肉浴の宴
「今夜は肉パーティーだよ!」
みるが毛皮のフードをぐいっと持ち上げ、頭の上の小さな頭骨たちをがしゃがしゃ揺らしながら叫ぶ。
「パーティー、パーティー!」
隣でまろが、黄色い洋服の袖をぶんぶん振り回した。
二人は庭に用意されたパーティー会場へと駆け出した。会場は光るキノコでライトアップされ、その中央には、赤白のチェック柄の布がかけられた丸いテーブル。その上に、綺麗にカットされた肉が皿に盛り付けられ、出番を今か今かと待っていた。それぞれの皿に、肉の名前がひとつずつ綺麗な字で書き付けられた木の札が置かれている。
「わあ! すごい!」
みるが、テーブルを見て、感嘆の声を上げた。目を輝かせながら、テーブルの周りを跳ねるように移動する。
「うん! すごいね!」
まろは、肉の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、満足げに頷いた。洋服の袖がふわふわと揺れる。
「ねえねえ、どれからにする?」
「決めるのはあとだよ、まろ! まずは、歌わなきゃ!」
みるがびしっと人差し指を立てると、まろも慌てて姿勢を正した。二人は向かい合い、それから手をぱんと合わせる。
「いち、に、さん、はい!」
まろが両手を広げて、歌いだした。
「さっさっさくらは馬の肉!」
みるがぴょんと跳ねて続く。
「もっもっもみじは鹿の肉!」
二人は手を繋いでくるくるとテーブルの周りを回りはじめた。回るたびに札の文字がぼうっと光り、まるでリズムに合わせて踊っているようだった。テーブルの上の皿までもが、かたかたと小さく揺れて拍子を取る。
みるの頭骨の飾りがかしゃかしゃ鳴り、まろの洋服のフードがぱさぱさ揺れる。二人のテンションはうなぎのぼりで、歌はだんだん早口になっていく。
「ぼっぼっぼたんは猪の肉!」
「びっびっビーフは牛の肉!」
まろが足をもつれさせて転びそうになるのを、みるが笑いながら支える。それでも歌は止まらない。
「ぽっぽっポークは豚の肉!」
「ちっちっチキンは鶏の肉!」
最後の一節を歌い終えた瞬間、テーブルの上の肉という肉が一斉にぱあっと弾けて、きらきらした肉の粉になって夜空に舞い上がった。
「うわあああ肉吹雪!」
みるが両手を突き上げて叫び、まろはその場でぐるぐる回りながら肉の粉を浴びた。粉は月明かりを受けてきらきらと光りながら、二人の周りをふわふわと漂う。
「まろ、頭に乗ってる!」
「みるもだよ! 角みたいになってる!」
二人は互いの頭を指差して、けらけらと笑い合った。それから肩を組み、声を揃えてもう一度歌い出す。
「さっさっさくらは馬の肉!」
「もっもっもみじは鹿の肉!」
「ぼっぼっぼたんは猪の肉!」
「びっびっビーフは牛の肉!」
「ぽっぽっポークは豚の肉!」
「ちっちっチキンは鶏の肉!」
テーブルの前で即興のアンコールが始まり、小さな庭は盛大なパーティー会場と化した。明滅するキノコのライトアップ、どこからか響く遠吠え、興奮し踊り狂う二人は、肉の粉を浴びながら宴を続けた。
「もう一周!」
「もう一周!」
二人はくるくると踊りながら、何度も何度も歌い直した。歌い疲れてぺたんと芝生に座り込んでも、まだ笑いは止まらない。
「今日のパーティー、最高だったね」
「うん! 来月もまたやろうね!」
「絶対!」
空に舞った肉の粉が、ゆっくりと二人の上に降り注ぐ。まるで祝福のように、きらきらと。
二人はくるくると踊りながら家路についた。
笑い声が小さくなるにつれ、光るキノコが名残惜しそうに、ぽつり、ぽつりと明かりを落としていくのだった。




