第11話 おとちゃとフローリア、ぼくの未来でけんか
ギルドの騒ぎが落ち着いたころ、
おとちゃがぼくを抱き上げて言った。
「レン、今日はもう部屋でゆっくりしな。
大人の話がある」
ぼく
「んー……?」
ぼく(心):
(大人の話……?
またギルドのひとに怒られるの?
おとちゃはいつも怒られがち……)
ぼくは工房の隅の机で木の超難関立体パズルをいじりながら、
おとちゃとフローリアの声を聞いていた。
◆
フローリア
「……昨日と今日、連続で起きた現象から考えれば、
レンは“魔力視認”の才能が常人の数十倍よ」
おとちゃ
「数十倍て。こいつ、まだ5歳だぞ?」
フローリア
「だからよ。
魔法の高等書でも、数年のうちに読めてしまうかもしれないわ」
おとちゃ
「………………は?」
レン(複雑な立体パズルをカチカチしながら心):
(高等書ってなに……?
ぼく、たまに漢字とか間違えるよ……?)
フローリアは淡々と続ける。
「前世の記憶はほとんど失っている。
いま見せている力は、この世界固有の才能。
“魔力解析”と言ってもいい」
おとちゃ
「…………」
フローリア
「問題は——
この才能が誰かの目に触れたとき、どうなるか、ね」
おとちゃ
「……ああ。
最悪、王都が連れてくるかもしれねぇ」
ぼく(心):
(それはいやだ……
おとちゃがいないの、いやだ……)
フローリア
「だから、バルカン。
あなたは今のうちに“覚悟”を決めておきなさい」
おとちゃ
「覚悟……?」
フローリア
「レンを隠して育てるか。
あるいは、正しく守れる準備をするか。
——どちらにせよ、この子の成長速度を考えれば、時間はそれほど残されていないわ」
親方はしばらく黙り込んだ。
ギルドの火の音だけが修繕された鉄を照らしていた。
ぼく(パズルをカチカチしながら心):
(おとちゃ……?
なんかこわいはなししてる……)
◆
しばらくして、
おとちゃが低い声で言った。
「決めた」
フローリア
「教えて」
バルカン
「俺が守る。
レンが何者でも関係ねぇ。
息子なら……親が守るのが当たり前だろ」
フローリアは少しだけ目を見開いた。
「……あなたが言うと説得力あるわね」
おとちゃ
「それにな。
この才能を“隠す”のは無理だ。
こいつの成長は止められねぇ。
だったら——」
ぼく(心):
(だったら……?)
おとちゃ
「だったら、レンの“道具”を作る。
こいつが安全に成長できるように、
俺が環境を整える」
フローリア
「……鍛冶職人らしい答えね」
おとちゃ
「それしか知らねぇからな」
フローリアは優しく笑った。
「あなたが父親でよかったわ。
——レンは、きっと幸せになる」
ぼく
「おとちゃー?」
おとちゃ
「お、おうレン!どうした!」
ぼく
「パズル、できたー!」
フローリア
「……もう大人が頭を抱えるレベルの立体パズルを解いているわね。
知覚と推論が連動してる」
おとちゃ
「やっぱすげぇなうちの5歳児!!」
ギルド員(遠くから)
「親方またデレてるぞーー!!」
ぼく(心):
(おとちゃ……すき……)
ぼくはパズルを抱えて笑った。
未来のことなんてまだわかんないけど、
おとちゃとフローリアの声だけは、
なんだか安心するのだった。




