石神村の姫の“ら”
石神魅空の話をしたい。
15歳。この春からなろう高に編入予定の高校一年生。常に野球帽を被り、中肉中背の低身長。見た目は中学生。貧乳なのを気にしているどこにでもいる女の子。唯一、他と違うのは石神村という傭兵国家の姫様であること、プレイヤーであること、そして、始まりの丘で願いを叶える際に『完全記憶能力』を願ったことだ。
正月休憩が『現実世界に戻るとゲームプレイ時の記憶が封印される』という願いを叶えたころ、魅空は日本政府と交渉していた。この時、日本政府は大晦日憩いの能力低下を思いのほか重く受け止め、現実世界において非常時でも戦力になるプレイヤーの確保が求められた。そこである役人が思いついた案、それ記憶が封印されていても思い出すことのできるプレイヤーの創出。魅空は人為的に作り出されたアナザーアースの能力を思い出せるプレイヤーなのだ。
賛成派と石神村の保護を条件に魅空は大晦日憩いの配下になった。憩いから提示された完全記憶能力を叶えそれを手に入れた。とあるライトノベルのヒロインと同じような能力で、魅空は脳内に図書館を有している。蔵書の数は一万冊以上。その一冊一冊に詳細なデータが記され、魅空が見たい時に見たいだけの記憶を入手することができる。これによりアナザーアースで忘れてきた能力を再度獲得できるのだ。
「書籍検索。題名は~アナザーアース」
魅空が脳内の図書館から膨大な量の蔵書を精査する。記憶の奥深くに眠る、チェーンで雁字搦めに封印された本を取り出す。中には『テイマー』の情報が記載されてあった。
「ふむ~私の役職は『テイマー』。能力は『テイム』か~」
役職テイマー。人や動物を操るもの。使役者。スキルポイントをあげることで強力な強化が可能。
魅空はアナザーアースを始めたばかりなのでレベルが低い。スキルポイントもそんなに持っていない。代わりにテイマーの固有スキル『テイム』が使えた。
固有スキル『テイム』。顔が分かる人や動物に簡単な指示を与えて使役することができる。
顔が分かる範囲であれば魅空は無限にテイムすることができた。だから完全記憶能力の彼女は超強力なハメ技を実現可能とした。ゲームスタート時に100人にテイムをかけた彼女は、再度、その方法を試す。
「運動神経の良い睦月くんは100人くらいじゃ捕まらないか~じゃあ~100倍にしよっと」
魅空は脳内にある図書館から人物の項目を検索する。探す範囲はこの一週間で顔を見た人全員。それらはテレビに映った一般人からすれ違った歩行者など多岐にわたる。東京都23区にいる1万人の顔写真を順々に眺め、思い出していく。
「テイムはプレイヤーには使えない。だから一般人1万人に指示する。私の言うことを聞いてね~。『睦月レストにタッチしろ!』」
彼女の脳内検索が終わり、顔写真を見終え、思い出した1万人の市民に『テイム』をかける。この瞬間、東京都内23区にいる1万人は全員、魅空の操り人形となり、鬼(親)に変貌する。魅空は発信機を頼りに地下鉄で移動するレストの位置を割り出し、テイムした1万人を地下鉄の駅に待機させる。
「ファーストキスを奪ったことは絶対に忘れない。だから絶対に懲らしめてやる。絶対に私が勝つ」
石神魅空。彼女は完全記憶能力とテイムの二つの能力を持ったテイマーであった。




