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殺しの天才  作者: 迫田啓伸
18/134

2-10

 発想は小学生並だな!

「ちょっと待ってって。そんな昔のことを言ってるの?」

 俺にとっては、時間なんか関係ない。

 お前たちが、俺にやったように、俺がお前たちにしているんだ。

 悪いか?

 俺が自殺を選んでも、お前たちは何も感じなかっただろうな。

 俺は、お前たちの前で愛想笑いを浮かべるたび、疑問だった。なぜ、お前たちと仲間にならなければいけないのか、と。

 俺は違うんだよな。

 それとも、仲間って、無抵抗をいいことに金を取ったり、昼飯のパンを買いにやらされたり、聞こえよがしに陰口を言ったり、錠剤の粉末を制服にかけて汚したりする奴のことか?

 そして、当人が言って傷つくようなことを公然と言ったりすることか?だまして金とって、暴力を振るう連中の中に、いなければいけなかったのか!

「でもそれは本当のことだろ?」

 怪我しているのに元気な奴だな……。

 俺はそいつの生命力にちょっと感心していた。

「だからなんだというんだ。本当のことだから言っていいのか?」

 俺は叫んだ。同時にそいつの顔を蹴った。

「だからなんだ! 貴様!それで俺がどんな思いしたと思っているんだ! 死ね、シネよ、くそがぁ! ぶっ殺すぞ! ぶっ殺すぞ、コラァ! ああっ! おとなしくしてりゃ付け上がりがって! 何とか言え! コラァ!」

 俺は蹴った。何発もそいつの顔めがけて蹴りを繰り出した。

「いたい、痛い……」

「うっせぇ! しね! くずがっ! くずやろうがぁっ!」

 そのとき、全く別の方向から「やめろ!」という声が聞こえた。

 彼の服装は警察官のそれだった。

 俺は蹴るのをやめた。

 警察官は緊張した面持ちでこちらに近づいてくる。そいつの顔ににわかに明るさが戻ってきたようだ。今、ちょっと表情が緩んでいる。

「なんです?」

「なんですじゃない? 何をしているんだ?」

「何も?」

「そんなわけないだろう」

「おまわりさん、助けてください」

 ちょっと待て。

 どうしてお前が警察に頼るんだ?

 中学時代、こいつは先生を頼った俺に逆恨みした。自分ひとりで何もできないとか、卑怯者、馬鹿。マザコン、意思がない。その他の暴言を使い、俺をののしった。

 だが、なぜ、こいつは警察に頼ることができる!

 俺はそいつの顔を蹴った。

 そのとき、後ろの壁にそいつの頭がぶつかったようだが、気にならなかった。さらに、地面に横たわったそいつの顔を踏みつけた。

 悲鳴らしきものが耳に届く。若い警察官の顔も変わる。

 が、それがどうした。

「やめろ! 足をどけろ!」

「お前は引っ込んでろ。そもそもこいつは、お前には助けてほしくないようだしな」

「何?」

 よく考えれば、この警察官さえ来なければ、もっとスムーズにことが進んだはずだ。

 邪魔しやがって。

 俺は、警察官に次々と言葉を発していた。

 考えて話したわけじゃなく、口から勝手に言葉が出てきたような感じだ。

 警察官は一歩も引きさがらなった。しかし、表情は引きつっている。

「引っ込んでろよ、どうせコネで入ったんだろ?」

 警察官は血色ばんだ。

 俺と同年代の、筋肉質な男だ。俺よりも少し背が高いぐらいだ。当然柔道などの格闘技をやっているだろう。

 細い目で俺をにらみ、眉間にしわを寄せた。

「これは俺とこいつの話なんだよ。関係ない奴は引っ込んでろ」

「おまわりさん、たすけて……」

 何か言おうとしていたので、俺はそいつの頭を蹴った。俺の足の裏と建物の壁に挟まれ、押しつぶされそうになっていたため、そいつの言葉はかき消された。

「ちくんじゃねえよ、鼻糞野郎」

「やめろ!」

「ああっ!」

 警察官は俺に突進してきた。筋肉質ないい体格、俺はちょっと反応を遅らせてしまった。

 気がつくと、俺は襟をつかまれていた。

「静かに。俺が誰だか知ってるか?」

 この言葉は最後まで言えなかった。俺の体が勝手に反応して、M500を引き抜いていた。そして、警察官のあごに銃口を当てていた。

「知るか! ぼけっ!」

 引き金を引いた。

 マグナム弾は、通常の弾よりも威力があることは、誰でも知っていると思う。

 警察官の頭はなくなり、俺の襟をつかむ手からも力がなくなっていた。

 大量の血と肉片がゆっくりと舞い、ビデオをスローで見ているかのように見えた。それらは俺が見上げなければならないほど結構な高さを飛び、何回目かの呼吸の後地面に落ちた。

 突き倒すだけで彼は簡単に倒れた。

 警察官の死体からニューナンブと財布を取り上げた。

 そのあと、奴に向き直った。

 壁に背をかけ、俺を見て震えていた。もともと白い顔がさらに白くなっていた。そう、まさに白のペンキを塗ったみたいに。俺はそいつに近寄り、足を肩にかけた。

「知り合いに電話をかけろよ」

 銃をしまい、ドスを抜いた。

 銃を撃った後、やはり手に衝撃が残る。

 眉をひそめ、手の痺れに耐えた。しかし、そいつは全く何も気づけなかったと見える。俺の顔を見つめ、ただ震えているだけだった。

 早くしろ、とせかしてみる。

「どこにも……」

「お前の嘘を俺は信じてしまった。そのおかげでお前は俺を馬鹿にし、金を取った。今度はどこがお前のバックにいる?呼んで来いよ。今なら助かる。早く呼べよ」

「やくざに、しりあい、なんて、いない」

「俺は呼べといっているんだ。つべこべ言わないで、早くやれ!」

「いない、いない。助けて、救急車……」

「財布と携帯電話出せ」

 地面に座り込み、荒くなった息を吐き出しながら、両腕を動かす。

 出血が多すぎるのか。

 それらを持つのだけで腕が震えている。力が入らないんだ。

 それを見て、俺はそいつの肩に手を当てると、力を入れて壁に押し付け、口をふさいだ。そして、ドスの刃を寝かせ、胸を突いた。

 そいつは悲鳴を上げようとしていた。しかし、口をふさいでいたため、声にならない。ただ、激しく暴れていた。

 ドスは心臓に刺さったはずだ。動きが大きければ、出血も激しくなり、死に近づく。

「どうだ。痛くなくなっただろ?」

 そうはき捨て、俺は立ち去ろうとした。

「お前、こんな仕返しにあうなんて、考えてなかったのか?」

 そいつが生きている間にこう質問したら、どういう答えが返ってきただろうか。

 俺は携帯のアドレス帳を開いた。

 卓球部員の番号が載っている。しかし、肝心の住所がない。電話番号から住所を探る方法は、さすがにわからなかった。

 そいつの携帯電話はすぐに真っ二つに折った。

 そういえば、どうしてこんな奴らに馬鹿にされなければいけなかったんだ?

 中学校で、卓球部は「雑魚の集まる部」だった。学年での格付けの低い奴ばかりが集まっていたからだ。当然例外はいたが。

 部としての成績はそれなりに良かった。

 それだけだった。俺はいつもワーストスリーから這い上がれなかった。

 そもそも卓球なんかに興味はなかった。

 なぜ入ったかは、親に勧められたから。後で詳細を述べることになるだろうから、説明はこの辺にしておこう。

 ただ、はっきり言わせてもらうなら、地獄だったよ。部活をしていて楽しかったのは、部活が終わった瞬間だった。

 毎日こんな奴らと顔を突き合せなければいけないかと思うと、それだけで気分が暗くなった。

 俺は銃を抜き、そいつの頭に向かって、発射した。

 気がすまなかった。

 死体が出血し、頭蓋が砕け、中身がつぶされていくのが見えていても、後から後から怒りがわきあがる。

 ふざけるなよ……。

 ふざけんじゃねぇ、ざこがぁ!

 こいつらに、少しでも甘い顔した俺が馬鹿だった!

 こいつら全員、中学のクラスの奴らも、高校の奴らも、仕事場の奴らも、親も、今まで俺をさげすんできた奴ら全員が許せない!

 ぶっ殺してやらないときがすまない!

 俺は憎み、怒り、妬み、狂ってしまいそうだ。

 決まった。


 すぐに決行しよう。

 そのときに命を落としてもかまわない。

 俺はもう人間でなくてもいい。

 昔は俺みたいな人間のことを鬼とか悪魔とか呼んだだろうが、それでもいい。

 俺は、殺す。


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