二十五話 信頼も不信も己次第:後編
「じゃあ、これで。」
「はい、ありがとうございます。これで六枚目ですね。」
俺は、机に広がったタロットカードの中でなんとなく目についたものを選び、それを浮船さんに渡していく。
そうした流れを一心に繰り返していると、浮船さんのその言葉が耳に届いた。
自分の直感の方に意識を向けていたからか、いつの間にか枚数を数えることが頭から離れてしまっていた。
「おっと、数えるの忘れてました。助かります。」
俺は小さく会釈を交えながら感謝を伝えると、浮船さんは机に残った余りのカードを一つの束に纏めながら言葉を続ける。
「いえ、お気になさらず。早速、結果の確認の方へ移りましょう。」
「はい、お願いします。」
「タロットには、それぞれの絵柄とその上下が正しい方向が逆方向かで意味の解釈が変わって来ます。多くの場合、正位置にはポジティブな、逆位置にはネガティブな意味を含む場合が多いですが、例外もありますし捉え方によっては必ずしもその限りではありません。」
俺は顎を引いて、正面の浮船さんの方に真面目な顔を向ける。
それに応えるように、浮船さんはこれからの流れを説明し始める。
「貴方が新しく始めたことの今後を占うために、カードを六枚選んで貰いました。今回は、それぞれ最初から後にかけての二枚ずつで、その始まり、中間、終わりにかけての概要の解釈としましょう。」
浮船さんはそう言って、手に持ったカードを一枚ずつ裏側を上にして机に置いていき、それの一枚目と二枚目を横から、上下を変えないように表へ捲る。
すると、簡素な包みを身につけた男の絵と、逆さまになった、三日月の描かれた二枚のカードが視界に入る。
一部とはいえタロットカードの絵柄を見るのはこれが初めてなのだが、それでも何か生命力というか、生き物が息づくような力強さを感じた。
・・・なんかしっかりめにコメントしたけど、俺って絵のこと全然分かってねぇから余計なことは言わないようにしよ。
俺がそう思って視線を外し、二、三度瞬きするのを尻目に浮船さんはめくったカードの解説を始める。
「一枚目は愚者の正位置、二枚目は月の逆位置です。愚者の正位置には旅立ちや冒険、月の逆位置には真実が明らかになる、と言った意味合いがあります。」
浮船さんは、表に返されたカードの持つ意味の説明を行ってから、絵柄を凝視しつつ少し難しそうに眉間に皺を寄せる。
俺は、勝手に意味を解釈して割り込むのも失礼かと思って、特段何かを考えることもなくそんな浮船さんの姿を見ていた。
「恵雨さん、貴方が始めようとしていることは、貴方にとって『旅』と形容するのが近しいものとなるのでしょう。その旅路を経て貴方は、何かの真実を得るようです。逆に言えば、その真実となるまでの『謎』を解くことが必要、とも言えるのかも知れません。」
「覚えはないことも…ヒントとかって、出せます…?」
目を閉じ、慎重ながらも力強く言葉を紡ぎ出す浮船さんはそこまで言い終えると、目を開いて俺の顔へ視線を向ける。
「その『謎』、というのが一体何なのかまでは存じ上げません。飽くまでこれは道を模索する手段を講じさせるもの。その道の傍らの標識や看板を読み取るものではありませんから。きっとそれは飽くまで、貴方自身が目を凝らすべきものなのでしょう。」
その浮船さんの目からは、俺の態度から占いの正確さを確かめようとするかのような臆病さと、俺や俺の秘密への興味を感じているかのような、そんな好奇心を感じ取った。
旅立ちと、真実…偶然だと考えればそれまでだが、必然だと考えれば、今の俺の状況と重なる部分がある。
夢の中の不気味な影から言われた、俺が何かを忘れている、ということ。その答えが、あのゲームのような世界の先にあるというのだろうか?
俺は、浮船さんの言葉を聞きながらそう思う。
「・・・続けますね。」
「あぁ、すいません。」
眉を深く寄せて顎に手を当て思案したまま、感情も思考も追いついていないような言葉しか発さない今の俺に返事を求めることを諦めたのか、浮船さんは少しの間を置いて短くそう言う。
俺はそんな浮船さんの言葉に最低限の返事をすると、浮船さんは再び机のカードへ視線を移して手を伸ばす。そうしてさらに二枚、三枚目と四枚目のカードを表に捲った。
「三枚目は審判の正位置、四枚目は法王の逆位置ですね。審判の正位置には決断やそれに伴う変化や覚醒、法王の逆位置には盲信、欺瞞、権力の濫用などの意味を持ちます。」
カードを捲った浮船さんは意味の説明を続ける。
今回は流れを掴んだのか、特別迷った様子を見せることなく、解釈を述べ始めた。
「審判の正位置と法王の逆位置の意味から察するに、物語の中間地点ではターニングポイントとして大きな変化があると見えますね。法王の逆位置の意味からは、他者の信頼を裏切る不道徳、不義理と考えれば、誰かからの裏切りというのもあり得るかもしれません。ここは解釈の余地が特に大きいですね。」
浮船さんは、少し表情を曇らせながら解釈を語り終える。
その解説があまりに不明瞭すぎたことを自省したのか、満足のいく説明ができなかったのか、幾つか考える余地はあるが、そこを俺がフォローするのも無理があるだろう。
・・・なんかこう考えると、俺も無力感で顔を顰めてしまいそうになる。
お気楽にいこう。
無理をするなら、ふんわりいこうよ。はい、いつもの。
話を戻そう。裏切りや不道徳と言われても今のところはイメージしにくいように感じる部分が大きい。
浮船さんにばかり話をさせてしまっているから、相槌がてら思ったことを口にしておこう。
「この先起こるかもしれないことだって考えると、やっぱし今からそのことを推し量れるとも限らないんスかね…。なんというか、イメージしづらいような…。」
「そうお思いになるのも無理はありません。ですが、仕方もありません。占いは答えではありませんし、導きでもないのですから。」
浮船さんのその言葉を聞いた俺は、思わずそれ以降の口を噤んでしまう。
元より俺は、この占いが答えや導きとなるものではない、ということは分かった上でこの場に居るつもりだった。だから、それを言われても驚きはさほど無かった。
だが、この占いを経て答えを模索しようとする俺の思いにもあまり寄り添おうとしない浮船さんの姿勢に、俺はほんの少し、僅かだけ憤りを感じた。それが自分勝手な弱さ故だと、衝動的に行動を起こす前に気づけたから今回はまだ良かった。
だが今度は俺の経験の浅さ故にこの占いの結果をどう受け止めるべきか分からなくなってしまいそうだった。
それこそ、一切の信頼を投げ出すことも脳裏に過ぎるほどに。
俺はそれを上手く言語化することもできず、稚拙な言葉のまま口にする勇気もなく、その思いを振り払うこともできない。だから口を開くことができないのだ。
「だったら占いとはどう受け止めるべきなのか、と。悩んでいますか?」
「はい、恥ずかしながら…。」
俺が口を開けないでいると、俺の心を読み取ったのか、と思うほど的確な言葉がこちらに飛んでくる。
俺は自分の不甲斐なさに溜め息を吐きながらも、それを目の前の浮船さんに悟らせないように返事をする。
俺が自信なさげにそう答えると、浮船さんは微笑みながらこう返す。
「いえ、そんなことは。占いを受ける人も、案外多くの人が悩むことです。」
安堵させるように、恥ずかしいことではないと首を振りながらそう言う浮船さんの言葉に、俺は少し安心する。
「・・・私は、占いの結果は手札のようなものだと思っています。」
「手札、ッスか。」
俺は手札と聞いても、どういった側面がそのように捉えられるのかがすぐにイメージできない。
こういう頭の足りなさのような、自分の察しの悪い部分は時々嫌になる。
他の人がどれほどなのかは分からない。それでも、俺自身が足りていない力だと感じている。
足りない頭で考えるまま呟くその言葉を聞いた浮船さんは、その呟きを肯定するように頷きながら続けた。
「はい、手札です。占いで出た結果が吉兆であれ凶兆であれ、未然に分かっていれば心構えができるでしょう。そうして占いで聞いた結果に通じる事象と遭遇すれば、既に心構えができているので、吉兆を活かし凶兆を避けるために動きやすくなるのだ、と。そう思います。」
浮船さんのその意見を聞いて俺は、なるほどと思った。
占いは、予め心構えを作るもの。そこまではどこかで聞いたことがあるような意見だ。
だが、浮船さんはそこから解釈をもう一つ加えたのだろう。
占いの結果を手札と見るのなら、その結果が示した事象やそれに隣接する事象と遭遇した際の、こちらの行動コストを軽減する効果を持つと考えることもできなくはない。
そういう意味での、手札なのだろう。
「だから私は、皆さんがこの占いを通じて何に備えることができたのかは分かりませんが、それを私の占いのおかげだと思って欲しくは無いんです。私はカードを混ぜただけで、そのカードを選んだのも、その結果から何かを読み取ったのも、全部相手の方ですから…。」
それで褒められてもピンと来ないんです、と少しむくれたような表情でそう言う浮船さんは、きっと人間の力を信じているのだろう。
いくら占っても、どんな結果が占われても、その人の意思次第で未来は変えられることを信じているからこそ、浮船さんは占いを得意としているとは言わないのだろう。
俺はなんとなく、そう感じた。
「なるほど、腕が良いって言われる訳だ…。」
俺は思わず、そうポツリと漏らしてしまっていた。
だが、そんな一言を浮船さんは聞き逃すはずもなく…。
「あーっ!言いましたね!?貴方もですか!?私と全く面識のない新規顧客だったらこの評判も少しは変わると思ってたのに!」
「ああっと!そういう意味じゃなくて!いや、そういう意味ではあるんスけど!」
「一体どっちなんですか!」
浮船さんは俺からも、一番気にしていた部分に触れられた結果、声を一段張り上げてそう言い放つ。
俺は慌ててフォローしようと口を開くが、やはり咄嗟に俺の口をついて出る言葉は要領を得ない。
そんな曖昧な言葉を聞いた浮船さんは、むくれた表情に加えて腕を組みながら少し威圧的に言い返してくる。
俺はそれを聞いてから、ほんの一瞬だけ間を開けて言葉を纏め、改めて言葉を発する。
「えーっと、浮船さんの占いに対する考えはよーく分かったんス。その上でも、浮船さんに占ってもらいたくなる人の気持ちも分かるなーって思って…。」
「・・・それって、どういうことです?」
俺が自信なさげにそう言い終えると、浮船さんは一度深呼吸をしてから、先程より落ち着いた様子でそう返してきた。
そこで俺は、今こそ会話のチャンスとばかりに、頭をフル回転させて思考を言葉に変換する。
「ここまで占ってもらって、出た結果に伴ったお話をしてもらいました。それだけじゃなくて、浮船さん自身の考え方を聞いてると、浮船さんの強さも分かる気がするんです。」
自分で言葉にして気づいた、それもそうだろう。答えを求めてやってくる人に、そんな分かりやすい答えはないという答えを突きつけるのだから。
ただ、だからといってそれが訪れた人を突き放す言葉などではないということは分かる。訪れた人の求める答えがあるのは、その人の心の中なのだ、と浮船さんは信じているから。
それだけの確固たる信念で人を信じているからこそ。
「だから俺も、どう考えりゃいいの?だとか、どうすりゃいいの?とかって、腑抜けたまんまじゃ居られないなと思ったんス。きっと、みんなそういう思いに気づけたから、浮船さんの占いを良い方向に持っていけたんだと思いますよ。」
俺は、浮船さんの目をしっかりと見つめながらそう答えた。
そう言う俺は、気づけば少し微笑みが溢れてしまっていた。
「だから、みんな浮船さんの凄さに気づいちまうんだと思います。」
「そ、そういうことでしたら…。一口に凄さと言うなら、貴方も大概凄いこと言ってますけど…。」
俺の言葉を聞いて、浮船さんはどこか気まずそうにそう答える。
俺はそんな浮船さんへ反射的に愛想笑いを浮かべるが、それから遅れて自分の発言に理解が追いついていく。
「あっははー…いや、俺結構マジで恥ずかしいこと言っちったかも…。え、やっぱ忘れて?」
「・・・やっぱり、私より貴方の方がよっぽど凄いですよ。」
やべやべやべ…激ハズなんですケド。
許して助けてヘルプミちょんまげなんですケド。訳分かんないんですケド。
流石に今回のはいつものとか言ってる余裕ないんですケド。
「流してください…。」
「いえ、流石に無理が…。」
「流して、ください。」
「・・・はい。」
気まずい雰囲気が辺りを支配するが、俺は勇気を振り絞って言い放つ。
今のがここ数年で一番余裕がないタイミングだったかもしれない。
そう思ってしまいそうなほど地獄のような雰囲気からなんとか抜け出すことができそうだ。
俺の語彙力と伝達力が足りないばかりにこんなことが…。勉強って、大事な。
俺たちはぎこちない態度でそう言葉を掛け合い、話を切り替えることになった。無理矢理すぎ、とか言わない。
「コホン。では、話を戻すとしましょう。五枚目と六枚目の結果を開示します。」
浮船さんは、あからさまに咳払いをしてからそう言って、手元に残ったカードの最後の二枚を捲る。
そうして描かれたカードの絵柄を見て、浮船さんは改めて解釈の説明を再開した。
「五枚目が戦車の逆位置、六枚目が世界の正位置ですね。戦車の逆位置には挫折や暴走、世界の正位置には達成や完全、調和といった意味が込められています。」
「へー、なんだか最後のやつだけに注目すれば、良い感じに聞こえますね。因みに、解釈の仕方とかはどんな感じでしょう…?」
出たカードの意味を浮船さんから説明されると、俺はそれを聞いて呑気にそう答える。
いやまあ、五、六枚目を合わせて冒険の終盤の解釈を試みるんだから、そんな単純なものではないのだろうが…。
俺はそう思いながら、浮船さんの意見を尋ねた。
「これまでは、正位置のカードが出た後に逆位置のカードが出ていましたが、今回はその順番が逆になっていますね…。これまでの流れを打破することになった訳ですから、それに合わせて捉え方も少し変えてみるべきだと思います。」
「な、なるほど…と言っても、どういう感じにッスか…?」
浮船さんの言うことも分からなくはないが、ロクな経験も知識もなく、口先八丁でそれらしいことを言えるような人間でもない俺の思考だけでは具体的な発想も出る訳もなかった。
俺は相槌と質問ばかりしているような気がしてくる中、会話の体を保つために浮船さんの言葉の隙間にこちらの言葉を滑り込ませる。
「そうですね…最後、終盤の占いの結果なので、それに倣って貴方の旅路の結末と見てみましょうか。」
「ほー?でもその感じなら、世界の正位置の意味が戦車の逆位置の意味との親和性が低いようにも思えるッスけど…。」
俺は訝しんだ。
俺がさっき言った内容も当然疑問ではあるのたが、もう一つ。
俺の旅の最後が、捉え方によってそれぞれの側面があるような終わり方になるのか、とも思ったのだがその解釈の仕方はこれまでの序盤、中盤の解釈の仕方とさほど変わらないような気がしたのだ。
「はい、私もそこが少し悩ましいと感じるところです。」
俺のそれらの考えが伝わったかのように、浮船さんはそう言いながら眉間にしわを寄せる。
やっぱり、占いというのも簡単ではない。
俺と浮船さんは、そのまま少しの間机の上のタロットカードとにらめっこしていた。
「意味が重ねづらい訳ですし、いっその事それぞれ別のものとして考えるべきッスかね…?」
俺は頭の思考回路を酷使したため、頭から煙が上がるような錯覚を感じながら諦め半分ヤケ半分で、俺以外に聞こえない程度の声で小さく呟いた。
俺が呟き終えると同時に、机の向こう側の浮船さんの細められた目は、少し驚いたかのように丸く開かれ、そのまま二、三度ぱちくりと瞬きする。
「なるほど、それはアリです。」
「・・・はい?え、どれのことです?」
俺達二人の間の静寂を破った浮船さんのその言葉に、俺は気の抜けた声で返事をする。
「先程仰っていた、別のものとして考えるというやつです。」
「それのことでしたか。一応俺が言いはしましたけど、具体的な考えまでは行けてなくて…説明してもらっても良いッスか?」
誰に聞かせるつもりの発言でも無かった言葉が、浮船さんに届いていたことが全くの予想外で、俺は少し驚きながらそう尋ね返す。
それを聞いて、浮船さんは頷きながら説明を始める。
「そんなに難しい発想ではありませんよ。ただ、結末がまだ定まっていないから意味の噛み合わない結果が出たのでは、というだけですから。」
浮船さんは、あっけらかんとそう言い切る。
俺はそんな浮船さんの様子に呆気に取られて、少しの間何も言い返すことはできなかった。
俺はそれから数秒の時間をかけて意気を整え、湧き出した一つの疑問を浮船さんにぶつける。
「えーっと、うまく言えないんスけどそれって、良いんスか…?」
「まあ、私も占いのプロという訳ではないですし…これはこういうことです、間違いありません!って言い切れるような腕前は無いですよ。ただ、考え無しっていう訳でも無いです。」
浮船さんは、少し気力が萎びたような表情で自信なさげにそう言うが、途中からは再び気力を取り戻したような声でそう言い切る。
忘れかけていたが、浮船さんは俺と同い年のクラスメートであり特段占い好きという訳でもないのだ。
だから、一般的な腕の良い占い師の百発百中で正確無比な占いをする、というイメージで居るのは全くの間違いなのだろう。
俺はひっそりと内省しながら、浮船さんの次の言葉を待っていると、浮船さんはこう続ける。
「これまで行ってきた占いも、出た結果をもとに未来の出来事を推測する、という部分は変わっていません。その部分は今回も全く同じです。」
今回の説明を始めた浮船さんは、どこか活き活きとしているような気がする。俺の気のせいだろうか…。
活き活きしているというよりは、浮わついているような…これ、俺の気のせいだったら恥ずかしくなるパターンだ。
一人で勝手にそう思う俺を尻目に、浮船さんは説明を続ける。
「ただ今回は、対症療法的で非原因療法的な対応ではあります。その上で納得しやすい形で解釈しようとするならば、貴方の旅の結末は調和のとれた完全なものとなるか、何らかの均衡が破られた不完全なものとなるか。未来が定まっていないのでしょう。」
「あっはは…。なんかそれって、アリなんスかー?」
俺は、浮船さんの説明が少し無理矢理なように感じられ、思わず笑いをこぼしてしまいながらそう問い返した。
それを聞いた浮船さんの方も、自分で無理矢理な理論であったことを理解しているのか、苦笑い混じりにこう続けた。
「も、元より未来は定まったものではないですから…!それに、先程説明した私の占いへの考え方である、『未来の出来事への心構えを得る、という手札』としての占いと考えれば、あまりおかしな話でもないですよね?」
「確かに、それを言われちゃあこっちは納得するしかなくなっちまうッスね!」
俺は浮船さんの最後の説明に笑ってしまいながらそう返した。
なんだか言いくるめられたような気がするが、今回は浮船さんの会話の展開の仕方の方が上手だったということにしよう。
そう考える俺の言葉と様子を見聞きした浮船さんは微笑みながらこう言う。
「それでは、占いの結果は以上ですね。ふー…今回もなんとか乗り切れました…。」
「あははっ…お疲れ様ッス…。」
俺はそれから、占いの間も内心では焦っていたのか、気力を消耗した様子の浮船さんと占いから離れた内容で、頭をあまり使わなさそうな話題で話を振り、少しの間会話を続けた。
今回のことで、浮船さんのことが少し分かった気がする。
そう思いながら、さらに数分ほど会話を続けていると、昼休みの終わりを知らせるチャイムが辺りに鳴り響く。
「・・・が、やっぱ究極美味ェ…っと、チャイムか。結構長く話しちまってたみたいッスね。」
俺は教室の中の時計を確認しながらそう言う。
俺がそう言うと、浮船さんは幾分か気力も回復した様子で微笑みながら答える。
「はい、あっという間にもう休み時間も終わりですか…。なんだか貴方に、色々と喋り過ぎたような気もします。貴方って、案外聞き上手ですね?」
「そうなんスかね?自分じゃあんまり分かんないッスけど…。」
「はい、そうですよ。きっと、他の人も貴方はそういうところが良いって分かってるんでしょうね。」
浮船さんから突然照れくさくなるようなことを言われ、数秒間二人とも何も言えずに居た。
それはそうと、既にチャイムは鳴り周囲の生徒も授業の準備を始めているため、俺は浮船さんの前の席から立ち上がる。
「じゃ、じゃあ、俺はそろそろ席に戻りますかね。浮船さん、手間を取らせてすいませんでした。あと、ありがとうございます!」
「いえいえ、お気になさらず。それと、良ければまた来てください。貴方なら、また占ってあげても良いですから。」
「それじゃあ、その内何か占って欲しいことができたら、また相談しに来ますね。」
俺は浮船さんにそう伝えてから、自分の席に戻るのであった。
次回の更新はお休みします。テストが近いので、書いてたら多分テストの結果が死にます、ご容赦ください。




