5-2
俺はゴミ箱をあさり、何か食えるものがないか探していた。
しかし、俺のような、にわかホームレスが食料を探り当てられるわけもなかった。どれも空の弁当の容器か、ジュースの缶ぐらい。
俺は二日かけてあの町から出てきた。
その間、ずっと自販機のジュースかビールで空腹を満たしてきた。
たまにコンビニにも入ろうとしていた。
しかし、そのたびにコンビニの一歩手前で引き返した。
うっかり入って警察に見つかったら大変なことになる。
全国指名手配で俺の顔は日本中に知られてしまっている。
顔を上げ、周りを見回した。誰かが自分を見ている気がした。
もしかしたら、警察関係じゃないか。
あれほど派手なことをしてしまったんだ。警察が動かないわけがない。
見回したが誰もいない。
外気は寒いくらいだが、それ以上に体が冷える。
不安なんだろう。
いつか誰かが俺に気がつき『S』だと騒ぐ。
それか、予期せぬ位置から警察が飛び出し、俺を捕まえるかもしれない。
別の誰かが俺を殺そうとしているかもしれない。
今の俺には武器がない。
対抗できる手段がない。
犯行前みたいに立ちんぼにやくざを紹介してもらおうにも、俺が今いる所にはそんなのはいない。
俺がいるのは、やはり住宅地。
しかし、前の街と違うのは古いワンルームアパートの数が多く、コンビにも多い。もちろん民家もあるが、それほど目立たない。
ただ、こまめの跳ねるための公園が見つからないということだった。
家庭から出されたゴミ袋の山の中で寝ようかとも一瞬思った。しかし、俺にはまだためらいがあるらしい。
目の前には可燃ごみの袋が積み上げられている。
俺がその上で寝ても道路に転がり落ちることはないだろう。だが、俺はゴミ袋の山に背を向けた。
町内地図を見ても、公園は少し遠いところにある。
現在位置のしるしは地図のほぼ真ん中にあるが、公園は地図の端のほうにあった。
腹がなった。
水などでごまかすのはもう無理だろう。
何とかして食料を手に入れ、食わなければいけない。
「このまま飢えてしまってもいいんじゃないか?」
俺はこうつぶやいてみるが、体のほうはそれに賛同しそうもない。
ぼろアパートの前を通り過ぎる。
地図に示された公園に向かうには、この方向で正しいはずだ。この辺の外灯が少ない。
ぼろアパート群が続き、時々民家がある。
民家の上にアパートの一室が設けられた家もある。これは下宿用だな。
それほど流行っていそうにいない蕎麦屋や金物屋も目に留まる。
暖簾が出て、中から明かりの漏れているラーメン屋。
すりガラスの向こうにはいくつかの人影が確認できた。ちゃんと商売できているようだ。
だが、俺は入れない。
金はあるが、ダメだ。
たとえ俺の正体が『S』とばれなくても、ホームレスは入店禁止だろう。見てくれはもちろん、今の俺の体臭はきついだろうなぁ。
シゲキシュウS。
また幻聴。
もう正常に戻ったと思ったのだが、一時的に休んでいたに過ぎないみたいだ。俺はまた、発作的に誰かを殺してしまうんだろうか。
ほとぼりが冷めるまで、ひっそりと生きていくことはできないのだろうか。
頭、頭頂あたりがちくりと痛んだ。
足を止めた。前に進みかけていた体が沈み込む。
フラッシュバックが来た。
しばらくなかったのに、思い出したかのように、俺の目の前に以前の景色が広がる。




