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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
47/134

5-2

 俺はゴミ箱をあさり、何か食えるものがないか探していた。

 しかし、俺のような、にわかホームレスが食料を探り当てられるわけもなかった。どれも空の弁当の容器か、ジュースの缶ぐらい。

 俺は二日かけてあの町から出てきた。

 その間、ずっと自販機のジュースかビールで空腹を満たしてきた。

 たまにコンビニにも入ろうとしていた。

 しかし、そのたびにコンビニの一歩手前で引き返した。

 うっかり入って警察に見つかったら大変なことになる。

 全国指名手配で俺の顔は日本中に知られてしまっている。

 顔を上げ、周りを見回した。誰かが自分を見ている気がした。

 もしかしたら、警察関係じゃないか。

 あれほど派手なことをしてしまったんだ。警察が動かないわけがない。

 見回したが誰もいない。

 外気は寒いくらいだが、それ以上に体が冷える。

 不安なんだろう。

 いつか誰かが俺に気がつき『S』だと騒ぐ。

 それか、予期せぬ位置から警察が飛び出し、俺を捕まえるかもしれない。

 別の誰かが俺を殺そうとしているかもしれない。

 今の俺には武器がない。

 対抗できる手段がない。

 犯行前みたいに立ちんぼにやくざを紹介してもらおうにも、俺が今いる所にはそんなのはいない。

 俺がいるのは、やはり住宅地。

 しかし、前の街と違うのは古いワンルームアパートの数が多く、コンビにも多い。もちろん民家もあるが、それほど目立たない。

 ただ、こまめの跳ねるための公園が見つからないということだった。

 家庭から出されたゴミ袋の山の中で寝ようかとも一瞬思った。しかし、俺にはまだためらいがあるらしい。

 目の前には可燃ごみの袋が積み上げられている。

 俺がその上で寝ても道路に転がり落ちることはないだろう。だが、俺はゴミ袋の山に背を向けた。


 町内地図を見ても、公園は少し遠いところにある。

 現在位置のしるしは地図のほぼ真ん中にあるが、公園は地図の端のほうにあった。

 腹がなった。

 水などでごまかすのはもう無理だろう。

 何とかして食料を手に入れ、食わなければいけない。

「このまま飢えてしまってもいいんじゃないか?」

 俺はこうつぶやいてみるが、体のほうはそれに賛同しそうもない。

 ぼろアパートの前を通り過ぎる。

 地図に示された公園に向かうには、この方向で正しいはずだ。この辺の外灯が少ない。

 ぼろアパート群が続き、時々民家がある。

 民家の上にアパートの一室が設けられた家もある。これは下宿用だな。

 それほど流行っていそうにいない蕎麦屋や金物屋も目に留まる。

 暖簾が出て、中から明かりの漏れているラーメン屋。

 すりガラスの向こうにはいくつかの人影が確認できた。ちゃんと商売できているようだ。

 だが、俺は入れない。

 金はあるが、ダメだ。

 たとえ俺の正体が『S』とばれなくても、ホームレスは入店禁止だろう。見てくれはもちろん、今の俺の体臭はきついだろうなぁ。


 シゲキシュウS。


 また幻聴。

 もう正常に戻ったと思ったのだが、一時的に休んでいたに過ぎないみたいだ。俺はまた、発作的に誰かを殺してしまうんだろうか。

 ほとぼりが冷めるまで、ひっそりと生きていくことはできないのだろうか。

 頭、頭頂あたりがちくりと痛んだ。

 足を止めた。前に進みかけていた体が沈み込む。

 フラッシュバックが来た。

 しばらくなかったのに、思い出したかのように、俺の目の前に以前の景色が広がる。


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