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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
第4章
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そういうこと、ですので

 強引な男性って、どうですかね? まぁね、頼りない男の人よりはモテるかもしれませんよ? おばあちゃんが秘蔵してた漫画とかでも、ちょっぴりワイルドな俺様系男子が人気でしたもん。でもね、何事にも限度ってぇものがありますことよ? いきなり「俺の女になれよ」なんて言われたってね? そりゃ断りますわ、ドン引きですことよ? いくら好みのイケメンから言われたってね、無理でしょ、むりむり、まったく、創作と現実はちゃんと分けて考えてほしいよね、そんなきっかけで付き合う男女なんて……はい、都合の悪い事は忘れて生きる系女子の佐倉サクラです、やったぜ。


 いや、やってないからね! なんやこいつ、いきなりなんや、なに言っちゃってんのよ、彼氏の目の前で彼女を口説いてんじゃないよ、満点度胸だな! 花丸やるわ! ……いや、ごめんなさい、調子に乗りました、確かにね、彼氏かどうかはまだ微妙なところだけどね? そこは置いといてよ、でも、限りなく黒に近いグレーだからね、ピンクに近いホワイトと言ってもよくってよ?


「な、なな、なん、なんで、です、か」


「お兄さん言ったよね? それが一番の解決法だって……みんなが幸せになるにはね、それが最善だと思うんだよ」


 うごご、ち、近い、ちかい! 顔を寄せるんじゃない、私はいま動けないんだから、逃げらんないんだから、やめてください、というか、見てないで誰か助けて! は、ハナコさん、何してるの? こんな時はアナタの出番で……おいこらロボ君! なんでハナコさんを拘束してんだよ! おかしいやろ、彼氏だろ! それともグレーだったか、白に近い方か! ここまできて責任放棄は許さへんぞ、接触事故でもしたらどうすんのさ!


「落ち着け華村、サクラもだ……あと、ウォーレンはちゃんと説明しろ、話が見えない」


 刃の当たる首筋を動かさないように、じたじたと肘から先だけで抗議する私に、こんな状況でも、ロボ君は相変わらずのロボっぷりなのです……ちくしょう、なんて落ち着いてやがるんだ、解脱の時も近いのか……なんか腹立つな、あとで説法だかんな、あと、どさくさに紛れてハナコさん触ってんじゃないよ、ワザとじゃないとしても素肌で密着しすぎ、そっちはエクスカリバー案件だぞ、折檻や!


「……殴るのは、その後にしてやる」


 ん? 違った、案外怒ってるのかな? なんだ良かった、良くはないけどギリセーフだよ、グレーでした、いや、これはもはや真っ黒と……痛ったァ! ……うぐぅ、油断したところに……シャーリーめ、恐ろしい子やで。


「素直に殴られては、やらないけどね……こちとら完全武装してんだよ、今なら、オリジナルより性能は上さ……なぁ辛島、理解してるか? 俺とシャーリーの身体が『何』を元に造られてるのか」


 ……え? ん? 何って……なに? ちょっと意味がわかんないんだけど。


「興味ないな、それより早く説明しろ、野良ゴリラがうるさいんだよ」


「はっ、これじゃあマコトも拗ねる筈だよ……やれやれ、両親ともに放任主義、おまけに愛情もゼロときたもんだ……お兄さんは哀しいねぇ」


 ん? んん? ちょっと待って、頭が混乱してきたよ、なにがなんだか分からない、さっぱりこん……でも、少しだけ気持ちは分かるかな、私だって似たようなものだし……だけど、私にはおばあちゃんがいたんだもん、たとえ血の繋がりは無かったとしても、すっごく救われてた、幸せだった……まぁ、ちょっとばかし教育方針は偏ってたけどさ、厳しいところもたくさんあったけどね、それでも、私をここまで育ててくれたのは、間違いなく、おばあちゃんの愛情なのだ、もしも、それが無かったとしたら……うう、想像もしたくない。


「……俺にはさ、守りたい人が居るんだ……その人はね、とても寂しそうで、いつも悲しそうで、でも、誰も側に居られなくって、寄り添ってあげられなくて……可哀想なんだよ、俺と同じなんだ、だから守ってやりたい、だけど、守ってやれない……俺じゃ、無理なんだ……それでも、それでもせめて、少しだけでも、一秒でも長く生きて欲しい、そう願ってる……おかしいか? 俺の考え、間違ってるか? 好きな人のために、何かしてやりたい、自分にできることを、精一杯してやりたい……その為ならなんだってできる、誰にも遠慮はしない、間違ってるかな、いや、間違ってたとしても構わない、もう決めたんだ……俺が決めた」


 ウォーレン先輩は、握った拳を額に当て、苦悩に満ちた表情を見せていました……そっか、彼にも色々あるんだね……私から見れば絶対に許せないような事も、彼にしてみれば絶対に譲れない事だったのでしょう、立場が違うだけで、お互いに、守りたいものはあるはずなのだ……でもさ、それは私達だって同じなんだもん、譲れないからここまできて、守りたいから、ロボ君やハナコさんは頑張ってくれている……だから、これは譲れないよ、私も譲れない、それが私の決めた事なんだもん。


「だから、サクラちゃん……俺の女になってくれないか」


「うん、わかんないよ? 」


 うん、わかんないからね? 繋がらないね、繋がらないよ? 話がね? というか、おかしいやろ、好きな人いるっつったやろ、あんだけ熱く語っといて、なに堂々と浮気しようとしてんだよ、お断りです、拒否しますゥ、少なくとも私は幸せになんないよ、それ、てか、どこの世界に「俺さー、他に本命がいるんだけどさー、そっちは無理っぽいしー、とりあえず付き合おうぜ、俺たち」みたいな告白で了承する女の子が居るかっつーの!


「……この世界は、もうすぐ終わるんだよ、それがいつなのかは分からないけどね……ただ、サクラちゃんが死ねばそこで終わりさ、それは間違いない、そして俺たちは、サクラちゃんを殺す為に此処に来ている……ここまでは、おーけぃ? 」


「お、おーけぃ」


 いや、全然オーケーじゃないけどね! さっぱり意味は分からないけどね! でもとりあえず分かりました! 分かった気になっときます、続けてください、頑張って聞いてみるから。


「けれど、俺はサクラちゃんを殺したくない……理由は、さっき言ったとおりさ……ただ、もう無理だ、いくら辛島が強くても無理だ、剣姫と俺が同時に掛かれば、5分と持たない、奴は死ぬ、サクラちゃんの目の前で死ぬ、華村も死ぬ、もちろんサクラちゃんも、その後で死ぬ……これじゃあ、誰もが不幸になる……そうだろ? 」


「お、おーけぃ」


 うぅ、あんまり考えたくはないんだけど……その可能性は高いのです、もし仮にシャーリー君が味方してくれたとしても、多分無理でしょう、剣姫とロボ君、この先輩とシャーリー君が互角だとして、残りのテンプル騎士団300人は、ハナコさんが一人で相手取る事になっちゃうよ……そんなの勝負にもならないじゃん。


「さて、そこで提案だよ……俺なら、この戦いを止められる、サクラちゃん達を助ける事ができる、それは間違いなく、約束するよ……ただ、辛島の首は必要だけどね……そして、その先も完璧に守ってあげる、一生だ、必ず幸せにするとも約束する……どうだい? 」


「ど、どうだい、って……そんなの ………おかしい、おかしいよ、う、うまく言えないけど、先輩はそれで良いの? おかしい、よ、やっぱり間違ってる」


 そうだよ、おかしいよ、そんなの生きてるだけじゃない、しかもロボ君の命を差し出して、だなんて! そんなの絶対に間違ってる、誰も幸せになんかなるはずない。


「……間違ってるのはさぁ、重々承知してるんだよなぁ……それでも、これが正解なんだ、俺は本気だよ? サクラちゃんを必ず幸せにしてみせる、何年かかっても、辛島の事は忘れさせてみせる、俺も、君の事を芯から愛する、他の全てを捨てたっていい、全身全霊をかけて、君だけを守ると、この剣に誓おう……だから、お願いだよ」


 お願いだと、ウォーレン先輩は言うのです、私の前に膝をつき、目も合わせずに言うのです……それはまるで、親に捨てられそうな子供が、裾を摘んで泣くように、捨て犬が雨の中、新たな依存先を求めて鳴くように、懇願するのです。その顔は、とても悲しそうで、辛そうで……寂しそうだったのです。


 それは、信じる人が居ないから……信じてくれる人が、居ないから。


「嫌です」


 だから私は、きっぱりと断りました。ロボ君の顔も、ハナコさんの顔も見なかった。


 だって、自分で決めたことだもの。


「で、でも、先輩、考えましょう、他に、考えましょう……きっと、別の方法が、ある、と思います、私も考えるから……だからもっと、教えてください」


 うん、そうだよ、解決策は他にもあるはずなんだ、道が一本なんて決まってる訳がない、ほんとうに、みんなが幸せになるルートが、きっと見つかるから、だから、協力して、みんなで考えよ?


「……くくっ……あーあ、騙されては、くれなかったか……ルックスには自信あったんだけど……やっぱり頑固だねぇ、お兄さん残念だよ……なら、サクラちゃんは死ぬしかないよ」


 ひとつ伸びをして立ち上がり、苦笑いを浮かべたウォーレン先輩は、しかし、笑顔のままに涙を流していました……これは、最初から騙すつもりだったのか、どうなのか? それは分からないけど、でも。


 さくり。


「え、い、嫌ァアァァァッ! 」


「サクラッ! 」


 私には、それ以上考える事ができなかったのです。なぜならば、首筋から滑り込んできた冷たい感触が、私の思考を、あっという間に奪い去ってしまったからなのです。


「そういうこと、ですので」


 最後の声は、シャーリーくんのものでした。




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