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申し訳ございません 【9】
「どうだね、タツロー君」
言うに言われぬ有耶無耶な違和感をごまかすように、伯爵が口を開いた。
「この屋敷にも慣れたかね?」
「はあ、御蔭さまで__」
恐縮を顕わにタツローが頭を下げる。
「只、こういう__テーブルマナーと言うか、食事の作法にはまだ少し……」
そう言うと、気さくに伯爵が笑って見せた。
「気にする事は無い。好きなように食べればいいのだ。余り騒々しい食べ方は少し困るがな」
「そうそう__」
マクダルも、食事を口に運びながら平然と__言ってしまえば気になる事を忘れようと、努めて無神経を装って口を挟む。否、既に彼は、早くもこの不自然な状態に慣れつつあった。
「マナーとか何とか、一々気にしてたらご飯なんて美味しくないよ」
「お前はもう少し気をつけた方がいいな」
「なんでー」
ふくれっ面で答えるマクダルに、伯爵もタツローも自然と笑みがこぼれる。