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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
最終章
75/98

完全武装、してますから

「すわって」


「……なんだよサクラ、起き抜けに」


 はい、おこなのです、激おこバイリンガルの佐倉サクラです、おはようございます、フッドモルヘン。


「いいから」


 結局、一睡もできなかった私は、ロボ君の寝顔を見つめること数時間、睡眠不足の目を血走らせ……うわぁ、走ってるだろうなぁ、ひどい顔してるだろうね、でも、今はそこまで考えてらんないよ。ともかく私は、朝も早よから布団に別れを告げて、枕元にて彼の覚醒を待ち構えていたのです……うん、我ながら怖いけどね、今はそこまで考えてらんないよ、二回目だよ。


「単刀直入に聞きます、ロボ君の体調はどんな感じなのでしょう」


「すこぶる快調だが」


「虚偽の発言は認めません……はい、シャーリーくん」


「なんで僕に振るんですか」


 真っ黒ビキニのままの彼女は、寝起きだというのに、普段通りのお人形フェイスなのです、その柔らかな金髪にも乱れひとつありません……うぐぐ、羨ましい……なにが違うんだろう、私なんか朝は髪の毛モッサモサだし、よだれパリパリだし、目は死んでるし……いや、それは置いといて、ロボ君が正直に言わないなら、シャーリーくんに答えて貰うからね、もうね、昨日から溜まりに溜まったモヤモヤがね、様々な理由により噴出ですわ、お怒りですわ……自分自身に対してね! なので隠し事は許しません、はい、どうぞ。


「別に、問題はありませんよ……前にも言ったでしょう、たとえ瀕死であったとしても、殺し合いならせんぱいに……」


「そんな話は聞いていません、ロボ君の身体状況について説明してください」


 ぷい、と顔を背けた私の耳に、シャーリーくんの溜息だけが入り込んでくる。まぁね、言いたい事は分かるよ、私が彼の体の具合を把握したところで、何が変わるわけでもないしね……でも、そんなのはもう嫌なのです、皆んなが、ロボ君が身体を張って戦ってくれているのは、私の為でもあるのです……もちろん、みんなは自分の考えで動いているのだけれど、信念とか決意とか、それぞれの譲れないものに従っているのは知ってるけども、それでも、私を守ってくれてるのに違いはないのだ、甘える事しか、応援する事しか出来ない私には、それを知る必要があるのだ、これはもう義務と言ってもいいよ……みんながどれだけ頑張ってくれてるのか、辛い思いをしてるのか、それを、私はもっと知らなくちゃいけないのだ、そんな気がするのです。


「せんぱいの損傷も知らずに、昨夜はいやらしい事をしようとしたんですものね、いまさら恥ずかしくなったんですか? 気持ち悪い……そもそも、僕たちが隣の部屋に居るというのに、バレずに済むとでも思ったんですか? 処女のくせに初回から特殊な性行を求めるなんて……ああ、それとも見せつけるつもりでしたか? 流石はサクラ先輩です、ある意味、尊敬に値します」


「うるさいよ」


「昨日は、一応遠慮してたんだがな……サクラは最後までするつもりだったのか? それなら、俺も考えを改めるが」


「うるさいよ! 」


 うるさいな! ゆうべの事は忘れなさい! あんな黒歴史は抹消します、あとハナコさんは離れてください、そんな元気あるなら朝ご飯を作ってください。


「ろ、ロボ君、私は真面目に……」


 そう、真面目になのです、ぶっちゃけ心配なのです、ああそうですとも、悪いか、心配して悪いんか、好きな人が怪我してるってのに、はいそうですかで済ます女は居ないっつーの! だから、もっとちゃんと。


「三分だ」


「ふぇ? 」


 ……なに? ラーメンの話? 今どき東京の即席料理だって、そんな時間はかからないよ? むしろ超電磁調理器なら三秒で完成するよ? まぁ、なんとなく味気ないから私は嫌いだけどね、ハナコさんだって、原始調理の方が美味しいって言ってるし……あ、ベーコンエッグ、ハナコさん、朝ご飯はベーコンエッグがいい。


「奴と本気でぶつかり合えば、中身にダメージが残る……魂の傷は二度と治らない、もう、全力戦闘は三分が限界だ、それ以上は機関が持たない、肉体ごと崩壊する……まぁ、アルタソ以外なら問題は無いが……あとは、そうだな……寿命は、四、五年ってところか」


 相も変わらず、ロボ君は平然とした表情なのです、なんでもないように、そう言うのです。


「か、勝てる、の? それで」


 なので、私も普段のままに、じっと彼の目を見つめて問いかけた。


「当たり前だろう……俺は、お前を信じてる」


「うん、わかった……私も、信じてる、よ」


 へにゃり、と私は笑った……のだと思う、正直、今どんな顔してるのか、自分ではよく分からない、本当は泣きたかったんだけどね、でも、笑わなきゃ、ロボ君は、こんな私でも、信じてくれてるのだから。


「とりあえず、朝ご飯にしましょう、僕もお腹が空きました……早めに片付けて出迎えないと」


「うん、いひゃい、いひゃいから、はなして」


 だからシャーリーくんよ、なぜ抓る、なにが気に入らないというのか、あれか、試し行為というやつか、新しいお母さんが信用できるか、甘えられるかどうか、ワザと意地悪して試しているのか、そんなのいけないよ、もっと素直になりなよ、ほら、可愛がってあげるからさ……というか、何をお出迎えするの? 誰か来るの? アシナガさん達が戻ってくるの?


 先日の戦いの後、アシナガさんたち忍者戦者の皆さんは、自らお暇を願い出た。天帝を前にしてしまえば、彼女達は、簡単に操られてしまうだろうから……でも、それは仕方ない事なのだ、元とはいえ、相手は神さまなんだもの、むしろハナコさんが異常なんだろうね、なにしろ吸血鬼達まで、みんな土下座してたんだから。


 とはいえ、彼女達との別れは、正直いうと寂しいものであった為、私はほんの少しだけ期待したのです、だって、せっかく仲良くなれたんだもの、これからの戦いには連れていけなくとも、せめてそれまでは一緒に過ごしたかったのだ。


 しかし。


「僕の使い魔が見つけました、あと1時間くらいですかね、到着は」


 使い魔? そんな高度な……ああ、そういえばシャーリーくんは先端呪術も得意だったっけ……まさか、いつもそれで観てたの? ……まぁ、いまさら文句は言わないけどさ、んで、誰が来るの?


「ビッケと栗原先輩達ですね」


 ああ、テンプル騎士さん達……そうか、二人は一度、議会に確認とるとか言ってたもんね……天領騎士やピッチリ軍団、それにハロッくん達は、ウォーレン先輩に付いて行っちゃったし、ダゲスは下剋上したみたいだし……西京も随分と混乱してるだろうなぁ……何か答えが出たのかな? また、協力してくれれば良いんだけど……まぁ、操られたら困るから、一緒には行けないんだけどね。


「……言っておきますけど、友好的なお話、という訳ではないと思いますよ? 」


「なんで? 」


 なんでさ、昨日は一緒に戦ったじゃん? 西京の議会は私のお父さんとやらが……ん? あれ? 待てよ? 自称お父さんは、ダゲスに下剋上されちゃったんだっけ? というか、中身がウォーレン先輩に移動してるという事は、その下剋上されたバランタインさんってのは、影武者だって事だよな……あれ? これ、どうなんの?


「完全武装、してますから」


 ……どうなるんだろう。



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