序章 その2
木製の扉には横にスライドするタイプの覗き穴が開いている。
その覗き穴からそっと様子をうかがう。
すると、扉に手をついてうなだれている男性がいた…。
見るからに具合は悪そうである。
私は慌てて扉を開けた。
途端にその人は私の方へと倒れこんできた。
「わっ!」
倒れこんできたその人を何とか受け止める。
「くっ…。ちょっと重…い…。」
倒れこんできたその男性を引きずるように診察台へと運んだ。
それほど遠くない診察台だが、意識のほぼない男の人を運ぶのは非常につらい。
体制を何度か変えた末にようやく男の人を診察台である寝台へと寝かせた。
「ふぅ…。朝からきつい…。」
私は息を整えからがも改めて突然やってきた、依頼人を見る。
「うわっ…。」
そこで初めて気づいた。
顔が識別できないくらいに黒い。
いや、おそらく普通の人間にはこの人の顔はわかるだろう。
しかし、私には呪いで黒い靄がかかっているように見えるのだ。
「どうすれば、これだけひどい状態になるのよ…。」
私は診察台の上で苦しそうに息をしている男の人を見た。
こうして様子を見ているだけでも黒い靄は濃くなっていき、この人全体を包みこもうとしているようだ。
「とにかく何とかしないと…。」
私はそういいながら、その人の胸に手を当てる。
『汝、我が前にその姿を具現し意思を示せ』
そう唱えると、黒い靄が胸の周りに集まりだす。
次の瞬間、黒い靄が動物のような人のような形になった。
『おい。俺様を呼び出したのはお前か?』
その黒い物体が私に向かって腕を組み、偉そうにいう。
それは男の人の胸の上で形成されているので、サイズ的には私がそれを見下ろすような恰好になるのだが…。
「そうといえばそうなるのかな?」
私がそう答えると、その黒い物体は鼻で笑った。
『ふん、煮え切らぬものよ。そんなんだから、男の一人も作れぬのだ』
「はっ?」
なんか、今、ひどいことを言われた気がする…。
いや、言われた。これは許せない…。
よし消そう。跡形もなく消し去ろう。
数秒の沈黙でそこまで考えると、慌てたような声が聞こえてきた。
『おい、よせ!俺様を消そうとするな!俺様はそこいら奴とは違うんだぞ!』
私はその声に片眉を上げ、まじまじとその黒い物体を見る。
顔ははっきりとしないが、黒い物体がにまりと笑った。
私はぱちぱちと瞬きをした後、息を吸う。
「問答無用!!!!」
そして、思いっきりその黒い物体を上から押しつぶすように男性の胸をたたく。
「うっ。」
おっと、思いのほか力が入ってしまったようだ。
慌てて男性を見る。
「うわぁ…。」
私はつぶやいてしまった。
先ほどまでこの男性を覆っていた黒い靄が消え、顔が見えるようになっている。
しかも、とても整った顔だ。
そういった話に疎い私でも知っている。
最近、街で麗しの君とささやかれている騎士のクロード様だ…。
私はそっとその人の胸から手をどかした。
黒い物体の姿はどこにもない。
これで魔祓いは終わったようだ。
ただし、これで終わったわけではない。
魔憑きになった原因を探らないとまた同じように苦しい思いをするだろう。
本当はすごく関わりたくないが、できることならこのまま外に出してしまいたいが、一応ちゃんとした話を聞かなければならない。
本当なら関わりたくないけど!!!
まだまだ序章なので、面白い展開がないです…。
お付き合いいただいた皆様ありがとうございます。




