番外編そのろくの8 企みを阻む盾
お読みいただき有難う御座います。
拉致された先でキンキラ眩しい彼と再会しました。
「土人形、よくやったぞ褒めて遣わす!」
うわああああ聞いたことある単語じゃねえかああああ!!!
ちょっと目を離したらドサッて言ったぞドサッて!!
振り返ってみたら…あああやっぱり居ねええええええ!!
あああああ何だこの不自然な土の塊いいいいい!!!
「ど、ど…ど、どちらさま…でしょう?(まさかお前エエエエエ)」
「うん?何か喋り方がおかしいぞ?」
どっかで見たことある色合いの男はこてん、と首を傾げた。
…派手つか、嫌味なくらいキラキラしたツラだな。
「そうか!隷属の徴が効いてるんだな!忌々しいな!」
「…は、はあ」
「そのフードは対策か?いまいち似合わないな!」
「……然様でございますか(煩ええええええ!!)」
「何か気持ち悪いな…筆談しよう筆談を」
「はっ…ですが(お前なあ)」
家限定で身内限定だって聞いたぞボケ!!
んなことして俺の首飛ばねえのかよ…!?
お前と違って俺は物理的に繊細な立場なんだぞ分かってんのか。
「大丈夫だ!僕の正体は分かってるんだろ?」
まあこんな派手な知り合いは一人しかいねーよ。
幾ら背がデカくなろーが声が低くなろーが…。
と言うかムカつくから老けて劣化しろよ。
何で更にキンキラさ増してんだ。
「……ショーン王子様で在らせられますことは(わーってるよ、ルディだろ)」
親父にドヤ顔でばらされたからな。
て言うかやっぱ俺がルディをオウジサマ呼びすることになんだなボケ。
「そうか!呼び方はルディでいいからな!」
いやお前に言われた位で変わんのかよ?
「承知致しましたルディ様(うわ変わったぞキモッ!!)」
「隷属の徴は王族の命令を聞けるらしいぞ。
裏をかいてどんどん利用していこう!」
「利用…ですか(アァン?どういう意味だ)」
「だからちょっと便宜上でいいから膝を付いてくれ」
「ええと(嫌だよボケ)」
「頼む、悪いようにはならないから」
何で俺がお前に膝付かなきゃなんねーんだボケ!!
くそっ、こいつ俺よりちょっと背が高えな!!ムカつく!!
しつこくぐいぐい肩を押されてうぜえから仕方なく俺は膝を付くことにした。
思い通りになってやんのはムカつくけどな。
「ええと…これでこうだったかな」
何かブツブツルディが机の上に置かれた埃だらけの本を読んでいる。
埃くらい拭けよ。
「ルディ様…あの(何時までこんなカッコさせる気だクソボケ)」
俺がイライラしていると周りの土が若干盛り上がってきた。
「!?」
俺とルディを中心に、芝生を割って土がボコボコ盛り上がって、円を描く。
何だこれ気持ち悪ぃ。モグラか?
暫く観てたら…これ、自然の生き物じゃねー盛り上がり方してんな。
まさか…まさかまた土人形…!?
「大丈夫だレルミッド、気を楽にして魔法陣から動くな」
あー……これ、魔法陣か……?
何だ、ややこしいなボケ。
丸に四角に…何か色々細けー文字が土が盛り上がったので書かれてる…。
…結構面倒臭えんだな。
「……長くありませんか?(長すぎだろ)」
飽きて来たぜ。
膝付いてるってのも楽じゃねーんだ、足疲れたし。
「えーと…あっ!出来た!よしレルミッド・ルカリウム。
そちにはショーン・ジェラルディン・ドゥッカーノの前及び二人きりでは
本来の喋り方と対応を赦す!!」
ん?
おお、何かビカッって光ったぞ?
「んがあああっ!?」
ルディが偉そうに俺に何か言った途端、バチって言った!
首の後ろが!!
何すんだクソボケ!!!
「痛えええええっ!!」
「あっ成功した!」
「成功したあ!?お前人の事実験台にしたのかよクソボケ!!」
何無邪気に喜んでんだクソボケ!!!
「良かった、元々のガラの悪い喋り方だな!」
…ん!?
今俺喋れたのか!?
ルディに!!
「やったぞレルミッド!」
「アァン!?」
「小さい事なら隷属の徴を操ることが出来るようになったんだ!
これで普通に喋れるし接することも出来るからな!」
ルディは俺の手を取って立たせて、膝に付いた芝生を払ってくれる。
「おお、…意外と気が利く男になってんじゃねーか」
「まあ普通に友達だからな、頼んだのはこっちだし手は貸すぞ」
俺をさっきまで座ってた椅子に座らせて、ルディはボコボコの魔法陣に手を翳してた。
何してんだ?と聞く前に芝生と土が混ざりあって平らになっていく。
…芝生が剥げてっから何かやったか一目瞭然だな…。
俺の属性風だし直しようにも直せねえけど。
木属性いりゃあいいんだけどな。
一定以上の魔力保持者なら芝生位なら元に戻すことも可能らしいし。
中々居ねーらしいけどな。
まあ王城だし、凄え実力の庭師くらい居んだろ。
取り合えず俺はルディに勧められて、やたら凝った椅子に座らされた。
何で外に置いてる椅子に高そうなクッション置いてんだろうな。
雨が降ったらどーすんだ。
こんなもんダメになるんじゃねえのか?
「レルミッド」
「あん?」
呼ばれたからやたら派手なクッションからルディの顔を見ると、
ルディの茶色の目には涙が溜まっていた。
…泣いてんのか?
「今の所これ位しかできなくてすまない」
「ルディ、お前…」
「おばばさまのことも、大口を叩いたのに何も出来なくてすまない」
綺麗なツラを歪ませて、綺麗な目からポロポロと涙が零れている。
……そっか、ずっと気にはしててくれたんだな。
真っ黒だけど手紙は結構マメに来たから、忘れてたわ。
ばあちゃんのことをずっと想ってくれてたんだな。
涙をこぼし続けるルディに、どう表情を作ったらいいか分かんなくて、ルディに向けたのは引き攣った顔だったとは思う。
「しょーがねえよ」
「だがっ、僕の一族の…せいで…」
「直接的にはお前のせいじゃねえし、ばあちゃんもトシだからしょーがねえ」
「……それでも、僕はレルミッドに謝りたかった…。
手紙には書いたけど、多分塗り潰されてただろう」
知ってたのか。
まあ、辻褄合わねー手紙が来たら察するか。
コイツボケてるけど馬鹿じゃねーし。
「あー…」
「やはりそうか…。僕宛の手紙も真っ黒だった。忌々しいことですまない」
「いやまあ…寧ろよく送れたし、着いたよなって感じだし」
俺とルディは友達に送る感覚だったが、普通に考えたら其処らの庶民と王子が手紙のやり取りとかフツーに無理だわな。
王族に手紙が届くって時点で世情が世情ならねーし…。
渡されてただけマシなのかもな。
「もっと僕が実権を握れればいいんだが…父上も母上も中々手強くてな…」
「…そーなのか」
「ついこの間物理でひっくり返そうとしたら、来年学園へ通わせられることになってしまった」
「……は?」
「もうちょっとだったんだ…」
ショボンとされても困んだけど!!
お前が女だったら慰めてやったかもしんねーけど!!
それにしても何ちゅうこと聞かすんだ相変わらず!!
お前の父ちゃん母ちゃんって国王夫妻だろうがあああああ!!
「何でお前はそう聞いちゃなんねー事ばっかり俺に言うんだよおおおお!!」
「だってレルミッドは僕の友達だからな」
「俺の安全んんん!!」
「大丈夫だ、学園内と王都で僕の知り合いの暗殺を禁じている」
「出たら殺られるってことじゃねえかあああああ!!」
「出たら自分で守れるだろ?」
「首を傾げるなあああああボケエエエエ!!!
前から思ってたけどヤローのんな姿可愛くねーんだよ!!」
「失礼だな、今は兎も角、大体の大人も子供もアレキ以外は騙せたんだぞ!」
堂々と言う事かよ。
コイツ…ホント昔から地味に腹黒いな。
俺の知り合いの中でも上位かもしんねーわ。
まあ俺の殆ど知り合いは親戚だから比較になんねーけどよ。
「それで、ちょっと確認して欲しいんだが」
「はあん?」
「僕の襟元から首の後ろに何が有るか見てくれ」
ルディはボタンを胸元迄外して俺の近くに寄ってきた。
…は?
何で服緩めてんだ。
……そう言う趣味からっきしねーよボケ!!
「は?お前何をボケてんだボケ!!」
「実はな、この間逆らった際に何か徴を捺されたっぽいんだ」
徴!?
「徴って、アレか。
俺の首の後ろに付いてる…隷属の徴かよ!?…誰が!?」
「隷属かどうかは種類は不明だが、親が僕に徴を捺したんだ」
「……ハアアアアア!?何で!?
親が子供に訳分かんねえ徴を捺すう!?
ルディの親って何なんだよ!!」
ルディは首の後ろを擦って首を捻った。
「何を考えてるかも何も考えて無いかも知らん!」
「…いや、本当に知らねーの?」
「知らんな」
んなキッパリと…。
どんだけ親子関係破綻してんだよ。
いやまあ、無断で子供に何か分からねえ徴捺してくる辺り、碌な親じゃねーけどよ。
「お前、御付きの人間とかに観てもらったりは…」
「この王城で生きてる人間は、親の息が掛かってて敵だらけだからな。
何かあっても起きても僕に本当の事は言わんのだ。小さい頃から見て見ぬフリだ」
「……生きてる人間って言うな…」
「其処らに死霊は居るが、喋りと記憶は段々劣化していくからな…。
この頃死にたての死霊も居ないし
王家に恨みを抱いている奴ばかりだから適当な事言う奴も多いし…」
「オバケのそんな事情聞きたくねええええええ!!」
ルディの事情は大変だし、力になってやりてえかなとは思うけど、やたらにオバケを絡ませてくんな!!
何で王都でもオバケの話を聞かなきゃなんねえんだ!!
全然やる気が出て来ねえわ!!
「だからお前しかいないんだ、頼れる友達が」
「お前…お前えええええ!!俺を怖がらせた上に何頼れる友達とか言ってんだボケ!!」
「いいじゃないか友達なんだから」
コイツ…本当に変わってねえな。
地味に偉そうさが増した気ィすらすんぜ。
結局俺は座ったルディのゆるめた襟元から首を覗き込まされた。
男の服をめくらされてだ。
……スゲー嫌だ。
誰もいねーんだろうな…!?
王子の服めくってるとかあああああ!!!
見られてたら俺、物理的に人生終わるぞ!!
「何で男の襟元なんか覗き込まされてんだ俺…」
「うむ、僕も男には御免だ。レルミッドだから許すんだぞ」
「そこの熱そうな茶のポットにそのツラ突っ込むぞ」
あー凄え気ィ萎える!!!!
すんげーイヤイヤ確認したら、確かにルディの首の後ろには何か有る。
やたら派手な盾。…コレ、欠けてんのか?ヒビ入ってんぞ。
盾の意匠は王冠に何か石付いた棒?みたいな柄が付いていた。
……この王冠、どっかで見たような…。
あ、俺のフードに鳥の模様と一緒に付いてる奴じゃねえか。
「どんなのだ?」
「あー、欠けた盾の形してんな。
中の柄は俺のフードに付いてる王冠と、石と鎖付いた棒だ」
「……分かった、ちょっとこの辺の本で調べてみよう」
ルディはさっきの本じゃねえ奴を芝生から机に載せた。
ボロイな。ちゃんと管理されてねー感じだ。
「て言うか地面に本積むなよ。汚れんだろ。」
「徴呪章院から持ち出してきたから平気だ。
基本捨て置かれた部署だから、滅多に人は立ち入らんのだ」
「キシュショーイン?」
「徴とか呪いとかの意味と効力なんかを関係を研究・保管する部署だな。
本来は神殿があった頃はもっとちゃんとしてたらしいが、父上がいい加減に放置している。
まあそれはいい。
僕の首の後ろの徴と同じやつを探してくれ」
そんで俺らは埃にまみれた本を庭でひっくり返す羽目になった。
…本ってこんなに埃集ってんだな。
手がマジで黒いぜ。
「『畏怖の王』……こんな色じゃねえな。こっちの『欠けた盾の庇護』か?」
「…そうだな、『欠けた盾の庇護』だ…。…うわあ」
……名前も微妙だな。
ルディは解説を読んで眉を寄せて嫌そうな顔だった。
俺も本を覗き込んだ。
『欠けた盾の庇護』
命を守る盾の徴。生命力は強くなる。
ただ、欠けているので本来の体質よりも状態異常に掛かりやすい。
ただその状態異常に掛かった効果で死ぬことはない。
「は?…本来よりも状態異常に掛かりやすい…!?」
本に載ってた内容は…、弱体化の徴じゃねえか…!!
反射的に目をやったらルディは顔を歪ませてる。
そりゃそうだよな。
弱体化だぜ?
実の両親がするようなことじゃねえよ。
「そうか…地味に嫌な徴を付けて来たなあ」
「お前…本当に親にこんなモン付けられたのかよ!?」
「そうだぞ。言ったじゃないか、僕の親は僕が嫌いなんだ」
「そんな事を何ともねーように言うなよ…。」
「仕方がない。僕も両親が好きじゃないからな」
何とも無いように言ってるけど、だから何かそれがなあ…。
異常だろと言うのは簡単だけど、軽く言えることじゃねえ。
根が深いんだろーな。
俺には分からない深い深い暗い過去が、ルディの中に有るんだーな。
何されたのかは所詮俺如きには分からねえけど、親が子にやるもんじゃねえだろ。
王族ってマジでヒデエな…。
「あーあ、今なら物理でどうにか出来そうなのになあ…。
レルミッドは此処では戦えないよな…。
僕と組めば絶対両親を完膚なきまでに伸せるのに」
「ハァ!?」
俺がルディの過去に有ったんだろーなって事に、心を痛めてやってんのに…あっけらかんととんでもない事を言い出しやがった。
「オイ!!勝手に人を恐ろしい親子喧嘩に巻き込むなボケ!!」
「親子喧嘩なら慣れてるじゃないかレルミッド。
よくお前の父親に吹っ飛ばされてたの見たぞ。
あの短期間に、全力でぶつかっていく喧嘩が何度も出来て羨ましかったぞ」
羨ましいじゃねえええええ!!
クソ面白くねーことを覚えてんなクソボケ!!
「自分の親ならな!!人の親子喧嘩に入ったことねーよ!!!
後何気にお前の親、オウサマだろーが!!」
「王妃もいるぞ?」
「余計駄目だろーがあああああ!!」
何で一般草原庶民の俺に、王位簒奪打ち明けてんだボケエエエエ!!
しかも俺がこんなとこでルディを怒鳴らなきゃなんねーんだ!!
「それにしても僕の両親は物凄くウザい事をして来たなあ。何を考えているんだ。
これでは下手するとアレキに負けてしまう…」
「お前、未だイトコと仲悪ぃのかよ…」
「アイツは偉そうだからな!」
って言うお前も偉そうだっつーの。
って王子様だからいいのか!?
うぜえ身分だな!!
次からゲーム内の話になりそうです。
顔は可愛い『主人公』が登場予定ですね。




