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初めての朝食

 改めての対面を終えた二人は、食堂へと向かった。

 魔女寮の一階にある、天窓からの朝日に照らされた大広間には、既に多くの魔女達が集まっていた。


 揃いの制服を着込んだ彼女達は、トレイを手に列を作り、部屋脇の厨房の前へと並んでいる。

 室内を満たす、和気藹々(わきあいあい)とした騒ぎ声と、鼻奥をくすぐる香ばしい匂いに、セリルは思わず面食らう。

 驚きから棒立ちとなる彼女を、リンファはその腕を取って、列の方へと(いざな)った。


「ほら、早く行きましょセリル! 急がないと、バラバラでボロボロな残り物のスクランブルエッグを食べなきゃかもだよ!」


 そんな世話役の指示に急かされるまま、セリルは厨房前のカウンターへと足を向ける。

 他の少女達の最後尾へと付けた後、周囲からの好奇の視線に晒され、幾つかの質問を受けること数分。

 リンファと共に長テーブルの端へと座った彼女のトレイには、青々とした新鮮な野菜のサラダと、白い湯気を上げるタマネギのスープ。そして、スライスされた焼きたての雑穀パンに、チーズ入りの黄金色をしたスクランブルエッグが、所狭しと収まっていた。


「ぐぬぅ……ニコのおっちゃん、また私のにトマトたくさん入れてっ……! 嫌いな人に食べられるのはトマトの方も嫌なはずだって、どうして分からないかなぁ。セリル、あなたトマト、好きだったりしない?」


 渋い顔で手もとを見下ろしていたリンファは、不意にサラダの皿を両手で持ち上げ、セリルに差し出す。

 正面から突き出された、厚めにカットされた赤い果実を、セリルは期待に輝いている彼女の目と見比べる。


「好きでも、嫌いでもないけど……要らないなら、もらう」

「ホント!? ありがとう~、セリるん! もうあなたはこれで、私の恩人で魂の友だよ!」


 素っ気無い彼女の呟きに、リンファは満面の笑みとなって快哉(かいさい)を叫ぶ。

 大げさなまでに喜びを顕わとする相手に、セリルは一瞬当惑した後、自然と頬を(ほころ)ばせた。


 施設で魔女達に与えられていた料理は、とても美味しいものだった。

 セリルはこれまで、見た目や味、栄養などの要素を、あまり食事には求めてこなかった。

 だからこそ、温かく、手の込んだ、食べる者のことを想ったそれらの朝食は、彼女にとって余計に衝撃的だった。

 それこそ、普段から食も細い上、今朝はほとんど食欲もなかったにも関わらず、夢中で次々と口へと運んでしまう程に。


 小さい口へと一心にパンや卵料理を運ぶセリルを、リンファは若干の驚きが混ざった、にこやかな微笑みで見守る。

 切り分けたスクランブルエッグをフォークで持ち上げた彼女は、そこでふと、小刻みな咀嚼(そしゃく)を続けるセリルに尋ねた。


「そういえば、今日の予定はもう聞いてる? 私もステラさんからは、特に伝え聞いてはないんだけど」


 事実確認をするリンファに、セリルは頬を少し膨らませたまま、小さく首を左右に振る。

 昨晩、ステラは詳しい話は明日にするとして、彼女を早々に寝かしつけていた。

 なので、朝を迎え、食事を済ませた後のことは、彼女も指示を受けてはいなかった。


「そうかぁ。う~ん、どうするんだろ? 他の人と同じなら、この後はたぶん、学園に行くことになるんだろうけど。でも、たまにアイザックの所に最初連れていかれる子もいるから、やっぱりステラさんを探して、聞いておいた方が良いよね―――― 」

「いいや、その必要はない。お前の予想は、ズバリ正解だ」


 突然、独り言めいたリンファの呟きを、芯の強い男声が遮る。

 急の返答に身を竦ませた二人は、周りへと視線を巡らせる。

 と、薄く嫌悪感の滲んだ顔付きに変わっていたリンファの隣に、机の下から何かが這い上がってきた。

 蛇のように身をくねらせ、器用に椅子へと腰を下ろしたアクタは、唖然とする同席者二人へと細めた半眼から微笑みかけた。

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