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自叙
そこはもう、まっしろな場所ではありません。
空には太陽が輝き、大地と海は、それぞれの居場所に色をつけていたのです。野には花が、山には木々が、風に揺られて生命の始まりを告げていました。
だけど、まだ動物と呼べるものは生まれていませんでした、人と呼べる姿もありません。
日記を読む人が、それを理解していなかったから。
けれど、もうすぐ分かるでしょう、まっしろだったこの世界が生まれ、そして終わるまで。長い長いこの日記にも、そろそろ最後のページが見えてきたのですから。
小さな小さな声を聞いてから、まっしろな人は旅を続けてきました。それを探して旅してきたのです。
今は消えてしまったその声も、全てはここに残されていたのです。
日記を読んだら、始めましょう。
まっしろな人には、長い耳が生えていました。




