第四話 別離
喪失感は、少し時間をおいて襲ってきた。
めいめい自室に戻る前に、父さんは、ハルカが今後活動を継続できる可能性はゼロだと断言した。彼女の自己修復機能は、胴体の三割程度が失われてもどうにかなる程度には優れているものの、最後に食らった一撃による損傷はそれを大きく超えていると見られる。そもそも、一時的に大半の機能がストップしたとしても、回復の見込みがある限りは父さんとのリンクは保たれているはずだという。それがぷっつりと途切れ、今この瞬間も回復していないということは、つまりほぼ即死だったと考えるしかない、とのことだった。
ハルカの大元であるところの機会群、HAL1800に直接アクセスすれば、似たようなヒューマノイドは作れる可能性もあるにはあるけれど、完全に同じハルカが出来上がるということには決してならない――彼女があの姿を得てから蓄積してきた知識と経験、そしてそれらを基に形成された人格はあまりに複雑かつ特殊で、バックアップを取っておけるようなデータ量には収まらなかったのだという。
そんなことを聞かされてから部屋に戻り、荷造りに取りかかろうとしたところで、堰を切ったように涙があふれ出てきた。
「……うっ、うっ」
何万年もの間、たった一人で僕のことを見守り続けてくれたハルカ。目覚めてからも、少々スパルタではあったけれど様々なことを教え、助けてくれたハルカ。そして、誰よりも――おそらくは僕たち生きている人間以上に、人類の新たな歴史の始まりに胸を躍らせていたはずのハルカ。彼女に会えることは、もう二度とない。
もっと色々なことを教えてほしかった。もっと彼女のことを知りたかった。もっと一緒に生きたかった。
「――許せない」
そんな未来をすべて、僕たちから奪ったアニタ・ゲレーロ。ふつふつとわき上がった彼女への怒りは、いつしか悲しみに取って代わっていた。




