熱情:ハイテンションへの対応方法を考える件について
◇◇◇
俺は小屋にあったメジャーを使って距離を測っていた。ダンジョンバトルが始まるなら、拠点となる小屋が狙われるはず。本気で防壁作りに取り組まなければいけなくなったというわけだ。
ふと、小花を見つけた。ちょうど防壁の立つ場所で咲いており、このままでは押し潰されて建築されるだろう。
「…………」
知らない花であり潰されようがなんとも思わない。だが、一度気付いてしまえばなんとなく気になってしまう。
「……ったく。面倒だな」
悩んでいるくらいなら体を動かすか。ちょっと花の位置を動かすだけで済むのだから、たいした労力じゃないだろうしな。なんの花かは知らないが、日の当たる別のところへ植えなおした。
植えなおしてメジャーを再び取り直したときに、後ろから声をかけられた。
「なにをしているのですか、オーナー?」
「壁を作ろうと思って測ってた。おまえはどうしたんだ?」
「買い物に行く余裕があるうちに、買い溜めてきましたわ。そういえば、町人達も訓練していましたわね」
「どれくらいの戦力になるか分かるか?」
「数に入れても問題ないくらいですわよ。攻略の戦力としては傭兵がいるから申し分ないわ。だから、鍛えているのは防衛の仕方のようですわね」
おそらく敵はたくさんのモンスターを送り込んでくるはずだ。それに対して、防御の構えを優先的に覚えさせているとのこと。ギルドマスター自らが指揮をとって鍛錬に参加していて、かなり気合が入っているようだ。
俺達も負けていられない。俺達と同じく敵も固有能力を持っているはず。ならばソレに対応するのが俺達の出番というわけだ。防衛は町人で、攻めは冒険者と俺達という流れになりそうだ。
「そうだ。全員のステータスを再確認させてもらうぞ。これからの動きを考えなければならない。コウカ、みんなを呼んできてくれないか?」
「承りましたわ」
コウカの呼びかけで全員が集まった。しかし、ホミカはサボった。こんなときにもマイペース過ぎるだろ。
とりあえず、いま集まっているメンバーだけでも見ておこう。スマホをかざして、まずは俺のステータスから見ていった。
あなたのステータス
lv24
体力(HP)289
魔力(MP)78
打撃攻撃166
打撃防御151
魔法攻撃0
魔法防御0
素早さ255☆(※限界値)
幸運15
装備品
※スキルの影響で装備できません
固有スキル
王者の遺伝子
子供を生んだ場合、その子供は両親の固有スキルを全て得て、ステータスの補正がされる。
スキル
強者の打撃
こちらの打撃攻撃力が、相手の魔法攻撃力よりも大きければ、相手の魔法攻撃を筋肉的に無効化できる。
投擲
投げた物のダメージが通常時よりも1.2倍に上昇する。
威圧感
あなたの打撃攻撃よりも値が低い敵は、あなたの隣接のエリアは立ちすくんで移動ができない(あなたの隣接エリアが移動停止エリアとなる)。
覇道豪腕拳
魔力(MP)を全て消費する。相手が反撃を構えていたなら必ず受けてしまうが、このスキルは必ず当たる。相手の打撃防御を無視して、あなたのレベルと打撃攻撃を足した値を2倍した固定ダメージを叩き込む拳撃ができる。
ノーガード迎撃
対峙した敵とあなたは打撃攻撃の命中率が互いに上昇し、あなたのカウンターダメージが上昇する。
結魂の交わり
結魂した人物の状態がわかる。結魂した人物が同じ戦闘に参加しているなら、あなたの全てのステータスが少し上昇する。
マッスル神の加護・筋肉の知識
打撃攻撃、打撃防御の成長率が1.2倍に上昇する。
マッスル神の加護・野生の勘
取得経験値が1.2倍になる代わりに、武器が装備できない。
マッスル神の加護・筋肉の勘
取得経験値が1.5倍になる代わりに、防具が装備できない。
マッスル神の加護・ボディービルダーの勘
取得経験値が1.5倍になる代わりに、補助アクセサリが装備できない。
マッスル神の加護・剛筋の脈動
マッスル神に愛された者だけが得られるシークレットの加護である。
戦闘開始時に体中の筋肉が膨れ上がり戦闘態勢となる。打撃攻撃、打撃防御が2倍になる。
勇者の加護・鑑定査定
対象の名前、ステータスが分かる。
勇者の加護・アイテムボックス
無限にアイテムを詰め込められる。入れた物は時間が止まる。
勇者の加護・カリスマ(人)
人間に気に入られやすい。
魔王の加護・眷属化
あなたの味方に対し、そのキャラクターへ固有スキルを1つずつ与えられる。
魔王の加護・隷属化
HPが少ない敵に対し、隷属を強いることができる。
魔王の加護・カリスマ(魔)
魔族に気に入られやすい。
イチイ・タネブクロ
lv、15
体力(HP)78
魔力(MP)58
打撃攻撃51
打撃防御31
魔法攻撃34
魔法防御33
素早さ62
幸運72
装備品
ブリキの勲章
打撃攻撃、打撃防御が1.3倍に上昇する。きらりと光る星の形の勲章。
固有スキル
剣戟音階
あなたが攻撃を行うたびに、あなたの攻撃力と素早さが上昇していく。
スキル
天真爛漫
あなたのステータスが敵により下げられたとき、ランダムに別のステータスの値が上昇する。
お調子者
その戦闘中に撃破した敵の数に応じて、打撃攻撃が上昇していく。
結魂の交わり
結魂した人物の状態がわかる。結魂した人物が同じ戦闘に参加しているなら、あなたの全てのステータスが少し上昇する。
キジュミーヌ・マーズキ
lv、16
体力(HP)74
魔力(MP)69
打撃攻撃64
打撃防御29
魔法攻撃33
魔法防御21
素早さ41
幸運21
装備品
マスケット銃
打撃攻撃力+30
ムーンの髪飾り
女性専用装備。幸運が+10上昇する。麻痺を無効化。三日月の形をした綺麗な髪飾り。
固有スキル
七宝染銃
込める魔力の波長によってダメージや効果が変化する。
スキル
狙い撃ち
離れている距離に応じた命中減少、ダメージ減少を抑える。
援護射撃
あなたの攻撃射程内にいる敵が、あなたの味方を攻撃しようとしたとき一定確率で発動する。敵へ先制攻撃をして割り込むときがある。
悪い子の約束
援護射撃の発動確率が上昇して、味方を守りやすくなる。
結魂の交わり
結魂した人物の状態がわかる。結魂した人物が同じ戦闘に参加しているなら、あなたの全てのステータスが少し上昇する。
オウレン・ベルベーリン
lv、17
体力(HP)98
魔力(MP)141
打撃攻撃41
打撃防御45
魔法攻撃63
魔法防御51
素早さ39
幸運42
装備品
※なし
固有スキル
融合方程式
2つのアイテムを組み合わせて、別のアイテムを作ることができる。
スキル
心眼の心得え
敵からクリティカルヒットをされなくなる。
ひらめき
取得経験値が少しだけ上昇する。
道具の知識
あなたが回復アイテムを使った場合、少しだけ回復する値が上昇する。
コウカ・ベニナーバ
lv、19
体力(HP)135
魔力(MP)140
打撃攻撃76
打撃防御63
魔法攻撃67
魔法防御56
素早さ61
幸運65
装備品
装魔の指輪
打撃攻撃力+21。魔法を現界した形で保持できる魔法戦士専用の武器。
二重鉄の軽装
打撃防御+18、魔法防御+15。頑丈な鉄と、抗魔の鉄の二枚重ねになっている胸当て。
ギルドの黄金勲章
コウカ専用の装備。全ての異常状態を無効化し、クリティカル率が10パーセントアップする。
固有スキル
オーロラの羽衣
敵からの打撃攻撃のダメージと、罠ダメージを半減する。
スキル
魔武装・炎槍
魔力(MP)10を消費する。1ターンのみ、通常攻撃のダメージをアップさせ、炎属性を追加する。
魔武装・風弓
魔力(MP)10を消費する。1ターンのみ、通常攻撃のダメージをアップさせ、風属性を追加する。
魔武装・水剣
魔力(MP)10を消費する。1ターンのみ、通常攻撃のダメージをアップさせ、水属性を追加する。
応急処置
魔力(MP)15を消費し、味方の体力(HP)を20パーセント回復させる。
好奇心
未知の敵に出会ったとき、その敵の弱点属性や耐性属性を察知できる。
黒騎士とのギリギリの戦闘で全員のレベルが上がっていた。
戦ったタイミングがイチイと同じなのに、俺とレベルに差があるのはマッスル神の加護のせいだろう。オウレンは意外とレベルが上がっていたな。いつの間にか覚えていたスキルが原因のようだ。
「このレベルで充分かは俺には判断できないところだな。コウカ、俺も含めて全員レベルはどうなんだ?」
「オーナーは大丈夫ですが、他は欲を言えばもう少しあれば完璧ですわね。黄昏の黒騎士ほどまでは求めませんが、20以上あれば万全だと思いますわ。手馴れたAランク冒険者はそれくらいですので」
「なるほどな。誰か、他に気になったことはあるか?」
「はい。補助アイテムの作成はわたしに任せて欲しいです。しかし、装備品の調達はどうしましょうか?」
オウレンの指摘したとおり、今さらであるが武器、防具が圧倒的に足りない。
逆に言うなら装備品さえなんとかできれば完璧な陣営なのだろう。金を練成できるから材料の購入には困らないため、ここで必要なのは技術である。鍛冶師が欲しいかもしれないな。
「外部から雇うのが手取り早いですが、いつまでも町と協力関係である保障はありませんわ。むしろ依存していると思われたら足元を見られてしまいます。長期的に考えればこちらが不利な条件ですわね。武器製作だけでなく簡易な修理も考えれば、自前の鍛冶師が欲しいところですわ」
「オウレンおねーさんは武器を作るのはできないの?」
「わたしは無理ですね。アイテム専用ですから」
「鍛冶師には賛成だよ。わたしはこの銃が好きだから、なるべく他の銃に買い換えたくないかも」
ダンジョンに来てくれる鍛冶師を探すこと。それが目下の課題となった。
「武器の件は俺がなんとかしよう。今から町長との話し合いで町へ出かけるから、その時にできるならスカウトしてこよう。おまえらはレベル上げだ。鍛錬の方法はコウカに全て任せる。頼んだぞ」
「専門ではないですが、今のダンジョンの人材では仕方ありませんわね。お引き受けいたしますわ」
◇◇◇
小屋から出るとぽかぽかした日差しが出迎えた。そよ風が木々をくすぐり、葉の楽器がさらさらと奏でている。小鳥がさえずり、森は癒しのオーケストラとなっていた。
街へ向かうため森を歩いていると大きな鉄板を見つけた。なにが起こっているのかと慎重に歩を進めると、そこには人間よりもひとまわり大きな背丈のロボットらしきものが立っていた。重厚な鎧のようにも見えるが、竜の顔のようなヘルメットの半分が割れて、機械の基盤らしきものが見えている。SFで出てくる機械兵士というやつだろうか。
「おお! そこのあんやん! その鉄板を取ってくれんかのぅ」
「ロボがしゃべりかけてきた!? その体はどうしたんだ?」
「ようけェ帝国兵と戦ってな。ありゃァ50はおったんじゃないか? 見てくれの通りでワヤになったじゃけん。いやァ、よいよ困っちょったんじゃ」
なんかすごく訛ってる。
「のォ、見たとおりこっちはこういうサマなんじゃ。ちょいと助けてくれぇよ、なァ、あんやん?」
「まあ、そこまで言われたら……。って、なんだこれ!? このパーツ、見た目よりも重ぇっ!」
「たいぎぃじゃろうが、男の価値は気合いと情熱じゃ! もうちょいとだけ頑張ってみぃ。デカいのは、あとソレだけじゃけェのぅ」
「おまえっ! 俺だから良かったものの、なんていう重さを気軽に頼もうとしたんだよ。このっ、うぉぉぉっっ!」
「我が応援しちょるけェ、シャキッとせぇ! さァ、心のエナジー全開じゃァ! 情熱パワーを燃やし尽くせェッッ! エールを送れェッッ! 熱血ファイトを燃焼じゃァァッッ!」
なんか熱い口上の応援である。
熱血すぎる応援を受けながら、パーツを運んでいく。気分としては大きなロボットのプラモデルを作ってるみたいでなかなか楽しいものだった。
「ええのう! あんやん、よいよ真面目じゃのう! ええ男じゃのう! 作りたてじゃった頃の帝国の若大将を思い出すのう! げに、あの時は大変じゃったのう! 懐かしいのう!」
「創立のときに関わっていたのかよ。すごいな、おまえは」
「もはやそりゃァ昔の話じゃがのぅ。今は逃げちょるからなァ。あっはっはっ!」
ロボットの肩腕が変形し、バーナーになってパーツを溶接しはじめた。運んでいったパーツが少しずつ形になっていく。シールドができて腕に貼り付けた。さらに次々に武器が出来上がっていく。伸縮できる槍に、手の甲に付ける銃。はたまたドリルまである。
次々に武器が出来上がっていく光景が面白くて、気づけばずっと眺めていた。
「ちなみに性別は男なんだよな?」
「その通りじゃ」
「良かった! 最近、生きた心地がしないから、話し相手になってくれると本気で助かる」
「こっちもヒマじゃからええけれども、一緒にいりゃァ帝国に狙われるかもしれんで。我は帝国の研究所から逃げて来たけェのぅ」
「おまえ、機械なのに逃げ出してきたのかよ?」
機械と言えば冷酷に命令厳守するイメージがあるが、堂々と命令違反をしてきたと宣言された。
「まさか黄昏の黒騎士が出陣しちょったとはのぅ……。窮地は男の華じゃが、よいよたいぎぃ話じゃわい」
もしかして、コイツのせいで帝国兵がはるばる俺の森のダンジョンにまでやってきたのだろうか。そう考えている間に、ほぼロボットの修復が終わったようだ。
「よっしゃ! あとは銀さえあればええんじゃがのぅ。銀があれば我の電気回路の細かい修理ができるんじゃ」
話を聞いてみると他の金属では電気の電導が悪いため代用は出来ないらしい。
俺は硬貨の権利を発動させて銀貨を出してやる。
「これくらいあれば足りるか?」
「おお、くれるんか!? あんたァ金持ちじゃねっ!!」
「面白いものを見せてもらった礼みたいなもんだ。直していた武器もそうだが、おまえみたいな機械はそうそうお目にかかりそうにないだろうしな」
「ん? 機械? あっはっはっはっ! そうじゃったなァ、我は機械の体じゃった。よいよ傑作じゃァ、忘れとったわ! あっはっはっはっ!」
「機械なのに、機械の体を忘れる? ポンコツかよ」
「失礼なやっちゃのぅ。これでも帝国では、ブチすごいロボットじゃったんじゃがのぅ」
「それで? おまえの名前はなんて言うんだ?」
「名前…………。なんじゃったかのぅ」
「おいおい、名前を忘れたのかよ?」
「いんや。この体は単にロボットと言われとったんじゃ。名前が無かったことを思い出したんじゃ」
「あやしいな。本当は忘れたんじゃないのか?」
「嘘は言っておらん。しっかし、名前かァ……。うむ、これからはポンコツ丸と呼んでええよ!」
ひょっとして俺がポンコツと言った意趣返しなのか。不機嫌さが顔に出ていたようで、自称ポンコツ丸に笑われる。
「いんや。はじめてのニックネームじゃけェ大事にしたいんじゃ。ゆっくり考える時間も無さそうじゃけェ、帝国兵が近くにおるのかもしれんしのぅ」
「帝国兵は俺達が追っ払ったから安心してろ」
「ほうか! それなら安心じゃ! そんなら、今からソーラーパネルで充電するけェのぅ。うぉォォ――ッッ! お日さまで体中がじんわりと温まる適温じゃァッッ! その全面を焼き尽くせ、サンバーン! 燃え盛る心のエナジー100倍で、力がブチみなぎってきちょる!! あっはっはっはっはァ――ッッ!!」
ハイテンションで日向ぼっこする姿を、俺は生まれて初めて見た。




