番外編そのろくの1 頑丈な少年との出会い
お読みいただき有難う御座います。
チラ見えしていた『魔法使い』と『とある少年』の過去話です。
俺の名前はレルミッド。この間9歳になった。
田舎の草原でばあちゃんと母ちゃんと鳥とか馬とか牛とか住んでる。
親父は王都に出稼ぎらしい。
たまにげっそりして他の親戚のオッサン共と帰って来る。んで土産のセンスが悪い。
で、俺の側には…常に鳥がいる。
そいつらはバサバサモサモサして冬はいいけど夏は鬱陶しい。
何でもこの鳥は俺の一族が生まれたら、勝手にやって来て卵を近くに産んで人間に育てさせるんだってよ。
何だそれマジうぜえ。他の鳥はそんなことしねえぞ、ちゃんと育てろよ鳥畜生。
因みに母ちゃんは草原の外から来たから鳥は居ねえ。羨ましい。
俺が生まれたときには卵を産んで置いて去ってったらしい。3個も。
普通は1個らしい。何でだよ畜生がふざけんな。
俺が小さい頃は死んだじいちゃんと、ばあちゃんが世話してくれたけど、
この頃俺が世話させられてんだぞ、信じらんねーよ。
鳥なんて欲しいとか全く思わねーよ。
どうせ後ついて回られるなら猫が良かった。猫飼いたい。
鳥が居るから駄目だってよ。鳥どっか行け。
そういやばあちゃんの鳥は藁の中で寝てることが多い。
俺の鳥共もあれくらいおとなしくなんねえだろうか。
たまに頭とか肩とかに停まられるとマジ重いし鼻の近くでバサバサされたくねえ。
クシャミ止まらねえ。
クシャミしたらどっか行きやがるけど止まったら戻ってきやがる。
うぜえ。
んで、餌を貰ってのうのうと育った3羽が今日もバサバサ周りを飛んでいる。
水汲み作業の邪魔だ。失せろ。邪魔でしゃーねーよ。
今日は親父が帰ってきた。珍しい、久々に馬車を見た。
うちは結構辺境だから駅馬車の停留所まで馬で行かなきゃならない。
だから結構面倒臭え。
誰かと行かなきゃ乗ってきた馬が家に帰れねえしな。
馬に野生化されたら大損だ。
馬は高いんだよだから大事にしなって母ちゃんがいつも言ってる。
馬車から降りた親父は何かキンキラしたガキを連れていた。
歳は俺とそんなに変わらねえが…着てるもんが地味に上等だな。
生地もだが、ほつれも染みも無い。俺とは違う。
それにしてもあんな丁寧な親父を初めて見たな。
何モンだアイツ?
「親父ー、誰そいつ」
「仕事先の子供だ。訳有って預かってきた」
どう見てもそいつ此処で生活出来そうにねー見かけだけど、何で連れてきた。
弱そうだな。
ジロジロ見てたらそのキンキラが俺に寄ってきた。挙げ句指差しやがった。
「鳥だ!」
「ああん?」
鳥がどうしたよ。
俺の肩と頭に止まるこのウゼー重いもんがそんなに珍しいか?
都会じゃ鳥もいねーのか?終わってんな。
「けっこうでかい!赤い!白い!お前、これの飼い主か?」
「知らねえよ勝手に着いてくんだよ」
「凄いな、お前家来にしてやってもいいぞ」
はあん?家来って何だよ。
何で俺がこんな弱っちそうなのの家来にならなきゃなんねーんだ。
自慢じゃねーが、同じくらいの近所のガキの中じゃ一番強えんだけど、俺。
「…親父、こいつマジうぜえからぶっ飛ばして削ってやっていい?」
俺は一応横の親父を見上げた。
親父の了解を取らないと後で拳骨を喰らうのは勘弁だからな。
そしたら何故か親父は吃驚した表情で俺とキンキラを見てきた。
何か変なこと言ったかよ?
いつも喧嘩売られたら負けんなってクダ巻いてるじゃねーか。
お陰さまで全戦全勝してんぜ。この辺のガキの中じゃ俺がいちばんだ。
「出来るもんならやってみろよ」
じゃあ遠慮なく。
親父の了解をもらってすぐ俺は遠慮なく風の魔力の塊を…アイツの胴体くらいの大きさを測り、キンキラしたガキに予備動作無しでぶっ飛ばした。
目論み通り、螺旋状の風の塊がアイツの胴体へぶち当たっていく。
「うわあああ!?」
あ、親父の仕事先のガキなんだよな。
…やべえ、軽そうだな。死なないようにしなきゃな。
軌道をちゃんと修正して、ご親切に干し草を固めた中に落としてやった。
あ、もがいてやがる。ちょいスカッとした。
「バカ野郎!!」
親父にやりすぎだとぶん殴られた。
許可したの親父じゃねえか、マジひでえ。
で、だ。
俺がぶっ飛ばしてその鼻っ柱削ってやろうとしたキンキラは
ピンピンして干し草からスゲー勢いでピョンと飛び起き上がった。
え…こいつ頑丈だな。
たまに会う近所の奴らより頑丈だ。普通の奴なら泣き喚くんだけどな。
打ち身も擦り傷ひとつもしてねーな。
見た目メッチャヒョロい都会のガキって感じだけどな。人は見かけによらねー。
「お前、強いな…アレキ並みじゃないか?」
「誰だよそれ」
「イトコだ」
「知らねーよ」
初対面の奴のイトコの名前なんざ知るかよ。
何言ってんだコイツ。
「今知っただろ!」
「お前の名前も知らねーよ」
「僕の名前は…し」
「ごほん、ジェラルディン様だ」
親父がキンキラの話に被せてきやがった。
何だよ過保護だな。名前くらい自分で名乗らせろよ。
寧ろ息子の俺に気を使えよ。どーせこいつの面倒見させる気だろうが。
「長えよ」
「本当はもっと長いんだぞ」
名前長えとか、貴族かなんかみてーだな。ああ、貴族なのかもな…。
親父の仕事先って何処なのか聞いた気もするけど覚えてねーし。
「知らねーよ覚えらんねえ。ルディでいいな」
適当に聞こえた部分だけを略してやったらそいつは首を傾げた。
「お前偉そうだな…大体お前も名乗ってないぞ」
「レルミッドだよ、親父から聞いてねーの?」
「聞いたけど名乗られたら名乗り返せ、それが礼儀だろ」
「へーへー」
礼儀とかマジうぜえ。
こいつやっぱり貴族だな。
「レルミッド」
「あー?」
「お前、何ともないのか」
「何が?」
親父の拳骨ならマジ痛かったけど、たまに親戚のオッサン共からも喰らってるしな。
俺はそんなもん引き擦らねえ男だ。
「……マジか」
「どうした、鳥籠の」
「いえ、何でも御座いません」
どーでもいいけど親父のテイネイ語?気持ちワリイな。
言ったらまた拳骨喰らうから言わねーけど。
で、ルディは俺んちに住むことになったらしい。
母ちゃんが飯作ってばあちゃんが寝床俺の隣に用意してる間… 何見てもギャアギャア言ってやがった。
因みにやっぱり俺は親父に面倒見係にされた。
うぜえ。
「凄いな、見渡す限り草原だ!」
「井戸だ!」
「家畜だ!」
「人が少ない!寧ろ居ない!」
……マジ煩え。
首根っこ掴んで風魔法で浮かせて布団に叩き込んでやったが煩え。
「便利だな風魔法!もっかいやれレルミッド!!」
しまった余計煩え。
「いいから早く寝ろよ。明日はお前も仕事すんだぞ」
「仕事とは何だ」
スゲーなコイツ。何堂々と聞いてんだ。
どんだけ坊っちゃんだよ。
あ、貴族か。
「水汲んだり家畜の世話すんだよ」
「そうか!楽しみだやったことない!」
何でイチイチ偉そうなんだよコイツ。
やったことねーんなら殊勝にしろよ。
「坊っちゃんには重労働だぞ」
「重いものは土に運ばせるから大丈夫だ」
「…はぁん?」
何だよ土に運ばせるって。
大体重労働ってのは重いもん運ぶだけじゃねっての。
「此処なら僕も伸び伸び過ごせそうだ」
俺は狭いし窮屈だ。
折角古いテントを貰えたから念願の一人部屋だったのに。
俺だって家族と常に一緒に居たくねーお年頃なんだよ。
なのに何で居候が増えてんだ、マジ意味分からん。
「お前なら強いし遠慮なく暴れられそうだ、楽しみだ」
「はぁん?」
何言ってやがんだコイツ。
暴れるってどー言うことだ?
「実は、し…家を少しばかり壊してな」
「いや聞いてねーけど」
「アレキが悪いんだ、妹を連れてこいって言っただけなのに」
「いや、知らねーよイトコのことなんて」
「あまりに妹がカワイイカワイイ煩いんだ。だから気になって連れてこいって言ったら…」
「何だよ」
「いきなり怒り出して燃やされて首を裂かれそうになった」
「……は?」
……何だと?
燃やされ…?
裂か…れ!?
ハアアアンン!?
「僕でなければ消し炭にされた後水に流されていた」
「…消し炭?水?」
え、何だ?
どう言うことだよ。
どこを突っ込んだらいいんだこれ!?
「アレキは多重属性を持っているんだぞ」
「知らねーよ!!え、何で俺、お前の危ねーイトコ情報聞かされてんの!?」
「秘密だぞ」
何を小首傾げてんだこのガキャア!!
て言うか何かとんでもねーこと聞いた気がすんぞ!?
いや、俺貴族とか知らねーけど!!
「バラす機会一生ねーんだけど!」
「お陰で部屋が12個ほど爆発した」
「爆発!?て言うか部屋数多くね!?」
「火と水とを強く掛け合わせたら爆発するんだ、知らないのか」
「初めて知ったよ!!マジ要らねえわその知識!!」
「お前の才能は凄いと思うぞ。何せこの僕をぶっ飛ばせたんだからな」
「いや、お前…て言うかそんな爆発させられて何で生きてんだよ!?」
て言うかコイツのイトコってナニモン?バケモン?
て言うかそんなことされて生きてるコイツもバケモン?
実は幽霊とかじゃねーだろうな!?
さりげなくルディを肘で小突いたらちゃんと感触が有った。
……死ぬほど良かった。俺は未確認生物は信じないが良かった。
決してオバケなんか怖くないが良かった。
「知らん。僕もちゃんと攻撃はした。
部屋は惜しくも10個しか砕けなかったが…」
「…部屋は砕くもんじゃねーよ」
何言ってんのコイツ。
頭マジやべえ。
「まあそれでちょっと親に怒られてな」
「ちょっとで済むのかよ!?」
スゲーなコイツんちの親。
て言うか部屋数どうなってんだコイツんち。
俺んちなんか親父と母ちゃんのテント、ばあちゃんのテント、
それから古くなったのを親戚からついこの間貰えた俺のテント。
合計3部屋しかねーんだけど。
貴族ってそんなに部屋壊されても生活って出来んのか!?
どんだけ家広いんだよスゲーな!?
「物は大事にしろや…」
「うむ、確かに此処は物が尋常でなく少ないな、そうしよう」
ムカつくなコイツ。
そりゃ今聞かされたお前んちに比べたら、尋常でなく物はねーよ。
「明日は楽しみだ、宜しくな、レルミッド」
「……おお」
急に殊勝にされてもな…。
て言うかイトコと二人で家壊しまくってきた話が気になりすぎんだけど。
…まさか、それで此処に島流し…いや草原流し?にさせられたのか?
マジかよ…。貴族なのにこんな草原で暮らせる訳ねーじゃん。
手とかメッチャ細いし白いぞ。
コイツの親酷くねえ?
「おいルディ…」
「すう…ふう…」
…寝てるしよ。
どー見ても貴族が寝れそうな寝床じゃねーんだけど。
図太くねーか、コイツ。
俺の方が繊細な気がしてきたわ。
この作品きってのマトモ枠その2、鳥に付きまとわれてうんざりする猫派の少年レルミッド。
そして新キャラ(笑)のルディくんです。
ルディくんは『アレキちゃんのイトコ』ですので、普通では無いですよ。




