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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

繕の国の最終夜

作者:SNAOP
最新エピソード掲載日:2026/04/25
夜雀(やすずめ)王国は、形ある物だけでなく目に見えぬものまで朽ちる呪いを抱えていた。約束、信頼、慕情——それらは「綻び」として町中に浮かび、放置すれば「綻獣(ほつれじゅう)」となって人を裂く。それを縫い直す職人が、修繕士である。

主人公・縫衣(ぬいい)は十七歳で家業を継いだ若き修繕士。針を刺すと相手の心の綻びが糸となって浮かび、彼女はそれを丹念に縫合していく。

物語は、母を亡くした少年の依頼から始まる。「父さんが、母さんのことを忘れかけている」。縫衣が父の胸に針を立てると、糸はすでに千切れ、奥に巨大な綻獣が育っていた。父の悲しみが拒絶に変じ、息子への愛情まで食らおうとしている。

縫衣は鏝で熱を当てて糸の芯を融かし、針で繋ぎ直す。だが綻獣は反発し、現実の家を裂いて顕現する。彼女は手にした糸を鞭のように振るい、結びの呪文に変えて獣を絡め取る。「これは、忘れることじゃない。痛みを縫い込むだけです」。父の涙とともに、綻獣は静かに服の継ぎ目へと帰っていった。

しかし縫衣の右腕には、依頼を受ける度に黒い縫い目が増えていく。修繕士は他人の綻びを引き受け、自分の体に縫い留める呪いを背負っていた。
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