、【ユビサキ】も開いた船倉へ続くドアをくぐる


鉄が軋む音、波で揺れる船、湿気、潮と鉄の匂い。

対象者への距離が近づいている実感と共に緊張感が生まれる。

船倉内に突入して数秒後、奥の倉庫内から男の声が聞こえてくる


「今回の武器は~……ああ……それは……」


【テノヒラ】が【IVE】に携行させていた小型ドローンを遠隔操作し、偵察を開始する。


《……対象者確認、ハンドガンを所持しています》

《現在、左手には衛星電話、右手はフリー、銃のホルスターは後部の腰》


「了解」


入口横に張り付いた【IVE】が呼吸を殺し、

突入の瞬間を見計らう。

【ユビサキ】は瞬きをする事もなく、

【IVE】の視線、力み、呼吸まで観察し続ける。

互いに信頼をしている二人だからこそ、

行動に遅れが発生せず、瞬発的な"実行"を可能にしている。


「それで荷物だが……!? なんッ」


男は微かな気配に気付き、そちらに振り返る。

そこには自分に向かってくる"何か"がいる。

それを認識した瞬間、腰に手を回す

タナカの右手がホルスターに届くより早く、影が目の前で二つに分かれた。


突き上げられた【IVE】の掌打が【タナカ】の下アゴを跳ね上げ、脳を揺らす。

脳震盪で脱力した両腕をすれ違いざまに【ユビサキ】が取り、

【タナカ】が痛みを認識する前に、完全に床へと押さえつけた。


「対象者を制圧完了、予定時刻までここで待機する」

「テノヒラ、見つからない場所に隠れていろ」


《了解》


数瞬で対象者【タナカ】を制圧した二人が、優しく言葉を投げかける。


「さて……港までの時間、そこでゆっくり休んでいてね【タナカ】さん」

「どんな声を聴かせてくれるのか楽しみにしてるよ」


口に詰め物をされた上に、テープで口を塞がれたタナカに出来る返事は一つしかなかった。


「んむううううう!」


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