7.悪役令嬢の関心ごと
お読み頂き有難うございます。
6~7月くらいに体温高い人からのべったりに、
ドレス装備で立ち向かう暑苦しいお茶会が続きます。
それにしても、義兄は…子供の時と態度は全く変わらない…。
何を考えているのやら…。
大きくなってからサッパリ分からないわ。
いや、子供の時から分かった試しが無いな…。
子供の考えなんて分からんわ。
まあまあ必死だったのよ、あの時は…。
「ねえねえ、最近仲がいい子がいるの?」
「ああ、ロージアですか」
「何でー?どうして仲がいいの?」
「どうしてと言われても…まあ、暇ですし」
ゲーム中も
『学校も行ってないし、暇だからで貴女の恋愛手助けするわ』
って設定だったからな。
実際その通りに動いているし実際暇だし。
攻略情報は、私の頭の中に剥がしても取れない程こびりついてるから、情報収集に動く必要もないんだよな。
安楽椅子探偵ならぬ長椅子サポートキャラ、それが私…。
だからいつも家におり、24時間貴方をサポートしますよ!!
お礼はリアルなイベント報告の萌える話で結構。
そんな私のリアル観察ライフが…始まって…私は幸せなサポート生活を送って、主人公の三次元恋愛話にキャッキャウフフウハウハ…。
だった筈なのにいいい!!
この頃失敗かバッドエンド間の綱渡りしか聞いてないぞ!!
あー、主人公と攻略対象との恋愛模様見たいなー!!聞きたいなー!!
甘々な感じとかイベントあんまり聞かないなー!?
最早序盤のイベントでもいい!
正解の選択肢を選ぶんだロージア!!そして私に語るんだ!!
家に居るから覗き見デバガメ出来ん私の為に!!
サポートキャラなのにー!!
覗き見特殊能力とか無いのかよー!?無いよー!!
…主人公可愛いけどね…。可愛いからまだ我慢できるんだけどね。
必死に攻略対象との話をしてくれる姿は可愛いし…
まだしつこく余所見してるけど…。
…予想以上に頭空っぽだったけど、顔は可愛い…。
顔しか褒めてないって?
だって最近攻略失敗したはずなのに、また他のキャラに目移りしてるんだぜ!?
思い出してロージア!!
貴方は王子様を追いかけるの!!
寧ろ王子様しか追いかけられないの!!
チラ見は結構、ガン見は厳禁!!
女神像ぶつけんぞ!!心の中で!!
そんなサポートキャラらしく、
主人公に思いを馳せて…色々イライラギリギリする私に、
義兄はマイペースに話しかけて来た。
相変わらず距離が近すぎて遠ざからない。
暑いし。
肩で押し返してやったが、全く動かない。
…くそう、モブだとチートをちょっと押し退けることすらも出来ないのか。
我がモブさショボさが憎い。
「暑いんですけど義兄さま」
「うーん暑くなってきたからねえー」
おい。離れろや。
主人公にイライラして悪役令嬢…今は令息か?にべったりされてお茶を飲む…。
どんなサポートキャラだよ。我ながら。
「さっきの話だけどー、暇だから構ってるの?」
「私は義兄さま程出来が良くないので適当に遊び歩いてるんですよ」
実際遊び歩いちゃいないけどな。
ちょっと引きこもり過ぎなくらいで。
「じゃあ僕と一緒に居てよー」
「今居るじゃありませんか。大体義兄さまお忙しいのでは?」
ここでヘラヘラしてる暇はない筈だろうに。
義兄はハイスペック悪役令嬢なので、やることが目白押しの筈なのだ。
こんな所でモブの義妹と、青とピンク色の砂糖の掛かったカップケーキ食ってる場合じゃないだろ。
それに今となっては王子の婚約者学習とかあるだろうに。
まあ、義姉…義兄のことだから簡単にこなしてるだろうけど…。
チートだからなこの人。
「そうなんだよー。疲れたよー」
「寝りゃいいでしょう」
「膝枕してー」
チートに見えないけど。
それにしても、いい年して甘え過ぎじゃねえの、この義兄は。
幾ら義妹とは言え…ちょっとなあ。
「何でや…こほん、義妹といえども異性に抱き着くのはどうかと」
「何でえ?」
「何でもへったくれもありますか」
うーんこの人、性別が有ってないようなもんだからな…。
其処ら辺の感覚…倫理観?薄いのかな?
両方が両方って言うか。
何時からか忘れたけどずっと義兄として会ってるから…。
若干義姉なのも忘れそうになるけど。
今の表向きは女性だ…。
ホントにややこしいな。
「女の子になってもいいけど、それじゃつまんなーい」
「抱き着かないと言う選択肢はないんですか」
「やだあ」
「やだあじゃなくて」
このやり取り何回目だよ。
子供の頃から数えてたら星の数になりそうだ。
「ねえー、アローディエンヌはあのバカ王子の誕生日パーティに行くの?」
「…婚約者に何てことを」
唇を尖らすな、地味に萌えるし可愛いじゃないか。
しかし何故従兄弟様=王子様を貶すのか。
本当に義兄は王子に辛辣すぎるな…。婚約者だろ。
私の知らない何かあったのだろうか。
ゲーム知識が唸らないわー。
「だって僕よりバカだもん。僕の事を未だに女の子だと思ってるよ。
苦手に思ってるよ」
「義兄さまは義姉さまでも有るので、女の子で別に間違いではないのでは。
苦手意識は知りませんけど」
「僕は王子様になりたいんだよー、アローディエンヌ」
「はあ…今の政情から見て無理でしょうねえ」
国王は健在、王子も二人健在、王弟も健在…あと、うちの義両親も健在。
乱暴に言えば、義両親が即位すりゃ義兄は王子様…。
無いわー。
あの義両親が施政者とか絶対無いわー。
あんな自分が楽するのだーい好きな王様とか本当に無いわー。
個人的な恨みも込めて無いわー。
それに…義兄って王子様ってガラじゃないと思う。
だって悪役令嬢だし。
義兄が王子様…うわ、想像つかない、似合わねえわ。
まあ見た目だけなら…黙って微笑んでいたら…そんな顔見た事ないけど…想像で補うと…。
この耽美な美貌に王子服…ショーン王子様の服装なら似合うかもしれないな…。
それに今現在。王座に空きは無いのが世間の常識。
子供の頃から常識。変化のない常識!クーデターなどとんでもない!
いくら引き籠りぎみモブだからって迂闊な発言しないよ!!
いつでも気を付けてるよ!!
大体、義兄がなれるのって王子じゃなくて女王だからな。
政変を起こしたとしても、義兄が王子様になるシナリオはない。
バッドエンド含め、無い。そんな未来は存じ上げない。
話題を変えることにしよう。
「そう言えば義兄さま、義父さまから聞きました?」
「なあに?」
「私の嫁入り先が決まりそうだと」
「そんなの無くなったよ」
「いや無いじゃなくて、決まりそうだと…」
何を無邪気にきょとんとしてるんだろう。
…シスコンは知ってたけど…。
この人、義妹の嫁ぎ先迄口を出してくるつもりか。
…このべったり加減だと間違いないかもしれない。
しまった、そこ考えてなかったわ!!
「ルッコ家でしょ、先日潰れたよー」
「潰れたよって…」
そんな簡単に貴族の家が潰れていいのか。
何したんだ。悪事か?
「父親が前の戦争で装備と糧食を横領したってー。」
「おお…」
「あとねー、次男が違法賭博で牢屋に行ったよ。
だから爵位剥奪だってー。可哀想だねえ」
「…中々にそれはそれは」
流石、ゲーム知識しかない引きこもりの私より、義兄は世情に詳しい。
伊達に学業と王宮で王妃教育の兼業してないわ。
生きた知識が私には足りていないぜ…。
しかし…それより私の婚約だよ。
そこまで行ってはどうしようもないな、結構な普通の悪事じゃないか。
そんな変な家に嫁がんで良かったけど。
引き籠りには展開が早すぎて何が何だか…。
「アローディエンヌは会ったの?」
「遠目には。この間の夜会で、違う女性を連れていらしたんですけど」
そうそう、本当に珍しく、義両親が連れて行ってくれた夜会が有ってだな。
ついこの間の話ですわ。
その婚約者とやらをあの人にするかって言われたくらいだ。
それだけ。後は義両親は何か色んな人とのお喋りに夢中で、
気が付いたら放置されてお菓子を貪り…って凄くデジャヴだな。
義兄…いや夜会に出てたなら義姉か?見て無かったな。
とりあえずあの人あの時何してたんだったかな。
いつもしつこくいる割に、あの時は居なかった…まあいいか。
そうそう、婚約者だけどね。
まあ夜会なんだしパートナー位連れて参加するわな、普通。
説明されなかったし、あの人達の関係知らないけど。
そして…何と、ビックリすることに、顔合わせどころか挨拶すらしなかった…させてもらえなかったよ。
それなのにもう義両親的には私の嫁ぎ先と決めてたみたい。
相変わらず、私の事に関してもやる気が無いにも程がある。
ポシャッたとはいえ、貴族の婚姻怖いわー。
「そっかあ、浮気はダメだよね」
「いや、お話はその後でしたし」
「そっかそっかあ。でもしょうがないよね」
「まあそれもそうですけど」
おい、人の不幸に嬉しそうだな面を貸せ…と思ったけど変な藪蛇になっても困る。
義兄がシスコンを拗らせているのは我が身を以って知っているので、取り合えず話を打ち切ろう。そうしよう。
「アローディエンヌは僕の事好き?」
「はあ、まあまあ」
「まあまあかー」
何か前も聞かれたな、これ…。
しかも前もそう答えた気がするわ。
そんな私の素気無い返事にそれでも笑う義兄は…
これはいかん、本当に拗らせたシスコンの顔だ…。
義姉の引き取り手だが…最初は王子にと思っていたが、この分では望み薄だなー。
明らかに王子を嫌っている。そして目一杯馬鹿にしている…。
一体私の知らない範囲内、つまりゲーム知識外に何が有ったのさ。
あんなに嫌っていては…いずれ攻略ガイドの二つ名の通り、
物理的に燃やして落としかねないわ。
実際義姉が学園でどう呼ばれてるのか知らないけどさ。
意外とあんな厨二な名前呼ばれていないかもしれないし。
ああ、ロージア込みでこの頃予想がつかない展開だらけだわ。
いやいや、そんな事より予想外に義兄のシスコンが激しいな…。
これは義兄としてロージアでもいいから引き取り手を探さないと…。
私が嫁に行けやしないな。
ロージアにバッドエンドを推奨するわけでは無いけれど…。
相変わらず家では…
この通りコンビニくらいの気安さで義兄の機嫌取りに使われているし…。
そりゃここは衣食住は足りてるし悪くないけど、
別に優遇されている訳でもない。
学校も通えないし、習い事も最低限…。
そう、私は実質飼い殺されているに等しいのよね。
そりゃ暇つぶしに話し相手が欲しいわな。
ロージアを家に簡単に上げるわけだわ。
義兄は嫌いではないけれど、
義理の両親は好きにはなれないし…つか嫌いだし。
早くゲーム終わって平穏に暮らしたいっていう願いがこの頃膨らむわー。
思ってたよりロージアのサポートキャラが楽しくないしー…。
…サポートキャラの私は、エンディング後どうしたのだろうね。
モノローグでいいから思い出しとけや、ロージアめ。
薄情だわ。助言を受け入れられないサポートキャラの身になってみろ。
だが、私は本当に気にするべき人物を見誤っていた。
今回の所悪役令嬢の悪事は義妹を暑がらせていることですね。