番外編そのにの7 降りかかる祝いと騒乱
恋愛経験の無い崖っぷち令嬢、
じわじわ自覚する…って感じでしょうか。
だが切っ掛けはお金です。
番外編はホラーな感じでなんと7まで来ましたが、
ジャンルは恋愛です。
あの後、バルトロイズ家でサジュの御養父さまとご飯をご一緒させていただいてから
数日が経った。
いや、物凄く良い人だったわ。
紫の髪でサジュよりデカかったから、ガブット熊(見たこと無いから想像の中の)みたいだったけど。
サジュより私の方が子供っぽいな、なんて大笑いされたわ。
何でよ。髪の色繋がりなの?
そう言えば目の色も似てるわね。私の目の色と同じ青紫。
バルトロイズ様も風属性だから?凄い偶然だわ。
血縁関係は遡るのが難しいくらい遠い筈だけど。
でも本当に良かったわ、養い子であるサジュを大事にしてくれてるって分かって。
サジュはとてもいい家に貰われて行ったのね…。
奥様がいらっしゃらないせいで…家に女っ気が全く無いのが若干気になるけど。
他国の軍属のお偉いさんの養子なんて、超ろくでもない、絶対苛められるに違いないわ!なんて密かに思っててごめんなさい、バルトロイズ様…。
五年前、弟と離されて泣き喚いた私の心配が、杞憂に終わって本当に良かった。
ああ、幸せにね…サジュ。
……まあ、このままでは御家断絶させないための計画が破綻しそうだし、まだ居る予定だけど。
あ、そうそう。昨日18歳になったんだっけ。
おめでとう私!!
有難う私!!
毎年家族から温かい言葉を貰っているけれど、今年は何もない。
たまに余裕が有るときは激安じゃない生活用品を貰うわね。
今年は勿論お金が更に無いので手紙は来ない筈。
まあ、正直…ちょっと虚しいわね。
まあいいや。お金かかるし。
あ、サジュが何かくれるらしいわね。
この間そんな事言ってたし…。
物を貰えなくても、祝ってもらえるだけでとっても嬉しいな。
会えるかしら。
いや、そうじゃない。
私が歳食った事はどうでもいい。
いや良くないわよ。
婚期が益々遠ざかり、御家断絶が超高速で近づいて来ている……。
…そう、婚期よ。
私は困っていた。
サジュが変な事を言ったせいで、
ご主人さまと円滑な会話が出来なくなってしまったのだった。
背後から見るご主人さまは私よりちょっと背が低い。
でも背筋はぴんと伸びている。
神官っぽいと言えば…よく分からない。
ウチの国も神殿は有るけど、
国での年始の拝礼(強制かつ無料)しか行ったこと無いから比較の仕様が無いし…。
同世代の神官…知らないなあ。
確か高位神官の一族に居たかもしれないけど、お目にかかった事が無いし。
えーと、ご主人さまは15歳だっけ?私の3つ下…。
後ろ姿は普通の男の子よね。
前から見ると若干目つきは悪いし、冷静沈着。
私よりモヤシ…いえ、頭脳派。
…後ろ姿は普通だわ。
……。
確かにいい物件よね。
年下だけど、しっかりしてるし。
何よりお金の管理具合と処理能力が素晴らしい。
…私は普通の令嬢であって色仕掛けとか絶対無理だから、
後頭部を凝視する位から始めてみようかな。
うん、砂色のつむじが見えるな…。
そしてまた数日。
私はご主人さまに影のように付き従っていた。
…影のようにもなるわよ。気配も消すわよ。
何かひたすら恥ずかしくなってきたのよ。何でかしらね。
後頭部を見るのも若干恥ずかしいんだけど…何これ。
そしてまた数日…。
……いや、何かご主人さまが見れない。
下を向いてひたすら若干距離を開けて歩く。
だって、だって!!
どうしていいか分からなくなってしまったんだもの!!
ヒイイ!!私どうやってご主人さまと会話をしていたの!?
お金!?お金の話!?
今更出来ないわよ!!お金目当てで近づく女じゃないの!!
……いや、全く間違ってないんだけど。
それは何か、凄く嫌!!!
「……」
「ドリー」
「……」
「ドリー!?」
「ひゃいっ!?」
「何でそんなに離れてるんだよ」
私とご主人さまの距離は…家一軒分くらい空いていた。
と言うか、自主的に私が空けた。
何でかって!?
そんなもん、サジュの提案のせいで
挙動不審になって
心臓がバクバクして
どうご主人さまを見ていいか分からないから
不審に感じられない距離を図ってるに決まってるでしょ!?
何か、何故か、意識してしまうのよおおおおお!!
「いいいいいいえ、適切な距離ですわ!!」
「この間までは、背後霊みたいに直ぐ後ろに居て怖かったのに」
……おい、誰が背後霊だ。
年頃の普通の令嬢に酷くないか、ご主人さま。
「何なんだよ突然。君の距離感おかしいだろ」
「そそそそそそそんな事は有りませんわ」
「…この間も夜遅くまでウロウロしてたみたいだし、何が有ったんだよ…」
「にゃんでもありませんわ」
「また訛ってるし」
「訛ってましぇん」
「…噛んでるんだな、分かったから」
ううう、もうやだああ。
意識するから近寄らないでほしいいいい…。
確かに良く見たら、砂色のちょっと痛んで毛先が金色っぽくなってる髪も、薄い黄色の目も何か神々しく見えてきそう…。
あれだけ銭ゲバなのに…。
ああああああサジュの馬鹿アアアア!!
滅茶苦茶意識しちゃうじゃああああんん!!!
日を追う毎に激しくなっていく!!
何でええええ!
私そんなに単純じゃなーいいいいい!!
惚れっぽいとかないいいいい!!
「ドリー」
「ほいぃ!?」
「ほいって何だよ、その返事。具合が悪いのか?」
「悪く御座いませんご主人さま」
「挙動不審だ…」
「ちぎゃいます」
「…分かった、具合悪いなら医者に掛かってもいいから」
「大丈夫ですから」
「…ここで割引を持ち出してこないのか?」
今更出来るか、そんな提案。
ああああ近寄らないで!!顔を近付けないで!!
案外好みだと気付かれてしまうわああああ!!
私年下趣味だったの!?いや、知らないけど!!
何か、ちょうど身長差もあって鼻の辺りに髪が来るから、
何かいい匂いがするー!!
うわー近寄らないでーーー!
絶対私汗臭いか安物の臭いしかしない!!
「モブニカ伯爵令嬢ドリー嬢!!暴風雨の君よ。
私は君という大嵐になぎ倒された木だ!!
今日こそ振り向いてくれええええ!!」
「だあああああっ!!」
此処で来るのかよ!!
相変わらず喩えの意味が分からないんだけどどうかしてるわ!!
誰が暴風雨だぶっとばすぞ!?
イケイン伯爵令息!!走るな!!来るな!!突撃してくんな!!
空気を読めえええええ!!
ある意味助かったけどな!?でも酷いぞ比喩が!!
はっ、いや…。
ご主人さまが近寄ってきてるからこのままでは反応が遅れて…
このままだと激突してしまう!!
令息とご主人さまが激突してしまう!!
怪我をさせる訳には行かないわ!!
色ボケてる場合じゃないわ、ご主人さまが危ない!!
「ご主人さま危ない!!」
「え!?」
「後で叱責は受けますから!!」
私はご主人さまを力いっぱい抱きしめて、その場に転がった。
あ、肩細い!!意外と骨っぽい。可愛い!
そしていい匂いする!!
「……むがぁっ!?」
咄嗟に胸に押し付けてしまって苦しかったのかご主人さまが変な声を出した。
え、何!?私、やっぱり臭い!?
「汗臭くてごめんなさい!!」
結構頑張って洗ってるんだけど、
暑くなってくるこの時期はどうしてもどうしようもないの!!
守る為だから若干我慢して!!
後で何回も謝るから!!
令息の衝撃からご主人さまを守るべく、
私はご主人さまを地面にごろごろ突き飛ばした。
おのれ、ご主人さまに何てことするのこの害悪な令息め!!
もう許せない!!
このままか弱く寝っ転がって油断してきたところを蹴っ飛ばしてやる。
ドレスだけど、構うもんですか。
蹴っとばしてやるわ!!
生物は大体腹部か胸部が弱点なのよ!!
胸はちょっと死ぬかもしれないから腹部で!!
でも再起不可能ないい加減にまでに反撃してやるわ!!
…あれ、衝撃が来ない。
折角構えてるのに…。
私は目を開けた。
「…っと…」
「サジュ!!」
何と、サジュが令息の首根っこを掴んでぶらさげていたではないの。
凄い、凄いわ!!流石軍属ね!!
私は普通の令嬢だから、あそこまで圧倒的優位には立てないわ!
身長差も有るしね!!
おお、弟よ!!
頼りになる我が弟よ!
お前は本当に素晴らしいわ!!私の誇りよ!!
今度から弟さまって呼ぼうかしら、一回だけ!!
「何なんだ貴様!!下位の癖に私とドリー嬢の仲を裂こうと言うのか!?
悪魔の従騎士め!!」
「ウルセエ」
この野郎、誰が悪魔の従騎士だ!!
人の弟に向かってとんでもない暴言野郎ね、イケイン伯爵令息!!
こんなのと恋が叶う気が全くしないわ。
この間の私は本当にどうかしていたわ!!
こんなの相手に神頼みだなんて、ゾッとする!!
サジュを見ると、やるか?と視線で聞かれたので、
やれ、と勿論頷いたわよ。
ごっ、って音がしたわね。
軽いわね。
容赦しなくていいけど、生かしておいてよ?
まあ、順当に伸びたようだけど。
ああ、このまま記憶でも失わないかしら、本当に…。
「大丈夫か?」
「ええ、ご主人さま諸共大丈夫よ」
サジュが手を貸してくれたので、手を掴む。
おのれ…あの令息のせいで服が砂埃に塗れてしまったわ。
汗と埃で余計襤褸っちくなるじゃないの。
「で、これどうする?」
「あ、いつも棄てて…いえ、お座り頂いている木が有るの。
そこにお連れしましょう」
今の心境だと女神像にでも吊るしてやりたいけど、更なる呪いが私に追加されたら困るわ。
紐とか無いし、買うのも惜しいし。
「そんな定位置があんのか…」
「……ドリー」
そうそう、定位置に置いとかないと引き取りに来られないからね、取り巻き令嬢たちの担架が。
最早あの異様な光景に慣れてしまったわ。嫌ね。
と言うかあの取り巻きの人だかりは、何が良くてこの暴言令息に付きまとうのかしら。
将来の為のコネ作り?
あれ、ご主人さまにメッチャ見られてるわ。
そんなに巻き込み事故が怖かったのかしら。
助けた上に未遂だから勘弁してくれないかしら。
「ご主人さま、令息を運んでまいりますので、しばしお待ちを」
「……あ、そう」
良かった、見た目はご無事なようね。
起き上がってぱたぱたと埃を叩いているし。
手を差し伸べたけど、目を反らされてしまったわ…。
……冷たいな。
やっぱり危険に晒したから怒ってるのかしら。
無断で地面に転がしたからかしら。
「あの、ご主人さま」
「…行けば?食事にでも」
「え…」
「おお、じゃーな、ノロットイ」
「……はい、バルトロイズ先輩」
あれ、普通に先輩呼び出来るんじゃないの。
ずるいな、サジュだけ。
私もご主人さまに先輩って可愛く呼ばれてみたい…。
いいなあ。
学園だしね、先輩と後輩の恋愛関係って憧れるかも…いいわね…。
まあ、自分でも…年下趣味が有るとは思ってなかったけど。
「……」
ええ、現実は非情ね。
すっごい睨まれてるわあ…。
全然恋愛とか生まれそうも無いわ…。
悲しいわあ。
おお、どうしたら殿方と言うか、ご主人さまの心を掴めるのかしら。
なるべく無償で誰か教えてほしいわ。
そしてご主人さまの不興をなるべく買わないように、
そっと私は弟と、弟に吊るされた令息とその場を後にした。
…背後に冷たい視線を感じる。
凹むわ。
「ここよ、サジュ」
「おお、結構遠かったな」
「大体この辺りで絡まれることが多いんだけど…あ、来た。
取り巻きの群れだわ。
場所を変えましょう」
サジュが何時もの木の根元に令息を下ろしてくれたタイミングで、人だかりが見えた。
何時ものように令嬢たちと担架が見えるわ。
何だか軍が凱旋してるみたいね。
担架がはためいて、旗みたいに見えるわ。
さ、早くお暇しなきゃ。
「じゃあ、食堂で何か買って食うか?」
「私はお弁当有るけど、半分こしましょう」
「姉さんの弁当か…」
「悪くは無いわよ」
「良くも無いけどな」
失礼な弟ねえ。
別に料理は下手じゃないのよ。
上手くないだけで。
「この頃は豪華なのよ。お肉も入ってるんだから」
「姉さん、肉調理できたのか?」
「失礼ね、解体くらい出来るわよ」
そりゃ昔は血塗れになるの怖かったけど。
幼児だったしねえ。
子供の頃に怖かったものを
大人になって怖がらないようになるのは普通でしょうが。
「昔嫌がってたじゃないか。あ、ウシーロは元気か?」
「いつの話をしているのよ。とっくに代替わりして娘のウシーヌよ」
「…やっぱり、食ったのか?」
「……ウチにえり好みが出来ると思うの?」
「思わない。そっかー、ちょい寂しいな」
ウシーロはサジュが子供の時に出産を手伝って、名前を付けた牛だ。
思い入れも深いだろうな…。
でも、仕方がない。
仕方が無かったんだけど、何か…、こう。
あの頃の弟が一生懸命世話をしていたウシーロを思い出す。
悪いなあ、とは思うのよね。
「まあそれはそれとして、ここの豚&牛焼肉定食は旨い。
おばちゃん、3倍盛りで」
「おい、しんみりを返せ」
慰謝料として定食のおかずを分けてもらった。
うむ、美味しいわ。
味付けが複雑すぎてよく分からないけど、お肉がとても柔らかい。
ええ、命に感謝しなきゃね。
お腹いっぱいだわ。
お肉でお腹いっぱいになれるなんて何て幸せなのかしら。
「あ、これやるよ、姉さん。昨日誕生日おめでとう」
サジュがごそごそ服のポケットからヨレた包みを引っ張り出した。
変形してるわよ、そんなところに入れるから。
まあ、ヨレようと紙だから包みはちゃんと使うけど。
机を汚さないための敷物にしようかしら。
「まあ!有難う!!」
「インク壺とペンだ」
潰れた箱の中にはペン軸とペン先とインク壺が!!
やったあああああ!!超欲しかったの!!!
「欲しかったのよ!!!滅茶苦茶嬉しいわ!!
これでいつでも手紙が書けるわね!」
「オレにもくれよな」
「ええ、書いてバルトロイズ家に持って行くわ」
「いや、投函しろよ。手紙なんだから」
「渡したらタダじゃない。執事さんに預けておくわ」
「意味が分からねえ」
「運賃だって馬鹿にならないのよ。
大体あんたのウチはとっても近くなんだから」
「まあ、たった駅馬車の停留所8駅くらいだしな。」
王都の外壁の近くに騎士団本部が在るから、
近くにお屋敷を構えてるんですって。
有事の際に備えてだったかしら。
此処の騎士団って素晴らしいわ、頭が下がるわね。
王族はろくでもないけど。
私達が食事を終えると、何故か食堂の入り口に人だかりが出来ていた。
迷惑だな!!何でこの国はやたら集団を作りたがるの!?仲良しなの!?
これから授業が有るから教室へ帰りたいのに!!
「何あれ」
「……王子殿下、だな」
サジュの声が一気に低くなった。
あの金髪に薄茶色の目のやたらキンキラした白い服の人がそうなの…。
ん?ええ?マジで王子なの?
いえ、見た目は紛れもなく王子って感じだけど…本当にいたなんて。
何で城に居ないのよ。
何でこんな庶民向きの食堂に来るのよ。
私とサジュは紛れるけど、あんたは無理でしょうが。
侍従まで引き連れてさ…。せめて変装とかしてよ。
それが嫌なら他の貴族用の食堂なり別室に食事の用意を組ませなさいよ。
時と場合によるって言葉を知らんのか、この王子は。
「ショーン様、こちらではなくあちらのお部屋に」
「ええい、煩い。
ロージアがこの下賤な場所で私と茶が飲みたいと言っていたのだ。
見ておかねばならんだろう」
……おい、チンピラの名前じゃんか。
最ッ低。
あんた、アレッキア様はどうしたのよ。
あんな綺麗な綺麗なお姫様が婚約者なのに、二股かよ。
しかもチンピラの為かよ。
下賤な場所でご飯食べてて悪かったな。
何つう腹立つ言い草なの、あの王子。
遠目で睨んでいたら、王子が近づいてきた。
御付きだか侍従だかが止めるのも聞かずに。
はあ?何でよ、ヤバッ、どうしよ。ホントに国際問題?
サジュの顔引き攣ってるわ。
あんたも嫌いなのね、コイツ…いや王子が。
私も呪いの件込みじゃなくても嫌いになったわ。
「…サジュ・バルトロイズ?何故このような下賤な場に居る?」
「……殿下におかれましては、ご機嫌麗しゅう」
私達はノロノロと椅子から立ち上がった。
…立ち上がらざるを得ないわよね。
相手は王族だし。
非情にムカつく、この国の、呪わしい王族!!
出来れば蹴倒して、サジュにも加勢させたい、この国の王族!!!
しかし、現実は非情なのよ。自由なのは脳内だけ。
サジュは騎士の礼を、私はカーテシーを取らざるを得ない。
学園内で有ろうと、此処は階級社会だから。
…伏せたのをいいことに、一瞬顔を顰めたくらいはいいだろう。
横目で確認したけどサジュも顰めてるな。血の繋がりを感じるわ。
「良くは無い。誰だ、その者は」
誰だじゃないし、ふざけんなド畜生。
お前の一族のせいで呪われた私に慰謝料払え!!
ああ、うっとおしい!!
腹立たしい!!
他国とは言え、王族だから否応なしに此方から名乗らざるを得ない!!
「……こちらに留学させて頂いております。
コレッデモン王国モブニカ伯爵が長女ドートリッシュ・ムニエ・モブニカです。
サジュ・ミエル・バルトロイズの…」
「婚約者か」
最後まで聞け馬鹿野郎。
誰が弟の婚約者だ。
後、女に先に名乗らせたんだから、幾ら雲の上の高位でも名乗れ馬鹿野郎。
本当に王族教育受けてるのか?
「いえそうではなく」
「別に好きにすればよいが若干みすぼらしいのではないか?」
「……王子殿下、ですから」
「顔はそんなに悪くないが」
おい、何処見てんだ。
思いっきり胸を凝視してるのバレてないとでも思ってんのか。
そりゃアンタの浮気相手のチンピラよりは胸有るけど、
お前に見られたくないわ。
「まあ、話し相手くらいにはなるだろう。
暇が有れば連れて来い、バルトロイズ」
「……はっ」
最後まで人の胸に視線を合わせたまま、王子は侍従を引き連れて…やっと去っていった…。
…凄いな、あの馬鹿王子…。
思った以上にクズだわ、王族って…。
どれだけクズが積み重なっていくの。
見た目だけは爽やかな王子さまなのに…本当に見た目で人は測れないわ。
「ねえ、サジュ」
「…おう」
「……恋愛経験無い私でも分かるわ。
寝台で話し相手になれってことでしょ。
私をあのチンピラと同程度の価値だと考えた件、絶対許さん」
「安心しろ、姉さんはオレが守る。連れて行かせねえよ」
「頼りになるけど、流石に私に張り付いてられないでしょ」
学園の他にも騎士団で従騎士業務も有るだろうし。
流石に其処まで頼れないわよね。
「ウチで一緒に住むか?御養父殿は姉さんを気に入ってたぞ」
「うーん、それもねえ…」
しもべ契約が有る以上、あの住居を出るのもなあ。
今若干ご主人さまと微妙な関係だし、言い出しにくい…。
それにしてもあの令息だけでも鬱陶しいのに、今度は王子ですって?
…心の底から面倒くさいことになったわ。
まあ、王子は呪われてないから会わないようにすりゃ
その内忘れて飽きるでしょう。
チンピラにご執心みたいだし…。
…アレッキア様が気の毒すぎるわね。
姉弟のネーミングセンスは皆無です。
そして、イケイン伯爵令息は木属性です(要らない補足)




