23.踊りませんか、王子様
お読み頂き有難うございます。
無駄に身分の高い集団(王子、本来の王位継承者、公爵令嬢、皇族関係者)が会場を覗いてたらとある騎士達に捕まりました。
人がひっきりなしに現れますし増えましたが、もし、新キャラでお気に召した者がおられましたら幸いです。前から居るキャラを推して下さるのは更に大歓迎です。
……お話終わったら中に入って地味にしてようと企んでいたのだけれど…案外…中々解散しないもんだな…。
陛下をガン見するにも…奥過ぎて良く見えないし。
しかも陛下の話は高速で終わったけど、何か違う人の話が始まってるわ…。誰?
その人の喋り声もしゃがれててかすれてて、しかも声が反響して良く聞こえない…。
あ、義兄さま見っけ。結構前の方にいるもんだな。
あの派手なカラーリング軍団の中でも目に付くもんね…。見慣れてるからかしら。
……顔は良く見えないけど…置物みたいに微動だにしない。
周りの人はチラッチラからガン見までしているようだけど…本人は目の前の空気しか見てません、みたいな奴…。
……火花は、今の所散ってない…か。
遠目だから分からないけど…キレてはいないみたいね。
しかし義兄さまをジロジロ見られるの、予想してたとはいえ気分良くないな。
「宰相は本当にどうでもいい話を長々と。退屈過ぎるぞ」
「て言うか今からズラかろうぜ」
「そうですわね…服がこんな派手でなければ可能でしたわね」
「い、いけませんよ…」
私達は…若干飽きて来ていた…。濃い人達に塗れたからだろうか…。
でもルディ様は関わってないのに抜け出したいのか…。夜会お嫌いなのかな。
「お前ら…中にも入らずこんな所で何を覗いているんだ?」
おわ!
誰かに見つかってしまった!!
あっ、ルディ様と一緒の制服の人と…もう一人違う制服の大柄な男性だわ。
2人とも服に沢山勲章が付いている…。
と言う事は偉い人なのかしら。
知識が無さすぎて…ヤベエマジ騎士様、超格好いいっすね!とか頭の悪そうな感想しか出ないわ。
……ぐへへ、そうだガン見しちゃおう。わー、素敵―。
「……お前ら、物凄い身分の面子の癖に…何でこんなコソコソしてるんだ」
「別にコソコソはしていない。小声なだけだぞ伯父上」
「屁理屈を言うんじゃないですよ、ルディ様……」
「うわ、ロン叔父上様…何しに来たんだよ」
「お前らがコソコソしてるから俺らに報告が来たんだろうが…」
え、この二人…ルディ様とレルミッド様のおじ様…!?
と言う事は…ええと、王侯貴族で間違いないのよね?
つまり偉い方だな!?
でも誰だ?分からない…。貴族名鑑まだ完全に覚えてない!!
で、私達が覗いていると居づらいしやり辛い、と言う苦情が入ったらしく、…私達は話が終わるまで近くの小部屋に隔離されることとなった。
意外と見られていたのか…。
中に入る人達は真面目に話に聞き入ってると思っていたのに。
…でもこんな長い話だと集中力も切れるわね。
他に目が行くわね…。
しまったな。
それにしても誰なんだろうこの方々……。
思わず横に座られたルディ様の袖を引っ張ると、お顔を向けて下さった。
うっ、流石王子様は眩いな!!
近くで拝見できる攻略対象、超眼福!目が有難くて視力良くなりそう!!いや、逆かな!?
「どうしたアローディエンヌ」
「ルディ様…こちらの方々って偉い方なのですね?」
「別に偉くは無いぞ、公爵家に比べれば」
偉い偉くないは王子様に聞くべきじゃ無かったかな…。
でも貴族を忌避していらっしゃるようなレルミッド様に聞く話題でも無さそう。
公爵家に比べれば…と言う事は、爵位的には下…?
順位を付けるなら、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵で、
称号の意味合いが強いのが准男爵、騎士爵…だったかしら
複数持つことも出来るし…、仕事によっては爵位を気にしない風潮もある…、だっけ?
そうか、貴族か…。
でも別に私自身が爵位持ちでも何でも無いしな。
向こうは年長者だしこっちが先に名乗るべきよね。
……遅刻して覗いてた上に摘まみだされた部屋の中だけど。
私は出来るだけ表情筋を動かして、騎士様方の前に出た。
「ご挨拶をしても宜しいでしょうか?」
「……うお!?」
「ハァ?こんなオッサン共にかよ?…お前本当に面倒臭え律儀さだな」
「お前いい加減どつくぞレルミッド」
「殴ってから言うな叔父上様!!痛えな!」
わあ、親戚同士仲が宜しいのね。和やか…なのよね?
ちょっと羽交い絞めにされたレルミッド様の首が締まっているようだけど。
…レルミッド様が小さく見える位お二方共体格のいい方がただわ。流石騎士様。
折角だし、不審に思われないようにジロジロ見ながら挨拶しよう。
ジャンル、騎士様は好物なのよ!!
「失礼致しますわ。お初にお目に掛かります、アローディエンヌ・マイア・ユールですわ」
「……ご丁寧に。
王都の防衛を預かっております、第三騎士団副隊長を務めております、オーフェン・ジェイル・バルトロイズであります」
「近衛騎士団所属、副隊長ロナウド・レヴィ・アルヴィエであります」
「一応爵位としてはアルヴィエが侯爵家子息、伯父上…バルトロイズは子爵になるな」
「まあ、偉い方ですのね……」
「凄いですねえ、貴族さんなんですねえ」
凄いな、騎士様かつ侯爵子息にご当主ですって。
しかもちょっと軽そうな近衛騎士様に、実直そうな騎士様って!!滅茶苦茶女子が放っとかないステータスな奴じゃん!!死ぬほどモテそう!
しかしフォーナ、貴方の環境も大分凄いと思うけどな…。主人公だし。
「いやいやいや、義妹姫に比べたら吹いて飛ぶような家だし」
「私自身に爵位は御座いません。義兄は公爵ですが、私は只の義妹です。無職ですし」
「……無職……」
「ぶっ…!!」
お二方に超笑われてる……。結構ゲラゲラ笑われている……。
笑い声、会場に響かないかしら。ってお城なんだからそんな安普請じゃ無いわよね。
でも…そんな何かおかしなことを言っただろうか。
ニートって通じ無さそうだから無職って言ったんだけど。
だって公爵の義妹なんて職業名じゃないわ。ただの家系だし。
……そう、只の義妹と言う、関係だし。
「あー面白い。いやー、昔から地味に噂の義妹姫を初めて見たけど、まあまあ普通の子じゃないか。
へー、アレッキアひ…いや新公爵はこの子を小さい頃から可愛がってるんだな……」
何だ昔から地味に噂の義妹姫って。さっきの雨の器のナンチャラよかはマシだけど。
私の預かり知らん間に、一体何の噂が立てられていたんだ…。
そしてこの方々は義姉さまが義兄さまだと知っているみたい……。
……何処まで知れ渡っているのやら、知れ渡っていないのやら。
はあ、相変わらずややこしいわ、義兄さま……。
「可愛がる?アレキはどう見ても歪んでるし粘着質だったぞ」
可愛がられては…いるけれどルディ様の発言については…。
……どうしよう、否定できんな。
義兄さまがしつこいのは今まで不変だったからな……。
私が返答に困っていると、フォーナが前に進み出て来た。
ナイス、フォーナ!!偶然かもしれないけど!!
「あのう、私の名前は……フォーナ・トドロンです。ご挨拶遅れてすみません」
「……あ、レルミッドの嫁(仮)の子じゃないか。俺先に出て来たから知らないけど、何で男の格好させてんだレルミッド。
お前そういう趣味なのかよ?特殊だなー甥っ子」
「何だ、そうなのか」
「違えええええ!!!何オーフェンのオッサンも納得してんだよ!!」
え、ちょっとアルヴィエ様そのお話超詳しく!!
嫁(仮)ですって!?
フォーナってば何時の間にご家族公認で嫁なの!?
それ結構に恋愛イベント的に…滅茶苦茶佳境じゃない!?何時の間に!!何時の間にレルミッド様とフラグが乱立していたの!?そして回収していたのね!?
フォーナ、ドジッコどころか恐ろしい子!!
何時そんな乙女ゲーなイベントが発生しているの!!見たい、見届けたい!!
この波、もしかして乗るべきかしら?乗るべきよね!?
「フォーナ」
「はいい!?」
「……応援するわ」
「はえ!?」
「色々な障害が降りかかるでしょうけど、頑張りましょうね。微力ながら手を尽くすわ」
「はわわ!?急にアロンさんが何でかやる気に……。で、でも嬉しいです!!全く何が何だかよく分かりませんが!!」
「ブギュウウ」
うんうん、こんな美味しい過程を見逃す訳にはいかんからな!!
序盤ならちょっと面倒かもと思っていたが、佳境なら手助けしたいわ!!
何が出来るか微妙だけど!!
…ってあれ、何か私、墓穴掘ってる?……ちょっと、慣れない場でテンションがどうかしてる?
コレ、フォーナの事を全面的にサポートするって言っちゃったようなもん?
…………どうしよう。
それにしても何でフロプシーは手をメッチャ叩いて来るの?……もしかして窘めに来てる?
……まさかな。
「アローディエンヌは本当に恋バナとやらが好きなのだな」
「……ええ、好きですわ。フロプシー、どうしたの?お腹が空いたの?」
「ブギュキュ」
「……関係無さそうか」
「まあ、無理だろ…。本当に何も出来ない普通のお嬢ちゃんだ」
え、何かしら?
騎士様方の視線がちょっと引っかかるわね。
特に、近衛騎士、アルヴィエ様が……。
ええと、レルミッド様の…叔父様。お母さんの弟さんだっけ?
……しかし、貴族名鑑見てもレルミッド様とルディ様の関係、サッパリ分からないんだけど。
謎だわ…。
「仰せの通り、私は凡庸で何も出来ませんが…私に何かさせようということですか?」
「やべ、聞こえました?」
「……ロン…」
全然悪気無さそうだけれど…ええと、レルミッド様のおじ様…アルヴィエ様。
この方、結構油断ならない感じ…かしら?
年上の殿方に言うのは失礼かもだけど、人懐っこそうでは有る。
けれど…そんなに善意の人では無いわよね。
少なくとも、初めて会ったばかりの小娘に無償の親切を向けるタイプでは無い感じ。
態々言わんでも良さそうな事を聞かせてきたのだからな。
……何か、面倒なことになりそうね。
「おい、叔父上様、何考えてやがる」
「勿論我が国の平穏と安寧に決まってんだろうが」
「……やめておけ、ロン」
「ねえ、義妹姫。俺の話を聞く気は有りませんか?」
「安全で素敵なお話では無さそうですわね」
え、それ寧ろ、聞けって脅しに掛かってるわよね?困るな。
アルヴィエ様は、座る私の目の前に跪いてこられた。
……わー騎士様に跪かれちゃった。どうしよー。
カッコいい大人の騎士様に跪かれてるのに、状況が微妙過ぎて心の中から棒読みが止まらないわ。
「ちょ、ハァ!?オッサ…叔父上様!!」
「わ、わ…絵になります…」
「ほう」
いや、フォーナ……絵にはならないでしょう。
アルヴィエ様だけなら兎も角。
私の所に好きな美女を入れてね!とかなら萌える絵が出来るな。うん、そうしよう。
…なーんて現実逃避も出来ない感じかしら…?
「そうだ、折角の夜会だし、俺と貴方は独り身同士。宰相殿の長話が終わったら、俺と踊って貰えませんかね?」
「……中々変わったダンスのお誘いですわね」
……わー、怖ー、何無茶振り言われるのコレー。
身内以外からのダンスの申し込み、初めてー。
こんな心寒い申し出も人生初だわー。私モブなんだけどー。
何かしらね。タダより高いものは無さそうだから…。
義兄さまに何か強請れとか頼めとかそういう系統?
それとも…『何も出来ないお嬢ちゃん』としての私の使途…とは何だ?
うーん……騎士様が私に接触する理由…。
…騎士様……サジュ様。
そうだ、サジュ様が仰ってた。ご忠告して頂いたわ。
私のスキルは…『魅了無効』は、かなりのレアスキル。
犯罪に遭いそうなリストに入ってるって。
自分の身も守れない、何も出来ない役立たず…しかしレアスキル持ち…。
あー……もしかして、囮に使いたいとか?
……それ位しか心当たり無いな。
うーんまあまあ安く見られてるなー、私…。
まあ、モブだからなしょうがないとは言え。
しっかし……さてどうするか。
幾ら素敵な騎士様のお願いでも、一時のダンスの代償に囮なんてリスキー過ぎるわね。
折角跪いてお誘いいただいても、お引き受けしたくないわねえ。
「面白い話か?僕も話に混ぜてくれ、アルヴィエ」
「いやー、ルディ様はちょっと」
「我が義理の従兄弟、サジュ・バルトロイズも絡んでいる話だろう?」
「……」
ちょっと…話が入って来ないような…驚愕の事実が今明らかになった気がするのだけれど。
え、サジュ様がルディ様の義理の従兄弟?
マジで?何で!?
ちょっと、あの貴族名鑑ガセネタで出来てるの!?ふざけないで欲しいわ!!
ってそういう話じゃ無かったな!!
直ぐ要らん方向に思考が飛んじゃうわよ!!シリアスなのに!
あら、アルヴィエ様の口許がひきつっているのが分かる。
……ポーカーフェイスの範疇ではあるけれど、案外分かりやすい方なのね。
「そうだな、最近の事件…スキル剥がしの捜査が上手く行ってないからな」
「はあ。さしずめ私へのお願いとは、囮ですか」
取り敢えずズバッと言ってみたら、ウィンク返ってきた。
何故だ。御馳走様ですが、狙いは何なのよ。
「うわ、義妹姫も賢くていらっしゃるぜ、流石流石」
「……おいロン」
「ハァ!?正気か叔父上様!!コイツマジで何にも出来ねえお嬢だぞ!?」
「不躾なお願いだとは承知してるぜ甥っ子。だがな、絶好の機会なんだよ。こんな時は滅多にこねえよ」
……アルヴィエ様って結構チャラそうだけど、仕事人間な上にかなりの合理主義者みたいね。
分からなくも無いけど…敵も味方も多そうな感じ。
まあ、こういうタイプは嫌いでは無いけれど…。
「お心迄も高貴なアローディエンヌ姫、お引き受け頂けませんかね?
勿論御身は命に代えてもお守り致します」
……貴族の習い事の一環に詩作とか有るけれど…さぞかし成績が良かったのかしらね。
こんな大仰な科白を朗々と仰るぐらいだし。
見た目通りにチャラい恋多きオトナって感じなのかしらね。
それとも……他の目的が有って、分かりやすいように挑発して下さっているとか?
……そっちも有りに見えて来たわね。
「心にも無いお誘いとお世辞を有難うございます。残念ですがお受けしかねますわ」
「アローディエンヌ姫、その瞳に負けず劣らず冷たい言い方ですね…」
これは断ってよかった感じ、なのかしら。
更に何か言われるかと思ったのだけれど。この話自体はアルヴィエ様の本意では無いようね。
「何だ、フラれたのかアルヴィエ。じゃあ僕がアローディエンヌと踊ろう」
「いや、何でですか」
「僕もまあまあ良いスキルを持っているからな。囮なんてやった事が無いし楽しそうだ」
え、ルディ様が囮?
そりゃ私なんかよりも凄いスキルの宝庫な気がするけど……。
でも何でルディ様が?
しかも私とダンスって…どう言う風の吹き回しでいらっしゃるの!?
「そして…アレキより先にアローディエンヌと踊ってみたいぞ。実に楽しそうじゃないか」
「ハァ!?ルディ!!マジかよ!?」
あーーー義兄さまへの嫌がらせね、成程。
そう来られるのルディ様。
わあ、コレで退路封鎖バッチリじゃない。拒否権無くなった…。
どうしようー。
「……俺より性格悪いな、ルディ様」
「いや、ロン。お前は性格では無く心根が汚い」
「散々だなオーフェン!?言っとくけど俺じゃ無くてアホな貴族共が押し付けてきた件だかんな!!
隊長まで巻き込んでこのクソ忙しいのにな!!」
「それならもっとちゃんと事情をご説明しろ。大体言い方が嫌らしくて下品だ。
若い女性に危険な事を強要するとは、騎士の名折れ。恥を知れ馬鹿者」
……バルトロイズ様、渋くて無口めでカッコいいと思ったけど、案外喋り出されると容赦ないのね。
「ちょ、オーフェン……そこまで言う!?
俺滅茶苦茶貧乏クジじゃねえ!?俺が好きで嫌われ役をやりたいとでも!?」
別に私如きに良心の呵責を感じて頂かずとも、お仕事で大変なのは分かってたけど。
さもなくば私のような地味モブ小娘なんぞにお声は掛からんだろう。
しかし……一応引き受ける引き受けないかは私の自由だった筈だが…。
まさかルディ様が乗っかって来られるとは。
まだ何にも返事してないのに踊る方向へ行ってるし!!
しかも義兄さまへの嫌がらせの為に!!
大人より読めない王子様だな…!
「バルトロイズ様、お気に掛けて頂き有難うございます。
アルヴィエ様、別に好きでも嫌いでもありませんのでお気になさらず」
「…アローディエンヌ姫、流石公爵の義妹だぜ。……結構キツイな」
……しまった、掛ける言葉を間違えた。
「叔父上様が悪ぃんだろうがボケ!!」
「甥っ子にまで怒られるし…じゃあお前がお守りして踊れよ!」
「無理に決まってんだろうが!!あんなんやってられるか!!」
「はうう…アロンさあん」
「おいフォーナ、お前踊れんのかよ!?踊れんなら近くで」
「代われるなら変わって差し上げたいですよ!!でも………村踊りなら…辛うじて出来ますが」
「……辛うじてか」
辛うじてってところが…切ないわね、何だか。
村踊り……盆踊りみたいなもんなのか、フォークダンスみたいなもんなのか地味に気になるわね。
でも何かちょっと…両手を大きく振ったリアクションが盆踊り寄りな気もする…。
ってどうでもいいわ。
それよりレルミッド様とフォーナって踊れない…のか。
そうか、そもそもこの二人、ダンパイベント自体が不成立なんだな……。
何たることなの。だから乗り気じゃなかったのね。
そしてフォーナが滅茶苦茶棄てられた犬みたいな目で見てくるんだけど…。
何故貴女の方が不安のドン底みたいなのよ。
「フォーナは…レルミッド様と居て頂戴」
「えええ、アロンさんをお一人にしていいんでしょうか」
「ルディ様がお出でだし、一人ではないわ。
あ、フロプシーをお願い」
「ブギュギャ!?ブギャア!!」
「ひえええ!!」
「え、何だこの生き物!?」
「珍しいな、主に東の方の生き物だが…」
そうだったのか、フロプシー…。何故此処にいるんだろう。
もしかしたらかつて誰かのペットとかで、逃げてきたんだろうか。
そして、フォーナに渡そうとした途端に今までの大人しさが何かと言う位喚かれた…。
そして超唸り始めているし…。ウサギ?って唸れるの?いや、蝙蝠の方?
「どんだけ嫌われてんだお前」
「はううう」
フォーナが抱くことは出来ず…結局レルミッド様の近くで浮いている。
何故そんなにフォーナを嫌がるんだ、フロプシー…。
前世からの敵か何かなの?恋人でも取られたとか?まさかな。
「流石に大広間のど真ん中で踊るのは、ご勘弁頂けますわよね?」
「大広間の隅っこで踊って貰うだけだよ、アローディエンヌ姫」
「攫いやすいように、目立たん所で踊れと言う事か」
「だから、攫わせる訳ないでしょうが。あんたらは国でも滅茶苦茶高位なんですよ」
…いや、そう言われてもな。
だったら囮にするなんて考えないで、実行しないで欲しいんだけど。
余程切羽詰まっておいでなのかしら。その誰だか知らない命令した貴族とやらは。
囮って……前世は勿論今も初めてだけど、こんなモブにこなせるのかしら。
……絵面は大事よねえ。
……こんなド貧相モブでなく、マデル様とミーリヤ様みたいなバインバインなおねえさん美女がいいんじゃないのかしら。
現実逃避が止まらないわ。
無事でいられるフラグなのかしらこれ。
漫画みたいに、何故か瞬間で効く謎の麻酔塗った布とかで地面に引き倒されたりしないかしら。
人間のやることに完璧は中々無いもんだし。
いえ、勿論失敗すると決めてかかる訳では無いのだけれど。
それにルディ様とダンス………とてもオイシイのだけど、これって主人公のイベントじゃないの?
しかしフォーナは全く踊れず……モブが王子様とダンスですって。
……どういう話の流れなんだよ。意味が分からない。
…あ、そうだ忘れてた、もひとつ困ったことが有る。
もしバレたら、義兄さまは激怒するわね、絶対…。
あー困った。変なことに巻き込まれてしまったわー。
無理矢理にでもサッサと会場入りしとくんだった…。
だが、ルディ様が絡んでは…断れないしなぁ。
「副隊長、ダンスが始まりました」
あ、近衛の人が言いに来てくれた…。
……本当に長かったな…その、宰相殿って人の話。
貧血で倒れた人とか出てそうよね。
「ふむ……では行くぞ、アローディエンヌ」
「分かりました」
「ちょっとしたらレルミッドも着いてけよ」
「では、我々は離れます。ルディ、気を付けろよ」
「……変な野郎の傍に行くんじゃねえぞ」
「有難う伯父上、レルミッド」
「はうう…後ですけど直ぐに行きますからねアロンさん…お気を付けて―」
皆さんと別れ、ルディ様はそっと私の手を取って下さった。
流石、エスコート慣れされてるわね。出来る王子様って素敵。
でも何か義兄さまでは無いから、若干違和感がある。目線の高さも違うし。
……まあ、別人だからな。当然よね。
扉を抜けると、廊下が何時の間にかひんやり冷えているのが分かった。
「アローディエンヌは困っているか?」
「いえ、ルディ様と踊って頂けるなんて、身に余る光栄ですわ」
「夜会で踊ったことは有るか?」
「有りませんわね」
「そうか、では僕が初めてだな」
「そうですわね。不馴れなものでご迷惑をお掛け致します」
やけに御機嫌ね、ルディ様。
そんなに楽しみなのか、私と踊って義兄さまにダメージを与えることが…。
……本当に仲悪いな。
「楽しもう、アローディエンヌ。周りなど気にするな、どうせアレキも踊っているぞ」
「………………ええ、お仕事ですものね」
いけね、謎の動悸が起こって語尾が裏返ってしまったわ。
天井近くの大きな窓からは雲が晴れたらしく星が見え、
キラキラと大きなシャンデリアが光る会場に入った私達は、そんなに注目を浴びなかった。
ルディ様の髪色と…私のモブオーラが良かったようね。
誰もそんなに関心を向けて来ないのは良い事だわ。
と思ったら………刺すような、燃やすような視線をジリジリと感じた。
おい、何よ。……睨まれるようなことはまだしてないわよ?
それともさっき扉の影から覗いてたから注目されてる?
……視線を彷徨わせてみると…滅茶苦茶目立つ塊からだった。
「公爵さま、わたくしと踊っていただきません?」
「二度目は婚約者とどうぞ」
「あら、わたくしとよ」
「婚約者がお待ちですよ」
「お話を聞かせてくださいな」
「口下手なもので」
「公爵、男同士で語り合いませんか」
「畑違いのことまで知識が及びませんので」
……超囲まれてるな義兄さま。
………うん、普通に人混みだな。よく聞き取れて喋れるわねあの中で。
聖徳太子か何かなの?凄いわね義兄さま。
…まあそうよね。
無差別魅了抑えようが、モテるのなんて分かりきってたじゃない。
何だこのイラッと感。いかん、ルディ様がお隣にお出でなのに。
シャキッとしなきゃ。
「面白いくらいに異常に囲まれてるな」
「そうですわね……………踊りませんか、ルディ様」
「乗り気だな、アローディエンヌ」
わあ、ルディ様にキラキラした笑顔を向けて頂いた。
ええ、女は度胸よ。
義兄さまが囲まれてようが知るもんですか。
不本意とはいえ、引き受けてしまったんだから、ちゃんとやらないと!!
「丁度曲が変わったぞ」
「………はい」
と、踏み出そうと思ったのに、
この地味めな割にはやたらテンポが狂ったような裏拍がじゃんじゃん入り、
変則的でややこしいステップが多い曲………。
……………やべえ。
超、苦手なヤツだコレ。
次回、アローディエンヌ、囮になるの巻(古)
苦手な曲が掛かりましたが、ルディ君とダンスです。会場には義兄さまが居ます。
……今の所城は崩落しないし燃えない予定です。




