18.欲しいものを得た『悪役令嬢』
お読み頂き有難うございます。取り合えずひと区切りですね。
城が燃えた日。
あのあと私は義兄さまに唇と純潔を奪われ、
名も知らない土地に住むこととなった。
じゃないよ!!
何でよ!!
何よこの超展開。特に唇と純潔の方!!
義兄だと思っていた人間に伸し掛かられたショックと言ったら無いよ!!
何で自宅で義兄と事に及ばなければいけなかったの!?
どんな倒錯した世界ですか!?
外は火事だったんだぞ!?未曽有の大火事!!
しかもあ、あの格好は…た、確かに良かったけど…いやいやいや!!不謹慎!!
こんな昼間から思い出すことでもない!!
いや、確かに悔しかったよ。ヒロインにいいように使われるのは。
あんな子だとは思わなかったよ!!今でも思い出すと腹立つわ!!
でも冷静になってみたら、義兄さまそこまでせんでもって…いささか思う。
勿論義兄は色々家族親族にやらかされてきたけれどね…。
でもさあ、お城燃やして一族殆んど皆殺し…って…。
……義兄の仕業よね?
ああ、そう言えば義両親は帰ってこなかった…。
どうなったのか義兄に聞いてもにこっとされるだけ。
一応王弟殿下(旅人ね)は残られたみたいだけど……大火災の処理に追われてるらしい。
お気の毒にも程がある。
間違いなく、この私の背後でだらしない顔をしてる義兄さまの仕業よね!?
いや、そりゃ見て無いからさ!!
……証拠はないけど。
後主人公との逃避行どうなったの。
全く欠片も噂も出てこないけど!?
あのスチルの通りになったのよね!?
ロージアは!?何処へ行ったの!?
そして他の攻略対象は行方不明なの!?でも王弟は生きてる…。
…思ってたのと全然違ってるんだけど!?私が知らないだけ!?
私が知らない舞台の裏側ああああ!!
そして何で私が義兄さまに囲われとるんだ!?
私、主人公じゃないわよ!?サポートキャラなのよ!?
その私が義兄と一緒に川のほとりでベタベタしているっておかしくない!?
私の予想は一体何処へ!?
しかもこの川、主人公が改心したバッドエンドに超似てるんですけど!?
曲がり具合までそっくりなんですけど、一体何処で探し出してきたの!?
確かに…ロージアに心をぎったぎたにされた時…つい義兄さまに川遊びしたいって言ったけど…。
私何にも具体的な場所言ってないわよね!?
いや設定資料集に地名載ってなかったから知らないけど!!
一体どうなっているの、色々義兄のスペックが怖い!!
「えへへえー、幸せえー」
「義兄さま」
私が悩んでいると膝の上に横抱きに載せられた。
最近の義兄は浮かれまくっている…。最早…止める気もしない。
と言うか散々今まで抵抗してたけど無理だった。
モブがチートに勝てる訳が無い。降参。
「名前で呼んでぇー」
「…アレッキオさま」
「なあにー」
「……外で変なところ触らないで下さいますか!!」
襟の中に手を入れるんじゃないよ!!油断も隙も無いな!!
ああもう、此処に来てから接触が多い!!
前から多かったけど物凄く増えてる!!
「分かったー。おうちならいいかなー」
「…勘弁してください」
「こどもが出来たら我慢するー」
マジか。
お、おう…。やはりか。そういう事になるのか…。
口にされると…何かこう…何かこう!!
「あの…やっぱり…私に子供を産ませる気で…いらっしゃいます…?」
「別に生まれなくてもいいけどー、昔から言うよねえ。
子供を産ませて繋ぎとめる。母は強いって」
「えっげつないわ…アレッキオさま」
義兄は…アレッキオはこの土地で暮らすようになってから、本性を混ぜて来ている。
そして以前以上にベッタベタされる。
…因みに私は変化については突っ込まない。
多少変わったところでアレッキオ本人だし。
小さい頃からの対応も今更変えられないし…変わらない…。
拒否する気も生まれないくらいには、
アレッキオを…その、愛しているのかも?
ヤバい…。思考がヤバい。
流されないで!!私!!何に抗うのか分かってないけど!!
「結婚は人生の墓場なんだってー。
いいよねー、墓場の中もそれからも一緒って約束の為に、結婚するんだよね」
「それはそんな意味ではありません」
「どうして?お墓でも愛し合う夫婦って素敵だよ?
僕らもそうであろうね」
「…夫婦ではなく義兄と義妹なんですが…」
おおお、理性よ!!我が理性よ働いて!!
本当に我ながら突っ込みたい!!
大分爛れてしまっているけれど、少なくともそれは確実だった筈。
私と義兄は義理の兄妹!!きょうだーい!!
「違うんだよーアローディエンヌ」
「何が違うんですか」
しかし、義兄は否定してきた。
頬を膨らますんじゃない、萌えるから!!
「大丈夫だよー、アローディエンヌの養子の件は最初から無いから」
「…何ですって」
「あいつら…両親は書類を出してないから」
「……何ですって!?」
それは初耳過ぎるんですけど…。
だが、思い当たることもないではないな……。
私は滅多に外に出されていないし…自己紹介する機会も滅多に無かった。
必要があるときは…確か義両親がパパっと簡単に紹介された、気がする。
機会が滅多になかったから思い出すのも苦労するわ。
まあ、そんな軽い扱いだし…態々よその子の養子縁組が確かかどうかなんて裏を取ろうとする貴族…無いだろうな。
私の数少ない社交経験で見た貴族は…無関心、野次馬気質が多そうだったからなあ…。
「君の姓は元々生まれた所のままだったよ」
「…それでは、私は長年身分詐称していたことになるのでは」
「誰も気にしなかったんだよ…ごめんねえ?」
まあ、養子の手続きは手間がかかるだろうし、あの両親の態度からして真実だろう…。
義兄も知った時、いずれ利用しようと黙っていたのだろう。
考えもしなかったが…私を手に入れる為にかあ…。
マジかあ。…義兄さま…何時から計画してたんだろう…。
全然気付かなかったわ…。
寧ろ火事の日押し倒されるまで、自分が恋愛の意味で愛されてるとか知らなかったわ。
只の拗らせたシスコンだと思ってたわ…。
思い返せば口説かれていたよな、色々…。
思い出すだけで恥ずかしい事も色々言われた気がする…。
今も言われているけど…。
…うわあ恥ずかしい。
あー……大概鈍すぎるな、私。
傍観者気取ってて義兄に恋愛対象にされているとは思いもしなかった。
…そんなアホみたいに鈍い私を得るために優秀さを使ったって事か。
……義兄の優秀さの無駄遣いが凄いわ。流石チート…意味が分からない。
それにしても……今更だが…私への義兄の執着…。呆れるわ。
困った恐ろしいひとだわ。私なんかの為に…。
「アレッキオさま」
「…なあに!?」
「貴方、私がお好き「だいすき!!」なの?」
……秒で返さなくても。
いや、き、のiくらいで返された。つまり若干声が被った。
人の話は最後まで聞いてから返事しなさいよ…。
「……うっそお」
「うっそお!?あんなに愛し合ったのにどうして信じてくれないの!?
もっとする!?」
「だからここ外ですから!!それに基本的に貴方嘘つきじゃないですか」
あ、しまった。うっかり。
でももう義兄に気を使う必要もないし…と思いつつ若干居心地が悪くなって、義兄を見た。
あれ、見た目は動じていないな。
でも目に涙は溜まっているな…。
ショックは受けてるのか…?
動じないのかショックなのかどっちかにしてよ。
「違うよお」
「何が違うんですか」
「アローディエンヌが好きなことに関して嘘はついたことないよー」
「…やっぱり嘘つきじゃないですか!!」
「そこは違うよーもうー」
「もうーじゃないんですが」
「信じてえ。アローディエンヌに信じてもらえないと死んじゃうー」
「だったら私を離すか力を緩めてもらませんか…暑い…」
気候もいいからやっぱり暑いし…。
無意識なのかギリギリ絞められているんですけど!?
回された手が腕やらに食い込んで痛いわ!!
「ああ、痛い!?痛む!?ごめんねえ?」
「痛いですわよ…」
「あー赤ちゃんが出来てたらどうしようー」
「そんな直ぐに出来る訳ないでしょ…」
そこかい。しつこいな。
腕だし大丈夫じゃない?まあ知らないけど。
多分前世でも産んだことない…と思うし。
「そうかなー、じゃあ今日も頑張ろうね?」
「図に乗らないでくださいますか!?」
外だっての!!
手を抓られてデレデレするとか、どこのバカップルだ…。
人目は無いけど、恥ずかしすぎる!!
止めて!私恋愛脳じゃないの!!義兄さまだけなの!!
「それにねー、もう結婚届は出しちゃったー」
「……そんな気がしてましたよ…」
何かごそごそ書いてたのは知ってる…。
……予想以上に早すぎじゃない?とは思っていたけれど。
それにしてもこの国では私のサインは要らないの?
文書偽造とかにならないの?
でも、やらかしかねないなーと思って放置していたのは私だ。
悪くは無いと思ってしまう…。
「そっかあ!?期待してくれた!?」
「…お義姉さまがお望みの物を手に入れるのには、手段を択ばないと聞いております」
「ぶー、お義姉さまじゃないのー」
「分かっとるわ!!最後まで聞いて下さい」
私がそうキレてると…またデレデレしだして、側頭部にキスをされた。
何なの!嬉しそうにしないでよ!可愛いな!
「うん、幾つでも言ってえー」
「だから、仮に私をお望みなら」
「仮じゃーなーいー!!」
今度は自分を左右に揺すり始めた。
自動的に抱えられたままの私も揺さぶられる。
取り合えず…私を抱えて揺さぶるのが好きなんだな。
好みが分かってきた…ような。…それにしても接触面が暑い…。
「暑い…だから最後まで聞いて下さいってば…そして離して…」
「やだあ」
「さっき幾つでも言えって言ったでしょ!?」
「何かやな予感がするからやだあ。離すのもやだあ」
「意味が分からない…。
ですから私に対しても、多少大掛かりで、強引な手段を取られたんでしょう?」
「えー大したことないよー?」
「貴方が努力してることは知ってます。魅了もすっかり使いこなして立派です」
私の言葉にぱあっと義兄の頬が薔薇色に染まった。
ああ近い。覗き込まないで。
顔は好みだし近いから見放題だけど…恥ずかしい!!恥ずかしいなこれは!!
「…褒めてくれるの?」
「貴方は私を何だとお思いで!?」
「うん?初めて会った日から、僕の一番すきなひと」
……予想以上に重い。そして恥ずかしい。
…口説かれているのに…あんまり表情が動かない。
寧ろ口の端が上でなく横へ歪んで…困惑に近い表情をしていると思う。
まあ…前よりは動くように…なったけど。
それでも普通のひとよりは動いていないところは…サポートキャラ補正の呪いか。
極まってるな。
「その困った顔は、照れてるよね、アローディエンヌ」
「…そうなんですかね」
「そうだよーえへへへー嬉しいなー僕以外に照れないでー」
「無茶な…」
顔を側頭部に押し付けられた。
頭蓋骨からぐりぐり音してる!!痛い!!痛いんですけど!!
て言うか離して!!やっぱモブでも抗う力を得たい!!
「こんな景色の良い所だったら、表情もよく動くようになるよ」
「…そうですかね、とりあえずまた力が籠っていますが!?離して下さい」
「だめー。寝台の中では表情豊かだよ、アローディエンヌ」
……。
腕を解こうとした手の力がぱた、と力が入らなくなった。
「あ、早速効果覿面だね。やったあ」
これは鏡見なくても流石に分かる。
顔は真赤になっているだろう…。
…まずい。
…私、サポートキャラなのに。
悪役令嬢に口説かれてどうするよ。
「……」
「ねえ、またあの服みたいなのを作らせたんだあ。
アレを着てたらもっとデレデレしてくれるう?」
「人の性癖みたいに言わないでくれます!?」
確かに良かったけど!
大変見たいです!!
正装他も見たいですお着替え待ってますに決まってんだろコラア!!
…じゃない。
私が服フェチの変態みたいじゃないか。宜しかったですけどね!!
でも面と向かって言えるか!!
私、最低限とはいえ令嬢教育受けた淑女なんですけど!!
「えーきらい?初めてが一番良かった気がしたから?」
「…だから!!昼間から止めていただけます!?アレッキオさま!!」
「いたあ!」
私は体をひねって力いっぱい義兄の…アレッキオのおでこを叩いた!
取り合えず外でそんな台詞を吐くんじゃない!!
まだ伏線が色々残ってるので、その内ご披露出来たらいいですね。
番外編などもちょっと書きたいです。
取り合えず一区切り…ゲームは終わりました。
お読み頂いた方、有難うございました!




